国立天文台(NAOJ)水沢観測所が中心となって運営している「RISE月惑星探査プロジェクト」は7月5日、気象衛星「ひまわり8号」が地球を撮影した際に、近辺に写りこんだ月を調べたところ、最高5kmの解像度で撮影されており、クレーターなどの地質ごとの違いを見ることもできる画像であるなど、月観測に利用できることを発表した。
同成果は、東京大学大学院 理学系研究科 地球惑星科学専攻の西山学大学院生、NAOJ RISE月惑星探査プロジェクトの竝木則行教授、東大大学院 理学系研究科 地球惑星科学専攻の杉田精司教授、東大大学院 理学系研究科 附属天文学教育研究センターの宇野慎介大学院生らの共同研究チームによるもの。詳細は、地球惑星科学全般を扱うオープンアクセスジャーナル「Earth, Planets and Space」に掲載された。
ひまわり8号は、カラー画像合成用の可視域での3原色の波長に加え、近赤外域の3波長、赤外域の10波長の計16波長で地球の同時観測が可能な気象衛星。カメラはもちろん地球に向けられているのだが、そのスキャン範囲は地球周辺も含まれるため、地球の縁付近に天体がタイミングよく位置した場合、一緒に写り込むことがあるという。
これまで月などの太陽系内の天体やベテルギウスなどの恒星が写り込んでいることが知られていたが、中でも月に関しては2021年11月末時点で900回以上、さまざまな波長で撮影されていることが判明。中でも中間赤外波長の画像は、地球上からでは大気の影響を受けるために観測が難しいこと、ならびにほかの探査機による観測も決して十分にされていないことから、貴重なデータだという。しかし、実はこれまでそのデータが月の研究用途で利用されたことがなかったとのことで、研究チームは今回、科学的な有用性を感じ、解析を試みることにしたとする。