新入社員が入社して3ケ月余り、入社した側も迎えた側も意識の違いに頭を抱えている時期ではないだろうか。
そんな中、経営・人事課題の解決と事業・戦略を推進する支援を行うリクルートマネジメントソリューションズが、2022年の新入社員意識調査に基づくWeb説明会を開催。調査・分析からVUCA時代におけるジェネレーションGAPの乗り越え方が見えてきた。
12年間で新入社員の『働くうえでの意識』が大きく変化
「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」とは、兵法で知られる孫子の言葉。GAPを埋めるためには、相手を知ることが欠かせない。説明会は同社の武石美有紀研究員による新入社員意識調査の結果分析から始まった。
「弊社では、新入社員に対して12年間、継続して意識調査を実施しています。今回の調査結果で特徴のひとつは、『働きたい職場の特徴』の項目で、『互いに助け合う』が過去最高になった一方で、『ルール・決めごとが明確』が過去最低になったことです。コロナ禍によるリモート環境の増加で、関係性が希薄になったことが影響しているようです」(武石研究員)
筆者もコロナ禍の影響で、取材を対面でなくWEBで行うことが圧倒的に多くなった。WEB取材でも、画面を通して相手の顔を見ることはできるが、やはり対面取材ほど言外の情報を得ることが難しいと感じている。武石研究員の考察は納得だ。
「また『上司に期待すること』の項目でも、見逃せない変化がありました。『相手の意見や考え方に耳を傾けること』や『職場の人間関係に気を配ること』が過去最高になった一方で、『仕事がバリバリできること』が過去最低になりました」(武石研究員)
筆者がビジネスパーソン時代には、仕事は上司や先輩の背中を見て覚えるものといった風潮があったが、いまやこの考えは通用しないようだ。
不確実性の時代に求められるのは組織の多様性
同社では、上記の調査だけでは分からない新入社員の特徴を把握するため、2020年から『仕事をするうえで大切にしている価値観』の設問を追加している。
「『仕事をするうえで重視したいこと』の項目では、『貢献』と『成長』がトップ2になり、『競争』が最下位になっています。ボランティアやSDGsなどの社会貢献活動が世の中に浸透した影響が感じられる結果になりました」(武石研究員)
Z世代と言われる今年の新入社員にとって『切磋琢磨』といった四文字熟語は死語になったようだ。仕事に成果を求める上司からすれば、物足りない調査結果かもしれない。
これらの調査結果を踏まえ、武石研究員は新入社員を活かすための対応策を次のように語る。
「今日の新入社員は、ネット社会で情報が非常に得やすい一方で、努力や壁を乗り越えてきた経験が少ない世代です。そのため、自分の意見を否定されることへの怖れが大きく、周りの出方を確認しながら慎重に行動する傾向があります。対応策としては、『いいね』や『なるほど』といった相槌を打つ承認のコミュニケーションや、兆しをとらえ行動を促す始めの一歩のフォローが大切です」(武石研究員)
個よりも組織が重視された時代に育った筆者は『面倒くさい』と感じてしまうが、不確実性が高まる今日、そうも言ってはいられない。個人に力を発揮してもらう取り組みや組織の多様性が不可欠になっている。
GAPを乗り越える鍵は互いにリスペクトして学び合うこと
第2部では、桑原正義主任研究員から「VUCA ×Z世代 新人育成の新たな鍵を考える」と題した発表が行われた。
「新人の育成は、OJT担当を付けることが当たり前になるなど強化されてきていますが、ニューノーマルと言われる時代の変化はそれを越えて大きく速いものがあります。これまでの組織中心の世界から個の尊重と組織目的の両立が求められる時代になり、さらにアップデートする必要があります」(桑原主任研究員)
確かに、正解のないVUCA時代では、これまでの上司や先輩の経験を伝えるだけのOJTで対応できないことはうなずける。その上で、桑原主任研究員は『共創的関係に向けた相互理解』が課題を解決する新たな鍵になると説く。
「現代はジェネレーションGAPによる分断が大きく、上司世代がZ世代を理解するだけでは不十分です。課題を解決するためには、Z世代と上司世代が互いにリスペクトして学び活かし合う共創的な関係を築くことが不可欠です」(桑原主任研究員)
こう課題解決の鍵を提起しただけでなく、同社でのユニークな実践例も紹介された。
「2年目の若手社員の発案で、シニア世代、ミレニアム世代、Z世代の3世代合同の『ジェネレーションGAPを味わい楽しむ会』を実施。各世代の『トリセツ』を作成し共有しました」(桑原主任研究員)
同会では、気になる点を互いに質問し合うことで、なぜそうなのかの理解が深まったという。また、共創型OJTのモデルケースとして『新人からも学びつつ共に価値を創る』NTTデータの取り組みも紹介された。
互いに違和感があると嘆いていても問題は解決しない。互いに『良いところや学ぶべきところがある』と思って接することが、GAPを乗り越える一助となるに違いない。