また、GaN結晶にSi原子を1×1020cm-3以上の高濃度で導入することで、新材料の縮退GaNを合成できることも見出したほか、この縮退GaN結晶の中には高エネルギー状態の電子が存在し、縮退GaNを新しい電極結晶としてAlGaNと接触させることによって、AlGaN中に低抵抗で電子を注入できるようになることも見出したという。

  • スパッタリングで成長させた縮退GaN結晶の高分解能電子顕微鏡画像

    (左)スパッタリングで成長させた縮退GaN結晶の高分解能電子顕微鏡画像。(中央)試作されたAlN/AlGaN HEMT素子特性評価の様子。(右)(中央)の拡大画像 (出所:東大生研Webサイト)

さらに今回の研究では、縮退GaNをトランジスタの電子注入層であるソースとドレインに利用した高性能のAlN/AlGaNヘテロ接合高電子移動度トランジスタ(HEMT)も試作することに成功しており、低抵抗な高性能AlGaNトランジスタを実現できることも実証したとしている。

なお、研究チームでは今回の手法を用いることで、低コストな高性能パワー半導体材料の作製が可能となるとしており、将来の高性能電力変換素子や6G通信など、次世代無線通信用素子としての利用が期待できるとする。そのため研究チームでは今後、新素子の構造最適化を行い、社会実装の準備を進めていくとしている。