6月29日から7月1日の3日間、東京ビッグサイトにて「第1回eスポーツビジネスEXPO」が開催されました。第1回となっていますが、正式開催が1回目ということで、ライブ・エンターテインメントEXPO内の特設会場として「eスポーツ ビジネス ワールド」が設置されるなど、前身のプレイベントを数回経て、今回の正式開催となりました。
会場では、eスポーツで事業展開している企業や団体がブースを展開。体験や商談、説明を受けられる各企業のブースコーナーと、eスポーツ分野ですでに活躍をしている有識者や企業のトップによる特別セミナーが開催されるステージに分かれていました。
ライブエンターテインメントEXPOとイベント総合EXPOが同時開催されており、この3つのイベントで1つの大きなイベントを展開している印象です。どちらかというと、ライブエンターテインメントEXPOとイベント総合EXPOがメイン開催で、eスポーツビジネスEXPOは出展数も多くなく、一部を間借りしているような感じでした。ライブエンターテインメント全体と比較してeスポーツ市場はまだまだ小さいので、規模としては順当とは言えるでしょう。
eスポーツ関連企業が並ぶブースエリア
今回は会場で気になったブースを紹介していきます。まず、入り口近くに陣取っていた「E5esportsWorks」。池袋にあるeスポーツ施設LFS池袋を展開し、数々のeスポーツイベントを運営している会社です。E5esportsWorks西川典孝代表取締役社長はステージで特別セミナーも行っています。
ちょうどブースへ伺ったときに西川氏がいらっしゃっていたのでお声がけしたら、特別にブースでセミナーの再現をしていただけました。まったく恐れ多いことです。
続いて「MIXI」のブースです。『モンスターストライク』が有名過ぎる企業ですが、その『モンスト』を使ったイベントの提案を行っていました。『モンスト』はプレイ人口が多いので、企業や地方自治体のイベントとしても最適なのではないでしょうか。
次は「MAD CATZ」。PCのゲーミング周辺機器のブランドで、以前、ウメハラ選手をスポンサーしていたことでも有名です。一度、破綻しましたが、今は香港の企業の資本の元、市場に戻ってきています。ゲーミングマウスやゲーミングキーボード、アーケードコントローラーなどを数多く展示していました。
九州を中心に運営する九州電力グループの通信事業者で、『League of Legends』や『VALORANT』などで活躍するプロゲーミングチーム「Sengoku Gaming」にスポンサーしていることでも有名な「QTnet」のブースでは、Sengoku Gaming選手との撮影会を開催していました。
日本eスポーツ連合(JeSU)もブースを展開。活動実績や活動内容の展示を行っていました。
健康食品のOEM受託製造メーカー「MARGAJAPAN(マルガジャパン)」は、eスポーツ用のサプリメントとして「BUFF G3」を配布。自社製品として初めて販売する製品とのことです。「BUFF G3」は、ブルーベリーをベースとした眼精疲労の低減を目的としたグミ。手が濡れたり、汚れたりしないので、ゲームをプレイしているときでも接種しやすいのが特徴です。
特別セミナーで語られたeスポーツのビジネスとしての可能性
ステージでの特別セミナーは、最終日に講演したNTTe-Sportsの影澤潤一代表取締役副社長とソニー・インタラクティブ・エンタテインメントの森田晃德氏、ウェルプレイド・ライゼストの古澤明仁代表取締役の3者の話を聞いてきました。
影澤潤一氏は「NTTe-Sportsが考える今後のeスポーツの発展とは」をテーマに話を展開。これからeスポーツ事業に参入を考えている人にもわかりやすく、eスポーツの特徴やエコシステム、NTTe-Sportsが行っている事業についての解説をしていました。eスポーツが今後、持続的成長をし続けて行くためにはコミュニティの力が重要で、そのコミュニティの力を養って行くために、NTTe-Sportsが技術やアセット、ノウハウをもって支えていくと締めました。
ソニー・インタラクティブ・エンタテインメントの森田晃德氏は、eSports課 課長の肩書きをもち、現在同社が推進中のeスポーツ参入のキーマンです。北米で開催されている世界最大規模の対戦格闘ゲームイベント「Evolution(EVO)」を、eスポーツ事業を営むRTSと共同買収したことが話題になりました。
セミナーでは、PlayStationプラットフォームにおけるeスポーツの考え方と『グランツーリスモ』シリーズによる取り組み事例などを紹介。PlayStationプラットフォームを使い、eスポーツの門戸を拡げ、裾野を広げて行くことを目的としています。
ただ、「EVO」では使用マシンがPlayStation4に限定したことで、メインタイトルの選定が限定的になり、裾野を狭くした印象もあります。公演後、そのことについて話を聞いたところ「今後はPlayStationのみという制約は取り払っていくことを考えている」とのこと。公式見解ではないにしろ「EVO」で常設タイトルであった『スマッシュブラザーズ』シリーズが帰ってくる可能性は示されました。
最後にウェルプレイド・ライゼストの古澤明仁代表取締役です。「eスポーツの総合商社が手掛ける多角化する事業モデル」と題し、eスポーツビジネスの多様性を示しました。
ライブエンターテインメントや地方創生を視野に入れれば、市場規模は現状の何倍、何十倍にもなり、ビジネスとしての可能性は十分にあると述べています。その事例の1つとして、南海電鉄との協業により、泉佐野市をeスポーツ先進都市への確立を目指す計画を発表しています。財源は地方創生推進交付金と企業版ふるさと納税によるもので、国や地方を巻き込んでの地方を活性化させていきます。
イベントとしてはまだまだ小規模で、どれだけ来場者の興味を引けたかは未知数ですが、eスポーツの可能性を感じることはできました。特に他業種が新規事業として何かを始めるには、eスポーツを候補に入れてもいいのではないでしょうか。