具体的には、分子動力学法によりアモルファスシリコンのモデル構造が多数作成され、そうして得られたさまざまな構造での熱伝導率とパーシステントホモロジーが計算された。パーシステントホモロジーは、二次元のヒストグラムとして可視化され(パーシステント図)、その図を数値データに変換し、機械学習や統計解析に利用できるようにしたという。
さらにパーシステント図を変換した数値データを入力し、熱伝導率が出力となるような「リッジ回帰モデル」が作成され、それを学習させることで、構造から熱伝導率を高精度に予測できるようにしたほか、熱伝導率の高低を決めているミクロな構造が、主成分分析とパーシステント図の逆解析から求められたところ、シリコン原子が作る五角形の構造の特徴が熱伝導率に強く相関していることが判明。この五角形は中距離秩序を構成する最小の要素であり、これが大きく歪んでできた四角形が存在すると、原子間に働く力にも不均一性が強く現れて、熱伝導率が低下することが判明したとする。
なお、研究チームでは、今回の研究手法は熱伝導率に留まらず、アモルファスの力学特性やダイナミクスにも応用可能だとしており、固体アモルファスに限らず、合金など、そのほかの乱れた構造に対する、数理科学を応用した新たな解析方法としての汎用化が期待されるとしている。また、産業応用上望ましい性質を持つ、高性能なアモルファス材料の物質設計に適応することも期待できるとしている。