TBS系ドラマ『最愛』が、「第38回ATP賞テレビグランプリ」(全日本テレビ番組製作社連盟主催)のドラマ部門で最優秀賞を受賞。12日、都内で行われた受賞式に俳優の松下洸平が登壇し、喜びを語った。

  • 松下洸平

松下は「最終回が終わって、もう半年以上経ちます。けれども他の作品に伺うたびに、いろんな方から“『最愛』見てました”と言われて、僕『最愛』しか出てないんじゃないかと思うくらい(笑)、多くの方から『最愛』の話をしていただきました。それほどたくさんの方に届いたんだなと実感しますし、そういった作品に参加できたことが僕自身にとって宝物のような思いです」とコメント。

また、「現場に入って、塚原(あゆ子)監督が僕に対して、このドラマにおいての宮崎大輝はこういうキャラクターになればいいねと話をしてくれたのと、もう1つすごく印象的だったのが、『大輝のクセを1個作りたい』とおっしゃってくれました。大学時代の宮崎大輝は前髪を切りすぎてしまったという設定にして、事あるごとに困ったら前髪を直すという、細かい役のディティールというものを1つ1つ丁寧に作ってくださったからこそ、4カ月作品を通して、自分と宮崎大輝が本当に重なっていったような感覚がありました。そういった経験は多くできることではないと思いますし、これからの自分の俳優人生において、細かいディティールをたくさん決めて役として生きることの大切さと楽しさを『最愛』という現場で学ばせてもらいました。これからも、『最愛』という現場で学んだことを1つでも多く生かせるように、俳優業を専念していきたいと思っております」と決意を述べた。

役作りについては、「刑事である前に宮崎大輝であることを最優先して、お芝居を作らせていただきました。だからこそ葛藤が生まれましたし、悩みましたし、だけれども悩んで苦しんで多くのスタッフの皆さんや共演者の皆さんと話し合うことで、作品というのがどんどん分厚くなっていくものなんだなということを実感しましたし、何よりも最終回直前まで犯人が誰か分からなかったのが、非常に功を奏したと思います。何も知らなかったからこそ、その場で起きたリアルな表情を塚原監督が収めてくれましたし、細かいところまで緻密に計算して作ってきたからこその宮崎大輝だったと思います」と明かす。

松下に犯人を知らせなかった塚原監督は「警察のチームの3人だけ知らなかったんです。ごめんね(笑)」と謝罪。松下は「我々警察チームもYouTubeの考察を一生懸命見て誰が犯人かというのをみんなで考えたんですけど(笑)、正解には至らなかったですね」と、視聴者と同じ立場で撮影に臨んでいたそうだ。

撮影現場について、松下は「シリアスな場面も多かったんですけど、本当に和気あいあいと笑顔で撮影しておりまして、みんなが楽しんでいるという状況がいい作品を作る上でとても大切だし、不可欠なことなんだとすごく感じました。何よりも皆さんが本当に明るくて、物語をみんなで楽しんでいる空気感であったことが、非常にうれしかったでしたね」という。

そして、会場にいる番組制作者に向け、「我々演者も番組を支えてくださるスタッフの皆さんも同じ立場だと僕は常に思ってます。コロナ禍で大変な思いをしてるのは演者だけではありませんし、暑い中でマスクしながら番組を制作しなければいけないスタッフの皆さんのご苦労を我々は常に感じています。だからこそ、僕らが気づけることは常に気づけていたい。ドラマも情報もバラエティも1人ではできないと思いますし、自分一人では何もできないからこそ、スタッフの皆さんに支えられていますし、まだまだ大変な状況が続いてますけど、皆さんと一緒に1つのものを作っていきたいなと思っています」とエールを送った。

  • 塚原あゆ子監督

  • トロフィーを受け取る新井順子プロデューサー(左)

塚原監督は、今回の受賞に「私と新井(順子プロデューサー)は約10年前からサスペンスのドラマを作り出しまして、初めは原作ものでやらせていただいていたんですけど、3本作ったところでオリジナルをやっていいよと言ってくださった方がいて、それに挑戦したのがこの『最愛』です。10年前からスタッフがずっと一緒にやってくださってる感じで、数字が行かなかったこと、熱狂に至らなかったことに毎回毎回反省と研究を繰り返して、ようやく『こういうフォーマットもあるんだな』という形にたどり着いたのが『最愛』です。この10年のうちにテレビドラマの置かれている環境も大きく変わりまして、まずはTVerで見るという世界が始まったこと。それからYouTubeとかで考察班の人たちが熱狂を一緒に作り出してくださるようになったこと、そういう新しい枠組みで、テレビの枠を超えて番組を届けるというのを考えるようになったと、この10年やってみて思っております。こういう賞を頂いたことで、次は何をやろうかと、10年やってきた仲間にこれから話すのが楽しみです」とあいさつした。

ドキュメンタリー部門の最優秀賞は『ETV特集「“玉砕”の島を生きて~テニアン島 日本人移民の記録~」』(グループ現代、NHKエンタープライズ/NHK Eテレ)、情報・バラエティ部門の最優秀賞は『ヤギと大悟』(シオン/テレビ東京)が受賞し、3部門の最優秀賞から選ばれるグランプリには『ETV特集「“玉砕”の島を生きて~テニアン島 日本人移民の記録~」』が決まった。