米Bluetooth SIGは、Bluetoothオーディオの次世代規格「LE Audio」の仕様が完成したと現地時間7月12日に発表。同規格に対する認証も始まっており、対応製品は「今後数カ月のうちに登場することが考えられる」とする。年末商戦に向け、LE Audio製品のラインナップ拡大も見込んでいる。
LE Audioは、Bluetooth技術を管理する業界団体、Bluetooth SIG(Bluetooth Special Interest Group)が2020年1月に発表した規格。ワイヤレスオーディオのパフォーマンスが向上しており、具体的には高品質かつ低消費電力、左右独立伝送のマルチストリームにも対応した新しいオーディオコーデック「LC3」を含む、LE Audioを新たに提供。補聴器対応も追加しており、Bluetooth補聴器の開発を可能にする。なお、従来のBluetooth音声規格は、Bluetooth Classic無線機で動作する「Classic Audio」として引き続きサポートする。
LE Audioでは、複数人で音楽などワイヤレスで同時に楽しめる新機能「Auracast ブロードキャスト オーディオ」を導入したのも大きな特徴。オーディオ・ソース・デバイス(送信機)から1つまたは複数のオーディオ・ストリームを、無制限の数のオーディオ・シンク・デバイス(受信機)にブロードキャストすることできるようになる。これにより、たとえば友人のオーディオを共有する空間に招待したり、公共の場に置かれたテレビを複数人で音声付きで視聴したりといったことが可能になるという。
柔軟なアーキテクチャを持つことも特徴で、Bluetooth SIGは「ワイヤレスオーディオの将来的な技術革新のプラットフォームとしても理想的」と訴求。さらなる機能追加に向けた作業も進められているとのこと。
Bluetooth SIGのマーク・パウエルCEOは「この数年、数多くの困難があったが、メンバーが力を合わせてそれを乗り越え、Bluetooth SIG最大の仕様開発プロジェクトの完成に至った。LE Audioは、ワイヤレスオーディオ市場の可能性を拡げる。Bluetoothの新機能、Auracastブロードキャスト オーディオは私たちの生活を変えるオーディオ体験を約束し、友人や家族との距離を縮めるとともに、共用施設をはじめとする公共の場をすべての人がさらに利用しやすく、楽しめる場に変えることだろう」とコメント。
LE Audioの仕様プロジェクトに参画した、ソニー ホームエンタテインメント & サウンドプロダクツ事業本部 モバイルプロダクト事業部 事業部長の中村裕氏は、同規格について「低遅延で安定した接続性によるゲーム体験の向上や、Auracastブロードキャスト オーディオによる利便性向上などが期待される。多くの先進機能を提供するワイヤレスオーディオの新時代の到来を嬉しく思う」と述べている。
なお、ソニーは6月に発売した“常時装着”完全ワイヤレスイヤホン「LinkBuds S」の製品発表時に、今後提供予定のファームウェアアップデートによって、対応機器との組み合わせでLE Audioに対応することを明らかにしている。また、JBLが4月に投入したノイズキャンセリング搭載完全ワイヤレスイヤホン「LIVE FREE 2」も、LE Audioに対応するスペックを備え、将来的なソフトウェアアップデートなどで対応できるようにしている。