米労働省が2022年7月8日に発表した6月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数37.2万人増、(2)失業率3.6%、(3)平均時給32.08ドル(前月比+0.3%、前年比+5.2%)という内容であった。

  • 6月雇用統計まとめ

(1)6月の非農業部門雇用者数は前月比37.2万人増と市場予想の26.8万人増を上回ったが、5月の38.4万人増(修正値)から増加幅はいくぶん縮小した。業種別では専門職・企業サービス(7.4万人増)やレジャー・接客(6.7万人増)が好調であった。ヘルスケア、情報、運輸・倉庫なども堅調に伸びた。ただ、非農業部門雇用者数の3カ月平均の増加幅は5月の38.3万人から37.5万人へと僅かに減速した。

  • 米非農業部門雇用者数の推移

(2)6月の失業率は4カ月続けて3.6%となった。市場予想も横ばいの3.6%であった。一方、フルタイムの職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)は、6.7%と5月から一気に0.4ポイント改善した。他方、労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率は市場予想(62.4%)に反して62.2%へと0.1ポイント低下した。

  • 米失業率と労働参加率の推移

(3)6月の平均時給は32.08ドルとなり過去最高を更新。伸び率は前月比では+0.3%と予想通りだったが、前年比では+5.1%と予想(+5.0%)をやや上回った。前年比の伸び率は5月改定値の+5.3%からやや鈍化したが、6カ月連続で5%台の高い伸びを維持した。

  • 米平均時給の推移

米連邦準備制度理事会(FRB)の積極的な金融引き締めが続く中で注目された今回の米6月雇用統計は堅調な内容であった。市場にくすぶっていた米経済の減速に対する過度な警戒感は和らいだと見られる。非農業部門雇用者数はごくわずかな鈍化にとどまり30万人台の増加幅をキープ。失業率もコロナ禍直前の2020年2月に記録した50年ぶり低水準の3.5%付近にある。広義の失業率とされる不完全雇用率は統計が開始された1994年以降で最低となった。平均時給が史上初めて32ドル台に乗せるなど賃金の高い伸びも続いている。

今回の雇用統計を受けて、FRBが7月26日-27日の連邦公開市場委員会(FOMC)で通常の利上げ幅の3倍に相当する75bp(0.75%ポイント)の利上げを行う可能性が高まったと言えるだろう。他方、日銀は大規模な金融緩和政策を粘り強く続ける方針を示しており、7月20日-21日の金融政策決定会合でも緩和維持のスタンスを修正する公算は小さい。こうした米国と日本の金融政策の方向性の違いが為替市場におけるドル高・円安の流れを助長しており、24年ぶりの137円台に上昇したドル/円相場がさらに上値を伸ばす可能性も高まっている。