「朝三暮四」は中国の故事に由来する四字熟語です。その意味は複数あり、意味を理解しておかないと混乱してしまうでしょう。

この記事では、「朝三暮四」の意味や由来のストーリー、使い方について紹介しています。普段会話で使うときの参考にしてみてください。ビジネスシーンでも役立つ、類語や英語表現もまとめました。

  • 「朝三暮四」の意味や使い方を学びましょう

    「朝三暮四」の意味や使い方を学びましょう

朝三暮四の意味と読み方とは

まずは「朝三暮四」の基本的な意味についてご紹介します。

朝三暮四とは、結果は同じなのに目先の違いにとらわれることなどを表す四字熟語

「朝三暮四」は以下のように複数の意味があるので、きちんと理解して、場面に応じ使い分けられるようになるといいでしょう。

  • 目先の違いにとらわれて、結果的には同じことなのにそれに気付かないこと。実際にはどっちもどっちで大差がないこと
  • 言葉巧みに人をだまし、うまく丸め込むこと
  • 転じて、生計、暮らしのこと

例えば、ボールペンが「1本80円、3本セットだと240円」と言われたときに、なんとなく3本セットの方がお得な気がしてしまうかもしれませんが、実際には1本あたりの金額は同じですね。このように結局は同じなのに、気が付かないでだまされてしまうことを表す四字熟語が朝三暮四です。

なお、暮四朝三(ぼしちょうさん)ともいいます。

朝三暮四の読み方

「朝三暮四」は「ちょうさんぼし」と読みます。「暮」はここでは「日が暮れる、夕暮れ」のことです。

  • 「朝三暮四」とは、目先の違いにとらわれて、実際は同じであるのに気付かないことなどをいいます

    「朝三暮四」とは、目先の違いにとらわれて、実際は同じであるのに気付かないことなどをいいます

朝三暮四の由来

「朝三暮四」の由来となったのは、中国の思想書である『列子(黄帝)』や、『荘子(斉物論)』に掲載されている故事といわれています。

『列子』は古代中国の思想家である列子が書いた8編の書物ことで、『荘子』は同じく古代中国の思想家である荘子が書いた33編の書物です。『列子』と『荘子』には重複する話も多く、荘子は列子の後輩だった可能性があるともいわれていますが、「朝三暮四」の由来としてどちらが先だったかというのは断言できていません。

朝三暮四の語源である故事のストーリー

「朝三暮四」の舞台は中国の春秋時代です。

宋(そう)に、狙公(そこう/猿おじさん)と呼ばれる人がいました。ある時、彼は貧乏になってしまい、飼っていた猿に「トチの実を朝に3つ、夜に4つ与える」と伝えました。すると猿は数が少ないと文句を言います。そこで狙公が「朝に4つ、夜に3つ与える」と伝えると、猿はとても喜びました。

実際に一日に与えるトチの実の合計数は同じなのに、朝に与える3つが4つになっただけで、数が増えたと猿は勘違いしたのです。

このことから、細部を変えただけで全体が変わっていないことに気付かないこと、狙公のように言葉巧みに相手をだますこと、を意味するようになりました。

ちなみに「狙公」は「猿回し」のことを表す名詞でもあります。

朝三暮四は現代中国では意味が異なる?

「朝三暮四」について、現代中国では「コロコロと考えを変える。方針や考えが変わりやすく移り気で、当てにならない」という意味があります。

狙公が「朝に3つ夜に4つ」と言ったのを、猿の抗議を受けて「朝に4つ夜に3つ」と言い換えたことを指して、この意味となったようです。

  • 「朝三暮四」の由来は猿とのやりとりです

    「朝三暮四」の由来は猿とのやりとりです

朝三暮四の使い方の用例・例文

実際に「朝三暮四」を用いた例文をいくつかご紹介します。

「現在の政策は、前政権の政策と朝三暮四だ」

「朝三暮四」の意味の中で、「細部が変わっただけで結果は同じ、大差がないこと」を表現する例文です。「現在の政権も前の政権も、やっていることはさほど変わらない、どっちもどっちだ」といった意味になります。

「実際の制度は変わらないのに言い方だけを変えて、まるで朝三暮四のようなやり方だ」

「言葉巧みにだますこと」を「朝三暮四」で言い換えた例文です。「朝三暮四」という表現を使うことで遠回しに伝える方法と言えるでしょう。

「朝三暮四を見抜けないとは、われながらお笑い草だ」

「言葉巧みにだまされた」側で使える例文です。言葉巧みにだますほうも悪いですが、目先のことにとらわれ、結果の違いに気付かずだまされたほうも悪い、と言いたいときに使えそうです。

「自分の朝三暮四に事欠かない限りは、この仕事を続けようと思う」

「朝三暮四」の他の意味と比べると、あまり使われることはないかもしれませんが、「生計、暮らし」を「朝三暮四」で言い換えた例文です。自分の生計や暮らしに大きな影響がない限りは、今のような仕事環境でも続けよう、といった意味になります。

  • 例文を参考に「朝三暮四」の使い方を覚えましょう

    例文を参考に「朝三暮四」の使い方を覚えましょう

朝三暮四の類語・言い換え表現

「朝三暮四」を言い換える他の表現をご紹介します。

朝四暮三(ちょうしぼさん)

由来の故事で「朝に3つ、夜に4つ」と最初に言ったことを言い換えた「朝に4つ、夜に3つ」の方を四字熟語にしています。それこそ「朝三暮四」と「大差ない」表現といえます。

ただし、どちらかというと「朝三暮四」のほうが一般的です。

狙公配事(そこうはいじ)

「朝三暮四」の由来となった故事に登場する「狙公が事を配する」と書く類語です。

物は言いよう(ものはいいよう)

「物事は、同じことでも言い方によってどうにでも聞こえる」という意味の言葉です。こちらも結果的には同じことや大差がないことに対して使えます。

朝三暮四と混同しやすい? 朝令暮改(ちょうれいぼかい)

「朝三暮四」と混同されやすい言葉に「朝令暮改」があります。「朝令暮改」も中国で生まれた言葉で、「朝に出した命令が夜には変わっていること」を意味し、転じて「言うことがコロコロ変わること」を意味します。

前述したように、「朝三暮四」の基本的な意味は「どっちもどっちで大差がないこと」などですが、中国では「朝三暮四」にも「言うことがコロコロ変わること」という意味を含んでいます。単純に漢字が似ているだけでなく、近い意味を持つことから混同しやすいのかもしれません。

  • 「朝三暮四」と「朝令暮改」は混同されやすい言葉です

    「朝三暮四」と「朝令暮改」は混同されやすい言葉です

朝三暮四の英文

「朝三暮四」を英語で表現するときの例文をご紹介します。

six of one and half a dozen of another

直訳すると「6個と、他方の半ダース」です。1ダースは12個なので、半ダースは6個、つまり単位を変えただけで表現する数字は同じです。「どっちもどっち」「お互いさま」などの意味で使えます。

ダースという単位は英語圏ならではの表現と言えるでしょう。

tweedledum and tweedledee

英語の文字だけ見てもピンとこない方も、音を聞けばわかるかもしれません。日本語で表すと「トゥイードルダムとトゥイードルディー」です。

マザー・グースや「鏡の国のアリス」に登場する、見分けのつかない双子が由来です。そっくりで見分けがつかない、という点で、「大差がない」「どっちもどっち」の意味を持つ「朝三暮四」の英語版の類語と言えるでしょう。

trickery

日本語でもそのまま「トリッキー」と言うことがありますね。

意味は「ペテン師」「詐欺師」で、「ごまかし」といった意味もあります。「朝三暮四」を「言葉巧みに相手をだますこと」の意味で使ったときに「trickery」に翻訳できるでしょう。

  • 「朝三暮四」の英語表現をご紹介しました

    「朝三暮四」の英語表現をご紹介しました

朝三暮四は、猿が喜んだ理由を解説した皮肉なことわざ

「朝三暮四」は中国の猿にまつわる故事に由来を持つ言葉です。

また、「朝三暮四」には、複数の意味があります。場面に応じて適切な使い方をする必要があるので、ぜひそれぞれ理解できるようにしましょう。

混同されやすい言葉である「朝令暮改」も併せて覚えておくといいでしょう。