1人1台のコンピュータ環境を学校に導入する「GIGAスクール構想」の整備が完了し、全国の小中学校でタブレット端末を用いた学習が進められています。「端末は配布しましたから、あとはうまくやってください」と言われて困り果てる学校や先生がいるなか、iPadを擁するアップルはすぐに使える資料や情報を無料で提供して多忙な先生をサポートしつつ、子どもたちの将来につながるスキル形成をもしっかり見据えていました。
今回、米Apple本社で教育およびエンタープライズ・マーケティング担当バイスプレジデントを務めるスーザン・プレスコットさんに、アップルと教育についての考えをうかがいました。
即戦力で使える教師向けのカリキュラムを豊富に用意
「アップルは、教育を重要な存在だと考えています。特に、テクノロジーを教室に持ち込むことで、児童生徒が主体的に学びを進められ、教育がよりよいものにできると信じています。(Macの祖先といえる)Apple IIの時代からその思想は変わっていません。アップルが理想とする教育を実現するためのお手伝いを続けています」と、スーザン・プレスコットさんは語ります。
それらを実現するための端末として、アップルがGIGAスクール構想用に用意したのがiPad。「iPadは、どのような人にとっても使いやすい存在です。テクノロジーに慣れていない低学年の児童でも扱えますし、使い慣れた生徒にも物足りなさを感じさせません。ARを用いた驚きを伴う学び、内蔵カメラを利用した学習、Swift Playgroundsを用いたプログラミング学習などを提供し、スキルアップのお手伝いをします」
アップルの取り組みで特徴的なのが、先生に向けた無償のカリキュラムを豊富に用意していること。Webサイト「GIGAスクール構想をAppleと――新しい授業を作ろう。ここから。」では、iPadを用いた実践的な授業のガイドだけでなく、生徒の興味を引き出したり授業をスムーズに進めるためのアイデア、授業の準備を進めるうえでのヒントなどを用意。さらに、すでにiPadを導入して効果的な授業をしている全国の先生のコメントも掲載し、参考にしてもらえるようにしています。
「課題作りや授業の進め方に頭を悩ませている先生の負担をできるだけ軽くすることも、アップルの願いです。そのための協力は惜しみません。なお、カリキュラムは先生でなくても誰でも見られますので、ぜひ生徒自身や保護者も見ていただき、気になったものがあればお手持ちのiPadで試してもらえればと思います」
協働や課題解決の力など“ミライに通用するスキル”も養いたい
将来につながる学びを提供するため、アップルが重要だと考えているのが「クリエイティビティ、創造性」「複雑な課題に挑む協働、コラボレーション」「1人1人に合った学びを提供するパーソナライズ」「バーチャルな学びを可能にするコネクティッド、つながり」の4本の柱だといいます。スーザン・プレスコットさんは、同じ班やグループの生徒が一緒になって複雑な問題に取り組むプロジェクトベースでの学びが、必ず将来の力になると語ります。
将来を見据えたスキル形成でもう1つ役立つと挙げたのがプログラミング。小学校ではプログラミング教育が必修化されましたが、将来プログラマーを目指していないから力を入れて学ぶ必要はない、と考える人がいるかもしれません。しかし「プログラミングを身につけることで、問題を解決する考え方が養えます。プログラミング自体は大学や職業訓練でも学べますが、小さいころからプログラミングに慣れ親しんだ人はソフトウエア的な思考ができる傾向があります」と、プログラミングにはスキル作りのメリットがあるとスーザン・プレスコットさんは語ります。
「もちろん、プログラミングやコーディングができる人に対するニーズは、世界的に高まっているのも事実です。アップルは、Swift PlaygroundsなどiPadで利用できる無償のカリキュラムを提供しており、小さな子どもも楽しみながら学んでもらえるようにしています。ご家族で試してみてください」とも添えました。
「GIGAスクール構想でiPadを導入して成果を上げている熊本市などの話を聞くと、本当に誇らしく思います。iPadを通じて、もっと多くの児童生徒に素晴らしい学びや体験がしてもらえるよう、全国の学校や先生の声に耳を傾けていきます」と語るスーザン・プレスコットさん。現在、GIGAスクール構想でのiPadのシェアは3割前後とのことですが、現場の先生からの後押しやリクエストを受けて、今後シェアが高まっていきそうだと感じました。