上方変換材料は、入射した光の波長をより短く変化させて出射するような種類の材料のこと。短波長光への変換により、ある半導体材料に吸収されなかった取りこぼしの光成分が、同じ半導体材料ないしバンドギャップエネルギーの近い半導体材料に吸収され発電に有効に利用されることが期待されている。
またこのアイデアは接合の形成と同時に界面の光学的機能を発現させる新しい半導体プロセスの発想といえると研究チームでは説明しており、この概念の実験的実証として、上方変換ナノ粒子をハイドロジェル中に分散させた接着剤が作製され、それを介して、多接合太陽電池の上側のセルを模したシリコン(Si)薄膜とSi太陽電池のウェハとの接合が実施されたという。
その結果、上方変換材料のない太陽電池と比較すると、今回の手法で作製された太陽電池は、Si太陽電池への入射光がより吸収されやすい波長帯に変換された効果により、集光型太陽電池モジュールを模したレーザー照射下において、2割程度の電流の増大、3割程度の発電効率の上昇が観測されたとする。
この成果について研究チームでは、界面材料にこのような機能性材料を採用することで、単一の作製工程で高性能な接合形成と光機能の発現という一石二鳥の高効率化が可能になり、簡便(低コスト、高スループット)かつ高性能な光・電子デバイスの生産プロセスの実現につながることが期待されると説明している。
なお、研究チームでは今後、同接合技術を活用した高性能な多接合太陽電池やマルチカラーLEDといった光デバイスの開発へと展開していく予定としている。