日産自動車は「キャラバン」の最上級グレード「AUTECH」(オーテック)を発売した。キャラバンといえばプロの道具として人気の高い商用バン、オーテックといえば上質でスポーティーなイメージのカスタムカーブランドだが、なぜこの2つを組み合わせようと思ったのか。
専用エクステリアで上質かつスポーティーに
キャラバンは室内空間の広さが特徴の商用バン。用途に合わせて「バン」「ワゴン」「マイクロバス」からタイプを選べて、パワートレインはガソリンとディーゼルがあり、グレード展開も幅広い。アウトドアや車中泊にも適したクルマで、車両後部に折りたたみベッドを装着した「マルチベッド」という仕様もある。
オーテックは日産モータースポーツ&カスタマイズが展開するカスタムカーブランド。コンセプトは「プレミアムスポーティ」で、これまでのところ「エルグランド」「ノート」「ルークス」など8車種でオーテックバージョンを展開していた。
キャラバンは仕事で使うにしても遊びで使うにしても、道具としての使い勝手に注目がいきがちだし、そこが魅力のクルマだと思っていたのだが、なぜ日産は上質感を押し出したキャラバン オーテックを作るのか。オーテックだと、泥や砂で汚れた荷物を載せたり、アウトドアアクティビティで汚れたり濡れたりしたまま乗り込んだりするのに気後れしそうだが……。
日産モータースポーツ&カスタマイズ AUTECH事業部の島田晃宏さんによれば、キャラバンにはもともと、迫力と力強さを売りにした「ライダー」というモデルがあり、ライダーの中でもシートや内装まで変えた上級なタイプはけっこうな人気だったそう。ライダーは今では廃止になってしまっているが、そのポジションに登場したのがオーテックだ。「上級志向のお客様は近年、増えてきている」というのが島田さんの見立て。
迫力のライダーと上質感のオーテックではキャラクターが違うが、ライダーが人気だったのであれば、「格上のキャラバンが欲しい」というニーズは一定程度あると考えられる。そうした宙に浮いたニーズに、オーテックで訴求していこうというのが日産の狙いなのではないだろうか。
仕事の現場には、さまざまな会社から何台ものキャラバン(やトヨタ自動車「ハイエース」など)が集まることもあるはず。そんな時でもオーテックに乗っていれば、他社との違いが際立つし、ちょっとした優越感にもひたれそうだ。
キャラバンの価格帯は241.23万円~427.57万円、オーテックは339.02万円~452.32万円。オーテックにはバン(ベース車はプレミアムGX)とワゴン(同GX)があり、内装には手を加えず外観だけをカスタムした「エクステリア セレクション」(Exterior Selection)というグレードも選べる。当然ながら、エクステリア セレクションはオーテックに比べて少し価格が安い。このグレードを選べば、汚れた仕事道具も気軽に積み込めるのではないかという気がする。スライドドアのオートクロージャ―はオーテックに標準装備、エクステリア セレクションではオプションとなる。