「阿鼻叫喚」という言葉の読み方や意味をご存知でしょうか。
「阿鼻叫喚」は仏教に由来する言葉で、地獄が語源の言葉です。インパクトがある表現なので印象に残っていても、意味や使い方はよくわからないという方もいるでしょう。
この記事では、「阿鼻叫喚」の読み方や意味、由来や使い方についてまとめています。会話で使うときの参考にしてみてください。
「阿鼻叫喚」の意味とは
「阿鼻叫喚」の意味をご紹介します。
「阿鼻叫喚」の意味は「悲惨でむごたらしい様子」のたとえ
「阿鼻叫喚」は「あびきょうかん」と読みます。人々が泣き叫ぶような悲惨でむごたらしい様子をたとえた言葉です。
目も当てられないような悲惨な様子や、言葉で言い尽くせないほどの悲惨な状況を「阿鼻叫喚」と表現することが多いです。
「阿鼻叫喚」の由来・語源
ここでは、「阿鼻叫喚」の由来・語源を解説します。
「阿鼻叫喚」は仏教の言葉
「阿鼻叫喚」はもともと仏教の言葉からきています。八大地獄に数えられる「阿鼻地獄(無間地獄)」と「叫喚地獄」を合わせた言葉です。
八大地獄は等活地獄、黒縄地獄、衆合地獄、叫喚地獄、大叫喚地獄、焦熱地獄、大焦熱地獄、阿鼻地獄、の8種類があるといわれています。
等活地獄から阿鼻地獄までの順に罪と責め苦が重くなっていき、「阿鼻叫喚」は4番目の叫喚地獄と最も罪と責め苦が重い阿鼻地獄の2つを組み合わせていることになります。
このような地獄で人々が苦しみ泣き叫ぶ様子から、「阿鼻叫喚」という言葉が生まれたようです。
阿鼻地獄
「阿鼻地獄」は地獄で最も恐ろしいところといわれています。五逆罪と呼ばれる5つの重い罪を犯した者が落ちる地獄で、絶え間なく苦痛を受け続けるところから無間地獄(むけんじごく)とも呼ばれます。
「阿鼻」は、梵語で苦しみが間断ないことを指す「無間」を意味する「avīci」の音訳だといわれています。
叫喚地獄
「叫喚地獄」は八大地獄の中で4番目にあたる地獄で、殺生・盗み・不倫・飲酒による悪事をはたらいた者が落ちる地獄といわれています。
地獄の番人に煮え湯や火あぶりなどの拷問を受け、苦しさに泣き叫ぶ地獄であることから「叫喚地獄」の名がついたようです。
「阿鼻叫喚」の使い方と例文
「阿鼻叫喚」の使い方や例文をまとめました。実際に会話の中で「阿鼻叫喚」を使うときに参考にしてみてください。
現場はまさに阿鼻叫喚の光景だった
酷い災害や事件などで、被害に遭った人が悲鳴をあげていたり、泣き喚いたりする状態になっている現場を「阿鼻叫喚の光景」と表現します。
仮想通貨の暴落により投資家は阿鼻叫喚の状態だった
社会情勢の影響で被害に遭った場合にも、被害の大きさを表すのに「阿鼻叫喚」を使うことができます。
阿鼻叫喚を極める
「阿鼻叫喚」はそれだけで「悲惨でむごたらしい様子」を意味しています。それを極めるということは「この上なく悲惨でむごたらしい様子」であることを表しています。
「阿鼻叫喚」の類語
「阿鼻叫喚」の類語をご紹介します。「阿鼻叫喚」と似たような意味でも場面に応じて使い分けができるので、うまく活用してみましょう。
地獄絵図
「地獄絵図」は字を見てわかるとおり、地獄を絵に描いたような状態のことをいいます。意味は「阿鼻叫喚」と同じです。
「阿鼻叫喚」が人々の泣き喚く様子、聴覚に頼るものだとすれば、「地獄絵図」は視覚に頼るもの、と使い分けられるかもしれません。
千辛万苦
「千辛万苦(せんしんばんく)」は、「骨を折るような苦労や難儀に遭うこと」を意味します。「千」や「万」は「よろず」や「すべての」という意味合いが強く、数えきれないほどの酷い目にあって大変な苦労をすることや、その苦しみを指しています。
七転八倒
「七転八倒(しちてんばっとう)」は、「激しい苦痛に転げ回ってもがき苦しむさま」をたとえています。「七」と「八」は数が多いことのたとえで、「転んでは起き、起きては転ぶ」状態が長時間続くことを意味しています。
似たような言葉に「七転八起(しちてんはっき)」「七転び八起き(ななころびやおき)」がありますが、こちらは「何度失敗してもくじけずに立ち直ること」という意味になるので気をつけましょう。
慟哭
「慟哭(どうこく)」は「悲しみのあまり声をあげて泣くこと」を意味します。特に深い悲しみを感じていることを表す言葉で、同じ「泣く」表現でも「号泣」のようにうれしいときなどには使えません。
悲しみや辛さのあまり泣いているということを表すという点で、「阿鼻叫喚」の類語であるといえるでしょう。
泣き喚く
「泣き喚く(なきわめく)」は漢字のとおりですが、「泣き叫んでいるさま」を表す言葉です。
「阿鼻叫喚」は酷い災害や事件などの大規模な被害に対して使用される言葉なので、日常生活で生じた知人間でのトラブルなどで泣き叫んだというシチュエーションでは、「泣き喚く」に言い換えた方がしっくりくるでしょう。
「阿鼻叫喚」の対義語
「阿鼻叫喚」の対義語をご紹介します。
極楽浄土
「極楽浄土(ごくらくじょうど)」は仏教において阿弥陀仏がいるとされている場所のことです。そこには苦しみはなく、楽しみだけがあるといわれており、苦しみが微塵も感じられないような状態を指していいます。
西方浄土
「西方浄土(さいほうじょうど)」は「極楽浄土」と同じ意味です。人間界から十万億の仏土を隔てた西のかなたにあるといわれているため、「西方浄土」と呼ばれているようです。
「阿鼻叫喚」の英語表現
「阿鼻叫喚」の英語表現をご紹介します。「阿鼻叫喚」は「阿鼻」が音訳であることからもわかるように、日本独特の表現です。英語圏でも伝わる言い回しをマスターしましょう。
shrieking in agony
「shrieking」は「金切り声」「悲鳴」、「agony」は「激しい苦痛、もだえ苦しみ」という意味で、「shrieking in agony」で「苦痛に悲鳴をあげる」という意味になり、「阿鼻叫喚」と同じ意味を表せます。
agonizing cries
「agonizing」は「苦しい」という意味なので、「苦しくて泣いているさま」を表しています。こちらも「阿鼻叫喚」を意味する英語表現といえるでしょう。
「阿鼻叫喚」の意味は「悲惨でむごたらしい様子」で、地獄の名前が由来
「阿鼻叫喚」の意味や由来、使い方についてまとめました。
「阿鼻叫喚」は八大地獄が語源で、人々が泣き叫ぶような悲惨でむごたらしい様子をたとえた言葉です。類語や対義語、英語表現もご紹介したので、参考にしてみてくださいね。