ドコモとワイモバイルから発売中のシャープ「AQUOS wish2」は、シンプルなエントリーモデルのスマートフォンです。シャープにはコスパの高さで人気のミドルレンジモデル「AQUOS sense」シリーズもありますが、最近は高機能化に伴って、お値段もそれなりになりつつあります。
「AQUOS wish2」の魅力は、なんと言ってもその手頃な価格。いろんなものの価格が高騰している昨今、2万円台で購入できるスマートフォンは有り難い存在です。もちろんスペックや機能面では、安さなりの割り切りが必要なところもあるのですが、一方で単に価格だけを追求しただけの製品ではないこだわりも感じられます。どんなところを割り切っていて、どんなところにこだわりがあるのかじっくりチェックしました。
再プラ使用の地球にもおサイフにも優しいスマートフォン
「AQUOS wish2」は、2022年1月に発売された「AQUOS wish」の後継機種ですが、実は見た目もスペックもほとんど変わっていません。変更されたのは、主にCPUとAndroid OSのバージョン。CPUにQualcomm製のSnapdragon 695 5G Mobile Platform 2.2GHz+1.8GHz オクタコアを搭載し、OSはAndroid 12になっています。CPUのアップグレードによって処理性能はアップしていますが、メモリーやストレージを含むそのほかのスペックは据え置きなので、マイナーチェンジモデルであると言えます。
ディスプレイは約5.7インチHD+(720×1,520)で、大画面化の一途を辿る最近のスマートフォンの中ではかなりコンパクトです。本体サイズは約H147×W71×D8.9mm、重さ162gと、胸ポケットやパンツの前ポケットにも入れやすいサイズ感になっています。メモリーは4GBでストレージは64GB。外部メモリとして最大1TBのmicroSDにも対応しています。バッテリーは、コンパクトなサイズの割には大きめと言える3,730mAh。nanoSIMのほかeSIMも利用でき、2回線の設定が可能です。
5G対応で国内キャリアの主要バンドをサポートしているほか、ドコモ版は5Gのn79と3GのBand2、ワイモバイル版は5Gのn3とLTEのBand38/41をサポート。販売元のキャリアによって対応バンドに違いがある点に注意が必要です。また色もアイボリー、チャコールのほか、ドコモ版ではブルーとコーラル、ワイモバイル版ではオリーブグリーンと、選べるカラーバリエーションが異なっています。
この本体色は「AQUOS wish2」の特徴のひとつで、どの色も年齢や性別を問わず手に取りやすいアースカラーとなっています。指紋がつかないマットでサラっとした質感の筐体には、35%の再生プラスチック材が使用されているとのこと。一般に再生プラスチックはコストが高く、強度も低いと言われますが、本機はIP67の防水/防塵性能に加えてMIL規格にも対応するなど、かなり頑丈に作られています。おかげで雨天時のキャンプでも、水濡れや汚れを気にせずに安心して使うことができました。価格も前述の通りですから、頑丈かつサステナブルで、地球にもおサイフにも優しいスマホと言えるでしょう。
カラーだけでなく、デザインもすごくシンプル。コンパクトなサイズ、マットな質感に加えて、側面が緩やかにくぼんでいるために指がかりも良く、手に持ちやすいです。個人的には背面のカメラの出っ張りがほぼないのも気に入ったポイント。余計な主張がないというか、キャリアやメーカーのロゴがなければ、ナチュラルテイストの生活雑貨店に並んでいても違和感がない……そんなデザインだと思います。
一方で、最近のミドル&ハイエンドモデルに比べると、ディスプレイ周りの額縁がやや太いのは、割り切りが必要なポイントのひとつ。ディスプレイの解像度もHD+と、FHD+が当り前のミドル&ハイエンドモデルに比べると見劣りします。ただそれも見比べれば違いがわかるという感じで、ディスプレイサイズが小さいこともあり、使っていて特に解像度が気になるようなことはありませんでした。なお、ディスプレイは他のAQUOS製品と同様に、画質を標準/ダイナミック/ナチュラルと切り替えられるほか、太陽光下で見やすいアウトドアビューや、目にやさしいリラックスビューなどの機能も用意されています。
AQUOS独自の便利機能を利用可能
生体認証は指紋センサーのみ。最近多い一体型ではなく、電源ボタンとは別々に分かれているのですが、指紋センサーに指をあてるだけで画面オン&ロック解除が一度にできるので、使い勝手に不自由はありません。AQUOS独自の「Bright Keep」機能で、端末を持ったら画面を点灯するようにも設定できるので、指紋センサーとあわせてさっと使い始めることができます。
指紋センサーを長押ししたときに任意の決済アプリを起動したり、決済やポイントアプリを登録したフォルダを素早く表示できる、やはりAQUOS独自の「Payトリガー」機能にも対応しています。ただ筆者が試した限り、画面オン→ロック解除からそのままPayトリガーを起動とはならないようで、ロック解除後に一旦指を放し、ホーム画面で再度長押しする必要がありました。
このほか電源キーの2回押しでカメラが起動する「クイック操作」や、自宅などの位置情報を登録しておくとその場所で自動的にWi-Fiテザリングがオンになる「テザリングオート」など、かゆいところに手が届くAQUOSの独自機能がそのまま利用できるのは本機の大きな魅力です。一方でこれもハイスペック機と使い比べてみてわかることとはいえ、タッチやスクロールといった動作がややもっさりしているのは、割り切りが必要なポイントだと感じました。なお、ベンチマークテストの結果は以下のとおりです。
カメラは単眼、割り切りは必要だがシンプルで使いやすい
割り切りが必要なのは、カメラも同じです。メインカメラは1,300万画素の単眼。デジタルズームで拡大はできるものの、超広角や望遠/マクロには対応していません。セルフィー用のサブカメラは約800万画素で、どちらもF値は2.0と、AQUOSの上位モデルに比べるとやや暗いシーンに弱いスペックになっています。
実際には夜景モードを備えていて長時間露光撮影ができるので、夜間や暗い室内でもそこそこ明るくは撮れるのですが、明暗差の大きなシーンでは白飛びや黒つぶれが起きやすいようです。HDRをオンにして撮影することで低減はされますが、HDRをオンにすると、シャッターを切ってから写真が保存されるまでにややタイムラグが生じる点が気になりました。
カメラアプリは操作がシンプルで、モードの切り替えなども簡単にできるので使いやすいと思います。「Snapchat」によるエフェクトが手軽に楽しめるモードや、QRコードを読み込むモードがワンタッチで起動できるほか、ポートレート/写真/動画/翻訳の各モードをスライドで切り替えられる仕様。HDRやナイトモードのオン、オフは画面右上のアイコンをタップしてオン/オフするなど、すべて1画面で操作できるのが直感的でわかりやすいです。
カメラをオンにした状態をキープしたまま、写真を撮りまくっていたときは、さすがにバッテリーの減りが早くなったものの、全体的にバッテリー持ちも良いという印象を受けました。特筆するほど長持ちするというわけではありませんが、それなりの頻度でブラウザや動画再生、カメラを使用しても、2日間は余裕で使えていました。例によってACアダプターは付属していないのですが、急速充電対応のACアダプターを使用すれば、約130分で充電が可能となっています。
「AQUOS wish」の発表時、このシリーズは「モノを持ちすぎない」「気に入ったモノを長く大切に使う」という価値観を意識して、開発された製品だという説明がありました。「AQUOS wish2」も同じで、CPUはアップグレードされたものの、デザインやスペックは据え置き。ディスプレイやカメラなどの機能もやはりミニマムです。その一方で使いやすさには妥協せずに、AQUOS独自の機能などが便利に使えるようになっています。
スマホは毎日使う製品だけに、愛着が持てるかどうかは、デザインもそうですが使い勝手に左右されます。その意味で本機は、機能の割り切りと愛着が持てる使いやすさのバランスが、なかなか絶妙なのではないでしょうか。