豊島九段は藤井王位にリベンジを果たせるか
藤井聡太王位に豊島将之九段が挑戦する、お~いお茶杯第63期王位戦七番勝負第1局(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)が、6月28、29日(火・水)に愛知県犬山市「ホテルインディゴ犬山有楽苑」で行われています。開幕戦なので、藤井王位の振り歩先による振り駒が行われ、先手は豊島九段になりました。
前期の王位戦は藤井王位に豊島九段が挑戦。第1局は豊島九段が制しましたが、続く第2局では終盤で藤井王位が逆転勝ち。この一局が流れを分けたのでしょうか、以降は怒涛の4連勝で藤井王位が王位戦初防衛を果たしました。豊島九段は続く竜王戦七番勝負でも藤井王位に4連敗を喫し、無冠となってしまいます。対して藤井王位は昨年の王位戦、竜王戦、そして今年の王将戦と、2日制のタイトル戦でなんと12連勝中。1日制のタイトル戦でも先日、叡王戦で出口若武六段を3連勝で下して強さを見せたばかりですが、1日制のタイトル戦では輪をかけてその実力を発揮しています。
とはいえ豊島九段もやられっぱなしではいません。竜王失冠直後に行われた昨年のJT杯決勝では藤井王位を破って優勝しています。2期連続の挑戦となった今期の王位戦ではより期するものがあるでしょう。これまでの対戦成績は藤井王位の13勝10敗です。
JT杯決勝から半年以上、両者は盤を挟んでいませんでしたが、これまでの両者の戦いでは角換わりと相掛かりのほぼ二択。本局もこの流れを踏襲し、戦型は角換わりとなりました。
将棋は見慣れた角換わり腰掛銀の定跡形で始まりましたが、藤井王位が跳ね出した桂を豊島九段が腰かけた銀であっさり食いちぎったところから局面は風雲急を告げます。一瞬先手は駒損になりますが、瞬間のスキを突いて空いたスペースに飛車取りで角を打ち込み、後手の陣形を崩しにかかります。
この時点で既に定跡を外れた激しい将棋ですが、豊島九段の攻めは止まりません。わずか3分の考慮の末、相手の玉頭に桂馬を打ち込んで一気に後手陣を崩しにかかる強手を選択しました。これは矢倉崩しとしておなじみの手ではあるのですが、駒損をしても敵玉に厳しく迫ろうという手で、終盤の手筋といわれる類のものです。2日制のタイトル戦の1日目の午前中にこの手が現れたのはおそらく史上初めてなのではないでしょうか?
ここまでの豊島九段の考慮時間はわずか30分あまり。明らかに豊島九段が入念に準備をしてきた手順であることがうかがえます。
本局は2日制で持ち時間は8時間。終局は明日29日の午後以降になる見込みです。
相崎修司(将棋情報局)