九州シンクロトロン光研究センター(SAGA-LS)、名古屋大学(名大)、富山大学、広島大学、分子科学研究所(分子研)の5者は6月28日、数フェムト秒だけ継続する2つの放射光の時間差が、数アト秒という高い時間精度で制御されている様子を2つの異なる手法で観測することに成功したと発表した。
同成果は、SAGA-LSの金安達夫副主任研究員、名大 シンクロトロン光研究センターの高嶋圭史教授、同・真野篤志技術職員、富山大の彦坂泰正教授、広島大 放射光科学研究センターの加藤政博教授(分子研 特任教授兼任)らの共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。
強力な光源が少ない真空紫外線やX線の領域において、基礎学術研究から産業応用まで幅広く利用されている放射光は、ほぼ光速にまで電子を加速した上で、磁場などを用いてその進行方向を曲げると放出される特殊な光(電磁波)とされている。
近年の放射光施設では、アンジュレータと呼ばれる装置が利用されており、同装置を2台用いてほぼ光速度の電子を蛇行させることでも、放射光が放出される。光は波の性質を持っており、電子が1回蛇行するたびに光の波の山と谷が一組生成され、このような有限の数の山谷からなる光は「波束」と呼ばれる。2台のアンジュレータを用いると、長さが1μm以下、時間に換算すると数フェムト秒以下という非常に短い波束が2つ続けて放射される。
研究チームはこれまで、そのような放射光を使って、原子の世界で起きる超高速現象の観測や原子の量子状態における制御などの研究を行ってきたという。しかし理論上は正しくても、本当に数フェムト秒以下という時間構造を持つ放射光が発生しているのかについては疑問とされていたという。そこで研究チームは今回、2つの異なる手法で実験を行って、放射光の時間構造を極めて精密に計測することにしたとする。