西山朋佳白玲への挑戦権を争う第2期ヒューリック杯女流順位戦(主催:ヒューリック株式会社)、7月13日(水)にはA級9回戦の最終一斉対局が東西の将棋会館で行われました。

第2期ヒューリック杯女流順位戦A級のリーグ表

最終局前の時点で白玲挑戦の可能性を残しているのは、7勝1敗の里見香奈女流四冠と6勝2敗の伊藤沙恵女流名人です。最終局の結果が里見負け・伊藤勝ちの場合のみ両者によるプレーオフ、それ以外の結果は里見女流四冠の挑戦が決まるという状況です。里見女流四冠は石本さくら女流二段と、伊藤女流名人は加藤圭女流二段と対戦しました。

里見―石本戦は里見女流四冠の先手中飛車。石本女流二段が先攻する形で、後手は竜を作ることに成功します。ですがその代償として銀桂交換の駒損、この辺り、形勢は互角の範囲と言えます。

■制空権を握り里見が優位に

49手目、桂取りに打った▲8二歩が好手でした。△同竜とタダで取られる形ですが、それは▲5四歩の突き出しが、4六の角の筋を開けて竜を狙いつつ▲5三歩成も見ている絶妙手になります。 それゆえ石本女流二段は桂馬を見捨てて△9九とと香を取り、▲8一歩成と桂を取らせている間に△4四香と角銀の田楽刺しに打ちました。しかし里見女流四冠はあっさり▲同銀と取り、△同角に▲4五銀と打って中央の制空権を維持します。これは前述の銀桂交換が先手側に生きた展開となりました。 △3三角▲9一との局面は先手の香得です。さらにその後は▲3六香や▲5四歩など、攻める手に困りそうになく、里見女流四冠がペースを握ることとなりました。

■今期3度目の里見-西山の番勝負が実現

石本女流二段は持ち駒の銀と盤上の竜を駆使して、先手の飛車を押さえ込みに行きますが、里見女流四冠は巧みにそれをかわしてついに飛車を成り込むことに成功しました。 劣勢になった後手は端攻めからアヤを求めますが、先手が冷静に対応し、最後は後手玉を即詰みに打ち取って勝利。伊藤女流名人の結果を待つことなく、里見女流四冠が初の白玲挑戦を決めました。

第2期女流順位戦A級の最終結果は以下の通りです。

里見香奈女流四冠 8勝1敗 挑戦権獲得

伊藤沙恵女流名人 7勝2敗

加藤桃子清麗 6勝3敗

中井広恵女流六段 5勝4敗

加藤圭女流二段 4勝5敗

甲斐智美女流五段 4勝5敗

山根ことみ女流二段 4勝5敗

渡部愛女流三段 3勝6敗

石本さくら女流二段 2勝7敗 B級降級

鈴木環那女流三段 2勝7敗 B級降級

西山白玲と里見女流四冠の七番勝負は第1局が8月27日(土)に東京都港区の「グランドニッコー 東京台場」で始まります。今年度、早くも3度目となる両者によるタイトル戦番勝負です。これまでは西山白玲が女王を、里見女流四冠が女流王位を、それぞれ保持するタイトルを守っていますが、第3ラウンドは果たしてどうなるでしょうか。女流頂上決戦に注目です。

また、この日には女流順位戦B級の最終一斉対局も行われていました。こちらはラス前時点で中村真梨花女流三段と上田初美女流四段のA級昇級が決まっており、この両者は最終局も勝って、昇級に花を添えました。

第2期女流順位戦は残すところ、7月15日に行われるC級最終局のみとなります。こちらは3つの昇級枠に入れる可能性を残しているのは7名ですが、最後に笑うのは誰でしょうか。

相崎修司(将棋情報局)

白玲挑戦を決めた里見女流四冠(写真は第33期女流王位戦五番勝負第2局のもの 提供:日本将棋連盟)
白玲挑戦を決めた里見女流四冠(写真は第33期女流王位戦五番勝負第2局のもの 提供:日本将棋連盟)