英Armは6月28日 (現地時間)、新しいフラッグシップGPU「Immortalis-G715」とプレミアムGPU「Mali-G715」「Mali-G615」を発表した。GPUの負荷を抑えて効率的にピクセルシェーダーを処理する可変レートシェーディング(VRS)に対応。Immortalisは同社で初めてハードウェアベースのレイトレーシングをサポートする。
モバイル向けのハードウェア・レイトレーシングの提供はArmが初めてではないが、モバイルノートやChromebook向けではなく、同社のMaliが浸透しているスマートフォン市場に新たなモバイル3D体験をもたらすソリューションとしてImmortalis GPUを設計している。
昨年5月に発表したMali-G710はソフトウェアベースのレイトレーシングをサポートしている。ハードウェアレイトレーシングを導入する上でSoCのリソースと電力消費を抑えるという課題に対し、Immortalis-G715はシェーダーコア・エリアの4%のみを使用し、ハードウェアアクセラレーションによって300%以上の性能向上を実現しているとのこと。
新たなゲーミング体験は対応するゲームがあってこそ。新しいゲームへの投資はゲーム開発者にとってリスクを伴うが、今年1月にSamsungが発表した「Exynos 2200」もハードウェア・レイトレーシングをサポートしており、ゲームメーカーや開発者の関心が高まっている。ArmのAndy Craigen氏は「Armはレイトレーシングがモバイルゲーム・コンテンツのパラダイムシフトになると考えています。Immortalis-G715で今ハードウェアベースのレイトレーシングをサポートすると決めたのは、パートナーの準備が整い、ハードウェアの準備が整い、そして開発者のエコシステムの準備が整ったからです」と述べる。ゲームからレイトレーシング活用が広がれば、さらに拡張現実アプリなど新たなカテゴリーのアプリが将来普及する下地になり得る。
VRSは、シーンを取り込み、例えばゲームで注視されない背景部分など、完全なシェーディング処理が必要ではない部分に粗い処理を適用する。ビジュアル品質を保ちながら効率化するVRSをゲーミングコンテンツに用いることで、FPS(frames per second)が最大40%向上するという。他にも、Execution Engineを再設計しており、コンバージョンブロックの面積を縮小させた一方で、FMA(fused multiply-add)の効率性を向上させてブロックを2倍に拡大。わずかなシリコン面積の増加で、約2倍の計算能力の向上を実現した。
Immortalis-G715は10コア以上の構成。2023年初めにも搭載スマートフォンが登場する見通しだ。Mali-G715は7〜9コア、Mali-G615は6コア以下のローコンフィギュレーション版になる。マイクロアーキテクチャの改善のみで、前世代のMali GPUから約15%パフォーマンスが向上しているという。