2022年も間もなく折り返しとなります。今年のマーケットは年初から乱高下を伴いながら下落トレンドが続いており、昨年に節目の3万円台をつけた日経平均株価も現在では27,000円台近辺での推移となっています。
そのような中、実体経済はコロナ禍からのリオープンへと動いてきており、明るいニュースも出てきています。今回は、最近の相場状況に触れつつ、夏にかけて注目したい銘柄について、セクターベースで見ていきたいと思います。
6月は不安定な相場環境、今後は明るい兆しも
直近の相場のテーマは、何と言っても米国を中心とする世界的なインフレの行方と中央銀行による利上げペースです。毎月発表される消費者物価指数や景況感に関する経済指標に神経質に反応する相場となっています。日経平均株価は、3月以降に進んだ円安や相対的に国内のインフレ進行が激しくないことから、下落基調にありながらも欧米の株式よりは下落が限定的となっています。
6月の日経平均株価を振り返ると、上下に値動きが激しく、高いところでは28,300円台・安いところでは25,500円台をつけました。月前半は米国のインフレ見通しの鈍化予想や円安進行などを背景に堅調に推移し、3月以来の28,000円台回復となりました。しかし、月後半にかけては、米国のインフレが想定より鈍化していなかったほか、中央銀行の利上げが相次いだことにより株価には向かい風となり、日経平均も6月10日から20日までのわずか7営業日で28,000円台から25,000円台まで急落しました。
全体相場の観点では、これまでの中央銀行の金融緩和的な政策から引き締め方向に政策が転換していくことには変わりなく、昨年まで相場を牽引したグロース株を中心に引き続き厳しい展開が予想されるでしょう。一方で、日本株だけを見たときには、少し状況が異なります。先に触れたように相対的にインフレ率が低いことや、他国と異なりコロナからの本格的な回復がこれからであることから、ポジティブな要素も少なくないのです。しっかりと銘柄選定をすることで、投資成績を上向かせる可能性も高まるでしょう。
以降では、そのような環境下で注目できるセクターについてみていこうと思います。
リオープンへの期待が高まるも、セクター選びは慎重に
まずは経済再開で注目されるセクターについてみていきましょう。
中でも株価が堅調に推移しているのが百貨店です。コロナ禍で短縮営業などを強いられていましたが、ここにきて回復基調になっています。百貨店売上高の統計を見ても、4月以降大きく回復が見られ、直近の5月も前年同月比で57.5%の回復となっています。また6月から入国制限が緩和されていますが、インバウンド消費による後押しが加速するとの思惑で買いが集まっています。
個別銘柄の株価を見ると、特に三越伊勢丹(3099)は、昨年11月につけた高値を更新し、コロナ前の2020年2月頃の株価水準まで戻しています。そのほか、Jフロント(3086)、高島屋(8233)、H2Oリテイリング(8242)なども水準を切り上げてきており、全体相場が軟調な中でも百貨店関連の銘柄は年初来で大きくプラスで推移しています。今後も訪日客による消費動向などを材料に、注目が続くことが予想されます。
加えて、人の移動を支える交通系の企業にも注目したいところではありますが、1点注意が必要と考えられます。たしかに経済再開によって、人の移動の回復は期待されますが、コロナ禍で急速に進んだリモートワークにより、コロナ前と比べるとベースの利用者数は減少していることが予想されます。
JR東(9020)の月次データを見ると、前年比では大きく回復しているものの、コロナ前の2019年と比較すると7割程度の戻り。その分株価の戻りも芳しくなく、JR東日本で言えば、コロナ前と比較しても3割ほど低い水準にとどまっています。
反発を狙って交通系に注目する戦略も考えられますが、経済状況がコロナ禍から回復するとはいえ、元通りにはならない業種もあることには留意が必要でしょう。
電力不足で、電力会社が脚光を浴びる
またこの夏は「猛暑」がテーマとなるのではないでしょうか。6月4週目は各地で連日気温が高くなっており、これから本格化する夏場にかけて、警戒感が高まるかもしれません。
話題になっているのは、電力不足です。冬場にも電力不足の話題は出ていましたが、東京電力管内では6月27日に「電力需給ひっ迫注意報」が出されるなど、電力需給が厳しい状態となっています。その結果、需要減少策として政府は節電ポイントの導入を検討しており、国を挙げて対策が考えられています。
そのような中で注目を集めているのが、電力関連銘柄です。原油価格をはじめとするエネルギー価格の高騰により、業績面では不透明感が強いものの、電力供給の強化策として、原子力発電所が再稼働するのではないかとの思惑があり、株価は堅調にしています。
東京電力HD(9501)は6月後半に連騰し、3年ぶりの高値水準まで上昇。コロナ前の水準まで上昇しています。また関西電力HD(9503)は美浜原発の稼働再開時期が早まったことを材料に、6月半ばから上昇しています。6月29日には岸田首相が会見にて「供給力の確保に向けて最大限、原子力を活用する」と述べており、今後も原発を巡るヘッドラインで相場が盛り上がるかもしれません。
猛暑関連として、飲料メーカーやエアコン関連など、我々の生活に身近な銘柄も注目されます。これらの銘柄群は普段から見聞きする企業も多いため、初心者の方でも取り掛かりやすいでしょう。
相場が変局点を迎える中でも、切り口を変えれば投資のチャンスは多く存在します。身近なところから投資を始めてみてはいかがでしょうか。