占い師が弁護士や精神科医、AI開発者と対談
占いに関する興味深いイベントが先ごろ実施された。現役占い師が弁護士や精神科医、AI開発者など、各界のプロフェッショナルと行うオンライン対談だ。その中から、「バーチャルAI占い師はつくり出せるのか」という対談を紹介したい。
正式タイトルは、「バーチャルAI占い師はつくり出せるのか? AIの進化から考える『占い師に必要な要素』」。主にプロの占い師を想定したものだが、変化と混沌の時代を生きるビジネスパーソンにとっても学びの多い内容であった。
人工知能と生身の人間の違いとは
この対談の聞き手は明翁(めいおう)ヘカテさんで、登壇者は三宅陽一郎さん。明翁さんは西洋占星術をベースに心理学などを交え鑑定をしている。三宅さんはデジタルゲームのモンスターのキャラクターの人工知能を作るAI研究者だ。
明翁さん: 人工知能とはどういうものか、現代の技術によりバーチャル占い師は作れるのかといったことを伺いたいと思います。まず、人工知能について教えてもらえますか?
三宅さん: 非常に簡単な定義では、「世界の情報を集めて、感じるもの」ということですね。感じて、考えて、行動する。本当にそれだけといえばそれだけ。そこに記憶を加えたり、体を加えたりと、いろいろなバージョンがありますけど、基本的には感じて、考えて、行動する、の3つを備えた機械を人工知能と呼びます。
明翁さん: なんだか人間のような?
三宅さん: 人間をヒントにして作る機械を人工知能というので、今の理論だと、「じゃあ自動ドアは人工知能か?」という話になると思うんですよね。ただ、人工知能には広い意味と狭い意味があり、前者では多くの機械が人工知能となりますが、後者でいうと「体を持っていて」「考える」もの。さらに、考えるも「反射的に考える」のではなく、「抽象的に考える」ことです。
例えば集合住宅の自動ドアだと、人が来たらドアを開けるではなく、「住人か住人でないか」「以前より日焼けしているが同一人物だ」「この人は部屋を解約したので開けてはいけない」といったことを、データベースを参照しながら考え行動するのです。
明翁さん: 次にメインの論点ですが、バーチャルAI占い師はありえますか?
三宅さん: ある部分までは可能でしょう。太陽系の天体の運行と人の関わりを知り、未来を予測する占星術を人工知能が使うとしましょう。人工知能はいろいろなものとつながっているので、ひょっとしたら銀河系の星の脈動、対面する人の脈や顔色、バイオリズムなどのデータが取れるかもしれません。そうなると、その2つの相関を解析するところまではできます。
ただ、その解析結果が何を意味するか、それを読み解くのは別の大きな課題です。例えば仮に「ベテルギウスの星の瞬きの振動と心臓の鼓動が同期している」と分かったとしても、人への作用をどう解釈するか、結果をどう表現するかなどは、人工知能にはできないでしょう。
明翁さん: その解析結果を占い師が監修し、神話の要素を入れたりなどすれば解釈できそうです。
三宅さん: そうですね。そして、その解釈は「人間」だからできるのです。例えば、大きな木に雷が落ちました、という現象があったとしてそれをどう解釈するかは、人間の文化によるものですよね。
占い師は技術を使って物事の流れを読み解く人。「あなたは今こういう流れ、こういうポイントにいるんですよ。だから危険だ、あるいはそんなに気にしなくてもいい」といったアドバイスを我々は教えてほしいのですから。
AIと人間、どっちに占い相談したい?
対談結果をまとめると、「AI占い師は技術的に可能で、データ解析などは高精度。だが、具体的な解釈や行動指針の提案まで至らず、言葉足らずで終わるかもしれない」といったところだ。その点、高度な技術を持つ人間の占い師であれば、相談者の悩みに応じて答えを導けるようになる。
実際、相談者本人の愛情の飢餓、自己肯定感の低さなどに本質的な問題がある場合、結果をそのまま伝えても本人を傷つけるおそれがある。そこで、「メンタル面への配慮をしつつ言葉を選んで伝える」「話を聞いてもらうこと、気にかけてもらうことによる癒やし」も占いの大事な要素だと推察する。この点においては人間の占い師に分があるだろう。
ところで、三宅さんが追求するAIは、西洋的なサーバント、召し使いではなく、「あなたがいてくれたらそれだけでいい」と思わせる愛らしい存在だという。
完璧なアドバイスができるバーチャルAI占い師が存在しえないとしても、時にドジが優しくキュートなドラえもんのようなAI占い師なら悩み相談をしてみたいものだ。