藤井聡太王位に豊島将之九段が挑戦する、お~いお茶杯第63期王位戦七番勝負第2局(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)が、7月13・14日(水・木)に北海道札幌市の「ぬくもりの宿ふる川」で行われます。手番は藤井王位の先手番です。
今期の王位戦、開幕局は豊島九段が快勝し、好スタートを切りました。角換わりから、1日目の午前中のうちに激しい戦いが始まり、猛然と攻め込んだ豊島九段が押し切りました。深い事前準備と決断力が際立つ、充実ぶりがうかがえる会心の内容でした。
とはいえ開幕局を制したのは前期も同様です。続く第2局の逆転負けが尾を引いてそのままシリーズを1勝4敗で失うこととなりました。豊島九段にとってはこの第2局に期するものは大きいでしょう。
対する藤井王位、昨年から続いていた2日制タイトル戦における連勝記録は第1局でストップしましたが、先手番の本局でタイに戻したいところです。前期は第1局が藤井王位の先手番で始まっていて、今期はその逆となっています。
対局場の「ぬくもりの宿ふる川」は定山渓温泉が流れていますが、将棋界においては第2期名人戦第3局の木村義雄名人―土居市太郎八段(段位は当時、以下同)戦が「定山渓の戦い」として知られています。第2期名人戦は4勝1敗で木村名人が制していますが、定山渓の戦いは千日手2回を含む熱戦を土居八段が勝ちました。土居八段の歴史に残る名局です。
また王位戦における定山渓温泉での対局は1962年の第3期、大山康晴王位―花村元司八段戦の第4局があります。大山王位が4連勝で王位3連覇を決めた一局です。
木村―土居戦は角換わりから、先手の土居八段がいわゆる「土居矢倉」に組んだ将棋。大山―花村戦は相居飛車の出だしから先手の花村八段が中飛車に転回した一局となりました。
本局は角換わり腰掛け銀の戦型になりました。先手の藤井王位が端で香を捨てて歩を入手したのが工夫の一着。香を捨てることなく自然に歩を入手する手もあるだけに意外性のある攻め筋で、リスクを恐れない藤井王位らしい踏み込みと言えます。
この局面で豊島九段が2時間以上の長考に沈み、そのまま昼休憩に入りました。すでに一手の間違いが致命傷になりかねない状況で、第1局同様、1日目の午前中からのっぴきならない局面を迎えております。
藤井王位がタイに戻すか、豊島九段が連勝して王位復位へ近づくか、両者の戦いは1日目から少しも目を離せません。本局は2日制で持ち時間は8時間。決着は14日の午後以降が予想されます。
相崎修司(将棋情報局)