金融広報中央委員会のデータによると、単身世帯の平均貯蓄額は1,062万円と言われており※、みんなそんなに貯めているの? と今、貯蓄がなくて不安に感じる人も多いのではないでしょうか。

※出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」[二人以上世帯調査][単身世帯調査](令和3年)

年収800万円でも貯蓄がない人もいますし、反対に20代で年収300万円でも平均貯蓄額を上回る貯蓄ができている人もいます。

このように、貯蓄できるかどうかは「年収」ではなく、いかに「習慣化」するかどうかですので、本記事では、ご自身の金銭感覚を見つめ直すきっかけになる情報と、貯蓄を増やしていくための手順について解説をします。

※図は金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」[二人以上世帯調査][単身世帯調査](令和3年)をもとに筆者が独自に作成

貯蓄0だと困ること

なぜ貯蓄をしなければいけないのか?

簡潔にまとめると、不測の事態が起きた時に借金をしなければいけなくなるからです。不測の事態の例えとしては、下記のようなことが考えられます。

(1)雇用や健康状態などで収入が途絶えた時に生活ができない
(2)家電や家の設備が壊れた時に対応ができない

不測の事態はそんなに起きないと考える方も、必要なものが必要な時に買えないのは避けたいと思うのではないでしょうか。

ライフイベントを把握しましょう

また、今は問題なく生活ができているとしても、将来このようなライフイベントが訪れた時のために貯蓄をしておく必要があります。自分が思い描く人生を歩むには、いつまでにどのくらい貯めておかなければいけないのかイメージをしてみると、今から貯蓄をしておかなければ! と感じる方が多いと思います。

まずは生活の収支を黒字化することから始めよう

貯められていないということは身の丈に合った生活ができていない可能性が高い!

貯蓄ができない人のよくある特徴としては、家賃が月収の30%超え・ランチは毎日外食・飲み物は毎日自動販売機で購入・趣味や美容費に予算を立てていないなど、大きな贅沢はしていないですが、一つひとつの支出が少しずつオーバーしている人が多いです。

このような状態は、身の丈に合った生活ができていないということになります。しかし、全て節約をするとストレスが溜まりなかなか継続ができないので、お金をかけたい部分の予算を確保した分、こだわりがない他の支出で調整をしていくと、無理なく継続することができるようになります。

意識すべきところは、どこにお金をかけたいのか優先順位を決めて、生活にメリハリをつけることです。

余談ですが、私の場合はランチが仕事を頑張る糧になっているので、割り切ってほぼ毎日外食しています。その分ストレスのない範囲で家の条件を落として家賃を抑えたり、携帯をサブキャリアに変更して月3,000円以内にしたり、「欲しいだけではなく必要なものか」と買い物をする基準を作るなど、毎月の支出を調整して、貯蓄額を死守しています。

支出の優先順位を決めましょう! 収支バランスを可視化するにはアプリ版家計簿がおすすめ

ざっと収支が分かる人は、月々の支出と年間の支出を書き出してみて、支出の優先順位を決めてみましょう。

自分がいくら使っているのか分からないという人は、収支を把握するところからスタートです。把握する手段の家計簿は手書きやエクセルやアプリなどいろんな方法がありますが、お勧めはアプリ版の家計簿です。理由は、カード決済がメインの場合は、勝手に食費・日用品などとカテゴリに分けて、合計金額を出してくれるので、今月は食費を使いすぎてしまったなどと振り返りがしやすいからです。

あくまでも家計簿をつけるのが目的ではなく、振り返りをして支出のコントロールすることが目的なので、コントロールができるようになれば家計簿をつけるのをやめてもOKです。

もちろん紙やエクセルの方が合っているという方もいると思うので、ご自身に合ったやり方でご自身が何にいくら使っているのか把握をしてみましょう。

貯蓄の第一歩

貯蓄の目標額を決めて先取貯蓄が鉄則

将来のライフプランによっても変わりますが、一人暮らしの場合は手取り収入の25%を貯蓄、家賃負担のない実家暮らしの場合は40%を目標に貯蓄をしていくことをお勧めします。

収入から支出を引いて余った分で貯蓄をするという順番ではなく、収入が入ってきたら、別の口座へ貯蓄分を移動させて、余った分でやりくりをすると貯まりやすいです。

例えば、年収400万の場合は、手取り収入が約310万ですので、一人暮らしの方は77.5万円・実家暮らしの方は124万円が目安の貯蓄金額です。

この77.5万円を貯めていけると、5年で387.5万円→10年で775万円→20年で1,550万円と毎年のコツコツとした積み重ねが、未来の自分を助けることになります。

こんな額は無理! という方も諦めないでください。大切なことは習慣化させることですので、「まず月1万円は必ず貯蓄しよう」「ボーナスの半分は手を付けないようにしよう」などとご自身の中で目標を決めて、できるところからスタートしましょう。

貯蓄のステップを把握しましょう

一概に貯蓄といってもステップがあり、この順番を意識するとスムーズに貯めやすくなります。順番としては、生活を守るためのお金→5年以内に使うお金→5年以上先に使うお金の順に貯めていくことをお勧めします。

生活防衛費とは?

「緊急予備資金」とも言われており、不測の事態が起きてしまった時に生活費に充てるものや突発的な支出を賄うための費用です。具体的には、会社員や公務員の方であれば、生活費の3ケ月~半年分、自営業の方は、会社員に比べると収入が継続して入ってくる確実性がないことや傷病手当金がないなど社会保障が薄いことから、生活費の半年~1年分が目安です。

現在貯蓄がない場合は、この生活防衛費をまず最優先で貯めて、常に確保するようにしましょう。

また、10年以上使わないお金は、預金ではなく投資信託などに預け先を変えておくと、お金が働いてくれて貯めなければいけない金額が結果的に減る可能性が高いので、預け先を変えることを検討してみるのも一つの方法です。

ただ、あくまでも上記の「貯蓄ステップ」を踏んだうえでのお話となりますので、5年以内に使うお金を運用に回してしまって、必要な時に引き出せずに、借金をすることになってしまったなどという事態にならないようにご注意ください。

一人でも多くのご家庭により良い状態になってほしい・将来困ってほしくないという想いで、ファイナンシャルプランナーになって知ってよかったことを盛り込みましたが、長年の金銭感覚をいきなり変えることは大変なことだと思います。

ただ、将来的に貯蓄を頼りにしなければならない時が必ず来るので、お金をかけたいところ、かけなくてもよいところを自分自身と相談しながら生活にメリハリをつけて、できるところからスタートしていきましょう!

執筆者:ブロードマインド株式会社 志村織帆(しむら・りほ)

1995年、神奈川県生まれ。教員免許を取得するも、人生において切り離せないお金の面で家庭をサポートしたいという思いから、ファイナンシャルプランナーの道を選択しブロードマインド株式会社へ入社。「家計収支改善」「節約術」「年金」を得意分野とし、年間約300世帯の個別面談やマネーセミナーの講師を経験。2022年4月から広報へ異動し活動中。