そこで今回の研究では、これまでの超短光パルスが伝播する様子を可視化する技術を応用することにしたという。その結果、1.78ピコ秒という極めて短い時間間隔で、発生する2つの超短光パルス光の伝播をスローモーション動画として記録・観察することに成功したとする。
これまで、拡散板や平板構造の光学部品中を伝わる、ある瞬間の超短光パルスが記録された例は報告されていたものの、ピコ秒やそれ以下の極めて短い時間間隔で伝播する複数の超短光パルスや動く物体は、通常のカメラではそれぞれの動きを分解できず重さなって記録されてしまうため、記録・観察することは困難だったとする。
今回の研究で提案された技術では、極めて短い時間間隔で2つの超短光パルスを発生させる遅延光学系と呼ばれる光学システムが開発され、さらに2つの動画を空間的に分割して記録する手法も導入することで、極めて短い時間間隔で発生する、複数の超短光パルスの記録・観察が実現されたという。
実証実験として、今回の研究では、1.78ピコ秒の時間間隔を与えた拡散板上を伝播する2つの超短光パルスの記録を実施。光が伝播する様子をわかりやすくするため、拡散板には解像力テストチャートのパターンを貼り付ける形で実施され、その結果、それぞれの超短光パルスが伝播する様子が重畳することなく、スローモーション動画として観察することに成功したという。
ただし課題として、細胞の観察や材料加工に適用するには観察範囲が広すぎること、微弱光の検出が困難であることが挙げられるとしており、その理由として、顕微鏡光学系などの拡大観察が可能なシステムを導入していないことや、記録時に余分な光が発生していることを主な原因と研究チームでは挙げている。
なお、細胞の観察や材料加工で照射される超短光パルスの数はより多数であるため、今後は記録できる超短光パルスの数を増加させる、新たな光学系の開発も行う予定としている。