「佐藤錦」「紅秀峰」で知られ、生産量・品質ともに日本一を誇る山形のさくらんぼ。その第三の品種として、「やまがた紅王」が加わり、6月23日から先行販売を開始した。

  • 歌舞伎座で山形県のさくらんぼ新品種「やまがた紅王」を披露する、歌舞伎俳優・中村橋吾さんと吉村美栄子山形県知事

全国のさくらんぼの7割以上を生産する山形県が満を持して開発したという「やまがた紅王」。7月1日に歌舞伎座で山形県知事の吉村美栄子氏や山形県出身の歌舞伎俳優・中村橋吾さんらが登壇するメディア向けのプレデビューイベントが開催され、その特徴などが紹介された。

山形のさくらんぼ農家が期待を寄せる理由

"さくらんぼ県"山形から待望の超大玉の新品種さくらんぼ「やまがた紅王」。その最大の特長は果実の大きさ。3L(横幅28mm以上)~4L(同31mm以上)中心の大玉で、「佐藤錦」並みの糖度で酸味が少なく、食味良好で果肉が硬いため日持ち性にも優れるという。

  • 山形県のさくらんぼ新品種「やまがた紅王」

「やまがた紅王は平成9年に現在の山形県園芸農業研究所で交配し、育成を開始してから20年以上の歳月を要して今年プレビューの運びとなりました」とは、山形県知事の吉村美栄子氏。

「やまがた紅王の収穫期は佐藤錦と紅秀峰の間にあり、さくらんぼシーズンとなる6月中旬から7月上旬にかけて、消費者の皆様に高品質な山形県産さくらんぼを切れ目なく、継続的にお届けすることができるようになりました。こうした特徴を持つやまがた紅王に対する生産者の期待は非常に大きいものがあります」(吉村氏)

  • 「やまがた紅王」を紹介する吉村美栄子山形県知事

山形県の果樹では初めてとなる生産者登録制度を採用し、2018年秋から2021年までの4年間に、約2,400経営体の皆様から約2万6,000本の苗木を導入したという。

「県内に2万本が栽植されるまで、紅秀峰は5年、紅さやかは13年かかりました。やまがた紅王は2年間でこれを突破しております。また、知的財産の保護、ブランド力強化を図るため、やまがた紅王は国内外で名称とロゴマークの商標登録を行っています」(吉村氏)

「果実の大きさが2L(横幅25mm以上)以上で、果実の着色割合が50%以上」という品質基準をクリアしたものだけが、商標登録済のロゴマークを付して「やまがた紅王」として販売できる仕組み。

プレデビューとなる今年は、出荷量も6トン程度(県全体さくらんぼ収穫量の0.05%)と限られているが、2023年の本格デビュー以降、出荷量を年々増加させていくという。JA全農山形運営委員会会長の折原敬一氏は、意気込みを語った。

「やまがた紅王は、まさにこれからの山形県産さくらんぼをリードする品種。知名度向上と高品質で安定的な栽培に向け、生産者とJAが一体となって、早期にプランド品種である佐藤錦や紅秀峰と並び、それを追い越すような品種にやまがた紅王を育て上げていきたいと考えています。山形のさくらんぼの美味しさや特徴ある品種バリエーションをお楽しみいただけるよう、オール山形体制で取り組みます」

  • JA全農山形運営委員会会長の折原敬一氏

「歌舞伎で言えば千両役者」

山形県鶴岡市出身の歌舞伎役者でやまがた特命観光・つや姫大使などを務める中村橋吾さんは、味わいの感想とともに応援メッセージを送った。

「早速食べさせていただきましたが、すごく美味しいです。甘くて、大きくて、見た目も非常に美しい。私は山形県出身ですからさくらんぼを子供の頃からよく食べてきましたが、さくらんぼ界に新たなスターが生まれたなと。歌舞伎で言えば千両役者です。このプレデビューをきっかけに、これから紅王は世界に羽ばたいていくと思います」(中村さん)

  • 歌舞伎俳優・中村橋吾さんも「さくらんぼ界に新たなスターが生まれた」と絶賛

質疑応答で記者から過去どれぐらいのさくらんぼを食べたことあるか聞かれると、「本当に数え切れないほど食べておりましたので。正直、どのぐらい食べたかはちょっとわからないです。申し訳ございません(笑)。でも、どうでしょうね、この会場ぐらいは食べたかもしれません」(中村さん)と述べ、笑いを誘っていた。

本イベントは「やまがた紅王」の「さくらんぼの王様としての風格がある王道感、和のテイスト、存在感、インパクト」を伝えるため、歌舞伎座の「花篭」や「歌舞伎座大間(劇場1階ロビー)」を会場に開催された。

これらの会場を使用した農産物のメディア向けイベントは初とのことで、吉村知事は歌舞伎座を会場にした理由について、「歌舞伎座は日本を代表する伝統文化ですので、世界に羽ばたく上で相応しい場だと思います。間もなく山形県はさくらんぼを生産してから150周年を迎えますが、これも粘り強く取り組んできた先人の努力があったからこそ。将来に向けて、より長く発展していけるよう国内外にPRし、将来の輸出を視野に取り組んでいきたいと思っています」とコメントしていた。