「棒に振る」という慣用句の意味をご存知でしょうか。見聞きしたことはあっても、意味は分からないという方も少なくないでしょう。
今回は「棒に振る」の意味や使い方について解説します。類語や対義語、英語表現もご紹介しますので、正しく使えるようにそれぞれの意味を理解しましょう。
「棒に振る」の意味と語源・由来
「棒に振る」の意味
「棒に振る(ぼうにふる)」とは、それまで積み重ねてきたものを無駄にしてしまうことを表現している慣用句の一つです。また、せっかくのものをふいにしてしまうという意味も表しています。
「棒に振る」の語源・由来
「棒に振る」は天秤(てんびん)棒を使って魚や野菜などの食材を売り歩く仕事「棒手振り(ぼうてふり)」が語源だといわれています。全て売って商品が無くなることから「棒に振る」という言葉が生まれたそうです。
棒手振りで全ての商品を売りさばいても、大きな利益は得られず、商品を全て売っても金銭の余裕がないという状態から「棒に振る」と表現するようになったという説もあります。
「棒に振る」の使い方と例文
「棒に振る」の正しい使い方を覚えられるように、いくつか例文を用意しました。
- 彼女が昇格のチャンスを棒に振ってまで、今の仕事を選んだのはなぜだろう
- 毎日勉強をして知識を身につけたのに、当日寝坊をして試験を棒に振った
- 彼は優秀な営業マンだったのに、失言が原因で次年度の昇格を棒に振った
- 長時間労働で人生を棒に振ることになるとは思ってもみなかった
「棒に振る」の類語
ここでは「棒に振る」の類語をご紹介します。
水泡に帰す(すいほうにきす)
「水泡に帰す」は慣用句の一つで、努力のかいもなく無駄に終わることを表している言葉です。「水泡」は水の泡のこと。「帰す」には元の状態に戻すという意味があります。努力する前の何もなかった状態に戻ることを表すときに使います。
打ち合わせのために時間をかけて作った資料が不要となり、努力が水泡に帰した
上記の例文の場合は、資料作成の努力が報われなかったということを表現しています。
水の泡(みずのあわ)
努力や苦労が全て無駄となってしまうことを表す言葉です。
彼の一言が原因でこれまでの努力が水の泡となってしまった
想定もしていないことで、積み重ねてきたものが無くなってしまったことを表現している例文です。
元も子もない(もともこもない)・元も子も失う(もともこもうしなう)
「元も子もない」は、得られるはずだった利益や達成するはずだった目的などを失い、さらに失う必要のないものまで失ってしまうことを表している言葉です。「元(元金)」と「子(利子)」を指しており、利子を得るどころか元金まで失ったということを表しています。
お金のためだからといって、身体を壊してまで働いては元も子もない
仕事を無理しすぎて身体を壊すと、回復するまで時間もお金もかかり、稼ぐこともできないため、健康な身体もお金も時間も失われることになります。「元も子もない」はこのように元から持っていたものまで全て失ったときに使われます。
おじゃんになる
「おじゃん」とは物事が途中でだめになってしまうことを意味する言葉です。言葉の由来には諸説あり、江戸時代に火事の鎮火を知らせる鐘の音「じゃんじゃん」から生まれたという説や、だめになるという意味を持つ「じゃみる」に「お」がついて「おじゃん」というようになったという説があります。
先方の都合が悪くて今日の商談はおじゃんになった
例文では相手側の都合がつかないことで商談が無くなったことを表しています。
元の木阿弥(もとのもくあみ)
「元の木阿弥」は、改善されたのにまた元の状態に戻ってしまうことを表している言葉です。「木阿弥」は、戦国時代に武将の筒井順昭の病死を隠すために影武者に抜擢された人の名前です。しかし、順昭の子どもが成人になって影武者が不要となり、木阿弥は元の生活に戻ることになりました。
影武者として長年積んできた修行から元の生活に戻ることから、「これまでの努力が無駄に終わる」という意味でよく使われています。
課長の代理で会議への出席をお願いされて、データを集めて資料を作成した。しかし、今朝になって課長が出席できるとなり、会議への出席は不要となり元の木阿弥になった。
資料を作成して会議に備えたものの、課長自身が出席できることになり、準備にかけた時間が無駄になったことを表しています。
「棒に振る」の対義語
「棒に振る」の対義語として挙げられる言葉をご紹介します。
功を奏す(こうをそうす)
「功を奏する」は「成功する・効果を現す」といった意味を持つ慣用句です。努力が実り良い結果を出せたというときに使われます。文中では、「功を奏する」「功を奏して」のように使うことが多いです。
働きやすい環境を整えたことが功を奏して、生産性・売上の向上につながりました
例文では「働きやすい環境を整えた」ことにより、「生産性・売上向上」の効果が出たことを表しています。
実を結ぶ
「実を結ぶ」は、「努力の結果が現れる」「成功する」といった意味があります。
彼女のその努力が、いつか実を結ぶことを願っている
上記の例文からは、「長く努力し続けている彼女が成功してほしい」という思いを表現しています。
「棒に振る」の英語表現
「棒に振る」を英語に直訳しても意味は通じません。しかしニュアンスの似ている英単語を用いて表現することが可能です。ここでは「棒に振る」に近い英語表現をいくつかご紹介します。
waste
意味: 無駄にする・浪費する
「waste」は「無駄、消耗させる」といった意味を持つ英単語です。「無駄にする」という意味が共通しており、「棒に振る」と同じニュアンスで使用できます。
make a mess of
意味: 台無しにする
「make a mess of」は「台無しにする」という意味を表す英語なので、「棒に振る」と同じ意味を表現できます。
「棒に振る」は類語や対義語の意味も理解して正しく使おう
「棒に振る」とは積み重ねてきた努力や苦労が無駄となることを表現した言葉です。ネガティブなシチュエーションを表す言葉であるため、使うシーンには気をつけたいですね。類語や対義語などの意味も知っておけば、理解を深められます。
外国の方とコミュニケーションを取る機会のある職場では、英語表現なども知識として身につけておくとビジネスシーンで役立つことがあるかもしれません。本記事でご紹介した内容をぜひ覚えておいてくださいね。