「第38回ATP賞テレビグランプリ」(全日本テレビ番組製作社連盟主催)の受賞式が12日、都内で行われ、最優秀新人賞に『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ)の『山奥ニートの結婚 ~一緒に赤ちゃん育てませんか~』(今年2月20日放送)を担当したTBSスパークル・竹内みなみディレクターが選ばれた。
これは、社会や家族とのつながりから離れ、和歌山県の限界集落で共同生活をする若者たちを追ったドキュメンタリー。住人同士で結婚・妊娠し、出産後はシェアハウスで子育てする様子も描いた。
同賞では「どんな生き方をしていても人が成長する瞬間は無限にあることに気づかされる。なかなか踏み込みにくいニートの集団生活、結婚・出産というデリケートなテーマの中でいかにリアルな本音を引き出すか、その苦労は想像に難くない。1つ1つの出来事がもたらす変化を粘り強く取材したディレクターの手腕と、さらに人柄も一役買ったことだろう。欲をいえば出産後の本人・周囲への影響が駆け足だったので、もう少しじっくり見たかった」と講評し、全96票のうち25票を獲得した。
受賞式に登壇した竹内ディレクターは「この番組ができたのは、出産・子育てという人生の中の激動の時間を全部撮影させていただいたご夫婦とシェアハウスの皆さんのおかげだと思っています。この前テレビ電話でシェアハウスの方とお話させていただいたときに、生まれた赤ちゃんが3倍くらい体重が増えて大きくなっていたので、離乳食とかを持って和歌山を訪れたいと思います」とコメント。
取材を振り返り、「シェアハウスで山奥ニートの方が暮らしているというのはどんな暮らしなんだろうと思って最初はドキドキしてカメラを片手に行ったんですけど、心配だったのは最初だけでした。皆さん1カ月2万円の生活費で暮らされているんですけど、引きこもりたいときは引きこもって、人に会いたくなったらリビングに行ってみんなでボードゲームをしたり、すごく和気あいあい楽しく暮らしていて、本当に理想郷だなと思いました」と印象を語る。
シェアハウスの住人たちは当初、赤ちゃんに対して恐る恐るの様子だったそうだが、「今は徐々に徐々にという感じで、温かく見守って健やかに育っています」といい、母親も「しっかりお母さんやってます」とのこと。
今後については、「あまりにプライベートを撮られるのはシェアハウスの方は結構プレッシャーかなと思っていたので、プライベートで見守りたいなと思います」とした上で、制作者として「多様な生き方があってもいいんだよということを番組を通して伝えていきたいと思っているので、出産・子育てにかかわらず、様々な生き方をして日々頑張ってらっしゃる方にカメラを向けていきたいと思います」と意欲を示した。
『ザ・ノンフィクション』では他にも、『母と息子のやさしいごはん ~親子の大切な居場所~』(昨年10月3日放送)の真壁優仁ディレクター(ネツゲン)が優秀新人賞。『結婚したい彼女の場合 ~コロナ禍の婚活漂流記~』(今年1月16日・23日放送)がドキュメンタリー部門で優秀賞を受賞した。