最新のM2チップを搭載してフルモデルチェンジした新しい「MacBook Air」がいよいよ登場します。処理性能を大幅に引き上げただけでなく、本体デザインを一新して携帯性や使い勝手、表示性能を高めたこと、打ちやすいキーボードの存在、ファンレス設計で静かに使えること、充電まわりを改良したことなど、改良点は多岐に渡ります。上位のMacBook Proの長所をどん欲に採り入れたことで、これまでMacBook Airに漂っていた“MacBook Proの格下モデル”という印象がなくなり、MacBook Proを選んでいた人も気になる存在になりました。
ボディをグッと薄くしても“作りのよさ”は不変
M2チップの搭載に合わせ、約4年ぶりにデザインを一新した新しいMacBook Air。先端が細くなる伝統の「くさび形デザイン」を卒業し、MacBook Pro 14インチ/16インチと共通のフラットで直線的な仕上げになりました。全体の厚みはわずか11.3mmに抑えられており、旧MacBook Airの16.1mm(最厚部)よりもスリムになっています。
これだけスリムに仕上げながら、しっかりとした剛性感や作りのよさをキープしているのがアップルらしいこだわり。パームレストの隅をつかんで片手で持ち上げても、ヤワな感じは一切受けません。また、閉じたパネルの中央に指を掛けて持ち上げれば、片手でパネルが開けられる長所も継承しています。モバイルノートは、さまざまな場所に持ち運び、使うたびにパネルを開閉するだけに、日々ストレスなく使える工夫は好ましいと感じます。
キーボードの作りのよさもストレスとは無縁の部分として挙げられます。キータッチは底まで一定のトルクで軽快にタイプでき、ボディが薄いのに強めにタイプしても周辺のキーがたわむことはありません。日本語配列モデルでも、一部のキーが細くなったり配列がイレギュラーになることがないのも好印象。ストレスを感じさせないトラックパッドの操作性もポイントで、指の動きに吸い付くような追従性をいったん味わうと、もう並のWindowsモバイルノートには戻れません。
ディスプレイは、13.6インチに少し大型化され、表示も明るく鮮やかになりました。MacBook Pro 14インチ/16インチと同様に、上部のFaceTime HDカメラの部分が欠けてはいますが、Windowsノートで一般的な16:9比率よりも縦の表示エリアが多いこともあり、さまざまな作業がしやすいと感じます。
1080pに対応したFaceTime HDカメラは、室内など光量が足りない状況でも解像感が高まり、人物の表現が自然な印象になりました。さらに、従来のMacBook AirのFaceTimeカメラはフレアが発生しやすく、直上にデスクライトがあると全体が白っぽくなってコントラストがなくなりがちでした。新しいMacBook AirのFaceTime HDカメラはコーティングが改良されたのか、フレアの発生は見られませんでした。
残念だったのが、iPad ProやiPad mini、Studio Displayなどで利用できるセンターフレームの機能が搭載されなかったこと。オンライン会議やビデオ通話の機会が増えているだけに、センターフレームは欲しかったと感じます。
M2チップ自体はMacBook Proと同じ、放熱は気を配る必要アリ
M2チップを搭載したのは、ひと足早く6月24日に発売した13インチMacBook Proに続いて2製品目。13インチMacBook Proは冷却ファンを搭載するのに対し、MacBook Airはファンレス構造となるのが大きな違いで、RAW現像などの重たい作業をしてもまったくの無音で使えます。
MacBook Airはファンレスだけに、M2チップの性能をいくぶん落としているのかと思いきや、実はまったく同じだといいます。今回、M2搭載の13インチMacBook Proとベンチマークを比較してみましたが、ほぼ同等の結果が出ました。
ただ、放熱には少し気を配ったほうがよさそうです。ベンチマークの実行中、MacBook Airは底面とキーボードの中央部付近がやや熱くなりました。開口部のあるキーボード面も放熱で大きな役割を担っているため、RAW現像や動画編集などの重たい処理を連続して実行する場合、パネルを閉じた状態で外部ディスプレイに表示するクラムシェルモードは使わず、パネルを開いた状態で使うのがよさそうです。
MagSafe復活はやはりうれしい
電源まわりでは、MacBook Pro 14インチ/16インチと同様にMagSafeに対応したのがうれしいポイント。うっかり電源ケーブルに足を引っかけても安心!というメリットよりは、コネクターをアバウトに近づければ吸い込まれるようにくっついて充電が始まる、というメリットが得られるのが最大の魅力だと感じます。USB Type-Cケーブルはコネクターをのぞき込まなければ接続できなかったので、充電の手間がだいぶ軽減されます。
2つのUSB-Cポートを備える新しい「35W デュアル USB-C ポート搭載コンパクト電源アダプタ」が付属するのが注目できます。オプションの67Wタイプの電源アダプタを用意すれば、わずか30分ほどでバッテリーを半分充電できるのも光ります。バッテリー駆動時間も約18時間と長く、不満はありません。
MacBook Proファンも気になる高コスパの1台
筆者は、ユニボディ構造となった2008年登場の15インチMacBook Pro(MB471J/A)以来、MacBook Proを愛用しています。当時のMacBookやMacBook Airと比べると、MacBook Proは処理性能やディスプレイ性能などで明確なアドバンテージがありました。多少の見栄を張りつつも、性能の高さを評価して「仕事で使うからやっぱMacBook Proじゃなきゃ」と指名買いしてきました。
しかし、今回のMacBook Airは性能面や装備面がグッと引き上げられ、MacBook Pro 14インチ/16インチとの差が縮まったと感じます。見た目もMacBook Proっぽくなり、“MacBook Proの格下モデル”という印象は確実に薄まりました。現在、2016年モデルのMacBook Proを使っているのですが、バタフライキーボードの反応がいまひとつで、バッテリーの持ちも悪くなり、何より相当熱くなる…と不満を感じており、新しいMacBook Airが大いに気になってきました。
先日の価格改定で、MacBook Proの14インチモデルは274,800円からになりました。新しいMacBook Airにはないワンランク上の装備を持つのは確かですが、MacBook Airよりも11万円も高いとなるとなかなか手は出せません。私みたいなMacBook Proシリーズにゾッコンな人も、ぜひチェックしてもらいたい1台に仕上がっていると感じました。