「せっかく頑張ったのに苦労が水の泡だ」など、ビジネスや日常会話の中で「水の泡」という表現が使われることがあります。この記事では、「水の泡」の詳しい意味や由来、使い方や、類語、対義語などを紹介します。
「水の泡」の意味
「水の泡」とは「水面に浮かぶ泡」という意味もありますが、それが転じて「儚(はかな)くて消えやすいもの」「これまでの努力や苦労がすべて無駄になること」を表す言葉です。コツコツと積み重ねてきた頑張りが無になってしまうことを、泡のように消えてしまう様子に例えています 。
「水の泡」の由来
「水の泡」という言葉の由来は、江戸時代に平賀源内が書いた「根無草(根南志具佐/ねなしぐさ)」という談義本といわれています。その中に登場する「忰を守り立て人となし、父の名字をつがせんと思ひし事も水の泡」というフレーズが、「水の泡」の由来になったと考えられています。
「水の泡」の使い方
「水の泡」はさまざまなシーンで使える言い回しですので、使い方を覚えておくと役立ちます。そこで、「水の泡」の具体的な使用例を紹介します。
がっかりしたときに使われる
「水の泡」はせっかくの頑張りや努力が無駄になってしまうことを指しますので、あまりいい意味では使われません。仕事や勉強、スポーツなどでの頑張りが報われず、がっかりしてしまうような状況で使われることが多いです。
「水の泡だ」の例文
・社運をかけたプロジェクトに全力で取り組んできたのに、一つのミスですべての苦心が水の泡だ
・今年こそ資格試験に合格しないと、これまでの努力も学費も水の泡だ。頑張らなければ
・全国大会出場を目指して頑張ってきたのに、また準決勝敗退だと頑張りが水の泡だ。気合を入れよう!
このように、努力した結果が思うようにならなかった状況や、水の泡とならないよう励ますような状況で、「水の泡」に断定の助動詞「だ」を組み合わせてよく使われます。
「水の泡になる」「水の泡となる」の例文
・ここまで頑張って減量したのに、このタイミングで間食してしまうと努力が水の泡になるから気を引き締めよう
・余計な一言を発してしまったがばかりに取引先の機嫌を損ねてしまい、今までの苦労が水の泡となってしまった
・花火大会の日に台風上陸が予想されており、これまでの準備が水の泡となることはほぼ間違いないだろう
このように「水の泡」は、動作・状態などの結果を表す格助詞「に」、または「と」と、今までと違った状態に変わることを表す動詞「なる」を組み合わせて使われることも多いです。
「水の泡」の類語
「水の泡」には似た意味を持つ言葉がいくつかあります。状況に合わせて言い換えられるように覚えておきましょう。
水泡に帰する(すいほうにきする)
「水泡に帰する」は、せっかくの努力が無駄になることの例えです。以下のように、「水の泡」と同じ意味で使える言葉です。
懸命に取り組んできたプロジェクトだが、努力がすべて水泡に帰してしまった
棒に振る(ぼうにふる)
「棒に振る」とは、これまで積み重ねてきた努力や苦労で得た成果を無駄にすることです。以下は例文です。
たった一度の過ちで、人生を棒に振ることとなってしまった
元も子もない(もともこもない)
「元も子もない」の意味は、「すべてを失って何もない」です。「元金も利息もない」が由来になっています。
ここで失敗して計画が中断してしまうと元も子もないので、気を引き締めよう
頓挫(とんざ)
「頓挫」とは、「計画や事業などが途中で行き詰まり、遂行できなくなること」です。「勢いが急に弱まること」「文章や演説などで調子が急に変化すること」という意味もあります。
ビアガーデンでつい暴飲暴食してしまい、ダイエットが頓挫してしまった
「水の泡」の対義語
ビジネスや日常生活の中では、「水の泡」とはならずに成功を収めることもあります。そこで、「水の泡」の対義語として使える表現を見ていきましょう。
功を奏する(こうをそうする)
「功を奏する」とは、「効果を現す」「成功する」という意味がある言葉です。努力が無駄になってしまうという意味がある「水の泡」とは逆の意味がありますので、対義語として覚えておきましょう。
これまでの努力が水の泡となり資格試験に落ちてしまった
↓
これまでの努力が功を奏して資格試験に合格できた
実を結ぶ(みをむすぶ)
「実を結ぶ」には「努力の結果が現れて成功する」という意味があります。こちらも努力がふいになってしまう「水の泡」とは逆の意味です。
チーム一丸となって準備を進めたことも水の泡となり、新しい契約締結には至らなかった
↓
チーム一丸となって準備を進めたことが実を結び、新しい契約締結にこぎつけられた
「水の泡」の英語表現
日常会話やビジネスで英語を使う機会があるなら、「水の泡」の英語表現も押さえておきましょう。
one's efforts go for nothing
「one's efforts go for nothing」とは、「努力が無になる」という意味がある英語表現です。
All his efforts went for nothing.
(せっかくの彼の努力も水の泡になってしまった)
one's effort come to naught.
「naught」とは「無価値」「ゼロ」という意味がある英単語です。「one's effort come to naught」で、「努力がゼロになる」という意味になり、「水の泡」の英語表現として使われます。
All our efforts have come to naught.
(われわれのせっかくの努力も無となってしまった)
「水の泡」は努力が実を結ばなかったときに使われる比喩表現
「水の泡」には「努力や苦労が無駄になってしまうこと」という意味があります。「水の泡」という表現は江戸時代の根無草という談義本で使われていたことがわかっているなど、日本で古くから使われてきました。
がっかりしたときに使われる表現であり、ビジネスシーンでの使用にも差し支えありません。「棒に振る」「元も子もない」など、似た意味を持つ言葉も多いので、一緒に覚えておきましょう。