藤井聡太棋聖に永瀬拓矢王座が挑戦する、第93期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第3局(主催:産経新聞社)が、7月4日(月)に千葉県木更津市「龍宮城スパホテル三日月」で行われています。本局は藤井棋聖の先手番となります。
今回のシリーズは、第1局を2度にわたる千日手の末に永瀬王座が、第2局を終盤の絶妙手で藤井棋聖がそれぞれ制し、三番勝負として仕切り直しになった形です。
藤井棋聖は第2局で対永瀬戦の連敗を3で止めました。その後、A級順位戦で佐藤康光九段を破り、王位戦では豊島将之九段に七番勝負の第1局で敗れ本局を迎えています。この間はほぼ1週間に1対局というペースで、藤井棋聖にしてはさほどの過密スケジュールでもなく、まずまずのコンディションで本局を迎えたのではないでしょうか。
対して永瀬王座は第2局のあと、叡王戦で丸山忠久九段を破って本局を迎えています。今年度の永瀬王座は第2局の藤井戦以外でまったく負けておらず、充実ぶりが際立っています。
藤井棋聖の先手番で始まった第3局は、先手の藤井棋聖が角換わりの戦型を選択。するすると角換わり腰掛銀の定跡型に進んでいきます。特にこの戦型は細部に至るまで研究が行き届いている形で、詰みまで研究されている変化が数多くあり、準備が不十分なままで臨むと勝負どころすら作れないこともある怖い戦型です。
もちろんこの両者は事前研究に抜かりはありません。途中までは第1局の指し直し局で両者が指した手順をなぞっていましたが、40手すぎに永瀬王座が手を変えて、別の進行になりました。
その後先手は6筋、後手は8筋に攻めの照準を合わせていきます。特に先手玉の頭には怖い垂れ歩がのしかかり、局面はまさに一触即発。57手目からは前例もなくなり、互いの攻め駒が入り乱れる複雑極まりない中盤戦を迎えました。しかし恐るべきことに両者の指し手はまったく止まりません。午前中のうちになんと70手を過ぎる超ハイペースの展開となっています。
両者がこれだけのハイペースで指し進めるということは、互いに事前準備が万全であることの表れでもありますが、実戦例がなくなってから20手近くに至ってもまったく指し手のペースが止まらないことに、両者の研究の広さと深さが垣間見え、これがトッププロの将棋だという迫力を感じます。
本局は1日制で持ち時間は4時間。終局は夕方以降になる見込みです。
相崎修司(将棋情報局)