女優の山本美月が、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)のナレーション収録に臨んだ。担当したのは、3日に放送される『人力車に魅せられて ~夢と涙の浅草物語~』。コロナ禍で職を失い、人力車の俥夫(しゃふ)を目指す男性を追った作品だ。
俥夫になるための卒業検定に何度も落ち続け、越えられない壁に直面する姿に、芝居においての自身を重ねたという山本。それでも諦めずに女優という仕事を続けることができたモチベーションとは――。
■『ザ・ノンフィクション』の登場人物に「マンガの中の世界のよう」
東京・浅草で人力車の事業を展開する「東京力車」に飛び込んだアツシさん(30)は、コロナ禍でテーマパークのパフォーマーの職を失い、人力車に懸けていた。俥夫になるには卒業検定を通らなければならないが、研修生で最年長の彼は何度受けても合格できない。落ち続けるアツシさんの指導には、予想を超える壁が立ちはだかっていた…。
アツシさんについて、「本当にいい人なんだと思います。どんなに失敗をしても絶対に嫌いになれない人ですよね」と印象を語る山本。朝は誰も出勤してこないうちにトイレ掃除をし、夜は掃除機をかけて最後に帰っていくという、自分にできることを精いっぱいやる真面目な姿を見て、「本当に自分自身の人生では経験したことがないので、マンガの中の世界のように感じました」と驚きを隠せない。
そんなアツシさんも含め、それぞれの登場人物に感情移入したそうで、「アツシさんが店長に怒られているときに思わず笑顔をつくってしまったのには、両方の気持ちが分かるなあと思いました」と共感。
さらに、別の仕事を持ちながら、アツシさんのために指導してくれる先輩俥夫の押木さんについては、「本当にちゃんと怒ってくれて、あんなに愛情を感じられることはないですよね。私もアツシさんと同じ30歳ですが、30になった途端に、怒られることが減ってきたように感じていて。なかなか怒られることが少なくなる年齢だと思うんです」と、その熱い思いを感じ取った。
■何度出演しても感じる反省
何度受けても合格できない卒業検定という高い壁。山本にとっての、なかなか越えられない壁を聞いてみると、「何度作品に出させていただいても、いつも反省点があるんです。なかなか『できたな』と納得できることもないですし、お芝居の世界って正解が1つじゃなくて、得点が出るわけでもないじゃないですか。公開されたりOAされたりすると、いろんな声が聞こえてくるし、どうしても悪い声のほうが目立ってしまう。常に越えられない壁を感じます」といい、もがき続けるアツシさんと自分を重ねた。
それでも、10年以上にわたり女優としてキャリアを重ねることができたモチベーションは、周囲の声だ。
「信頼する監督さんや、先輩の俳優さんから褒めてもらえると、この仕事をやってて良かったなと思えますね。“あの人が褒めてくれるんだから、悪いところだけじゃないんだ”という気持ちになれます」
■衝撃の結末「とにかくリアルな世界を見てほしい」
ドキュメンタリー番組のナレーションは、これが初挑戦。かつてアニメ映画で声優を務めた際に「後から自分の声を聴いて、『なんで収録のときに“下手くそ”って言ってくれなかったんだろう』と思うくらいショックを受けることもありました(笑)」というが、「声のお仕事は、CMとか店内放送とかやるのが楽しいので、ナレーションはやってみたかったんです。マネージャーさんにも『いつかやってみたい』とずっと伝えていたので、やっと念願かなってという感じです」とのこと。
それだけに、今回の収録は「楽しかったです」と充実の表情だが、物語の結末については「ちょっと衝撃でした。ドラマや映画の脚本では起こらない、まさに“ノンフィクション”という現実を突きつけられるので、とにかくリアルな世界を見てほしい。登場人物みんなに共感できるので、すごく考えさせられると思います」と予告した。
また、「とても真面目な世界で、これから街で俥夫の方を見たら印象が変わると思います。私は人力車に乗ったことがないので、乗ってみたくなりましたね」と、裏側を知って強く興味を抱いたようだ。
●山本美月
1991年生まれ、福岡県出身。09年に行われた第1回「東京スーパーモデルコンテスト」でグランプリ受賞し、CanCam賞にも選ばれる。以後、ファッション誌『CanCam』(小学館)の専属モデルとして活躍。11年から女優業を開始、翌年映画『桐島、部活やめるってよ』で映画初出演。近年の出演作はドラマ『星から来たあなた』『女系家族』『にんげんこわい』『あと3回、君に会える』『ランチ合コン探偵~恋とグルメと謎解きと~』、映画『ザ・ファブル』『糸』など。