2022年6月25日に、位置情報ゲーム『ピクミンブルーム』初のリアル・イベントが、毎月行われるコミュニティ・デイの一環として明治神宮外苑エリアで開催されました。エリア内では、ビッグフラワーの開花時間が15分に短縮され、「葉っぱの帽子」デコピクミンの大きな苗を見つけることができます。この苗は、1万歩歩いて引っこ抜くことで、新たな大きな苗を見つけます。
葉っぱの帽子のデコピクミンは、青ピクミンのみ。3種類の葉っぱの帽子を被っています。イベントの翌週から実装され、雨の日のみ出現。イベント限定レアデコピクミンではありませんが、一足早く入手できます。
さらに明治神宮外苑エリアにある「にこにこパーク」では、来場者に向けたピクミンデザインのサンバイザーとポストカード(実物)が配布され、来場までに5,000歩歩いたプレイヤーには、先着順でTシャツをもらえるキャンペーンも実施されます。
と、ここまでは『ピクミンブルーム』プレイヤーにとっては、ワクワクドキドキの初のリアル・イベントで、さらにたくさんのプレゼントももらえるとあり、かなり期待感のあるイベントとして捉えられていました。
イベント開始前から配布Tシャツに待機列。誘導員不在で現場はカオス
しかし、さまざまな不手際と見通しの甘さにより、当日の現場は大荒れ。まず、今回のイベントは午前10時からの開始でしたが、その時点で現場はかなりの待機列を作っていました。知人ライターによると、7時半の時点で列ができていたとのことです。
その列に対して運営は誘導員の用意をしておらず、来場者が思い思いの並び方をしていました。列の後方では最後尾が複数に分かれたうえ、横断歩道や陸橋などで道が分断された場所では、列の割り込みも横行。最終的には公道を埋め尽くした人に対処すべく警察まで出動する始末です。
さらに、配布するTシャツは、前述したとおり先着順なのですが、用意していた数が未発表だったうえ、並んでいる人数に対して、残りの数が足りるのかどうかもわからない状態。結果、途中でTシャツの在庫が底を突き、配布の終了が宣言されました。2時間近く並んだうえに、Tシャツをもらえなかった人もいたらしく、さすがに無料イベント、無料配布とはいえ、あまりにも無情な結果と言えます。
また、Tシャツの配布の条件をよくわかっておらず、せっかく順番が回ってきても、5,000歩に到達していないがために受け取れなかった人もいました。これは自業自得とも言えますが、早朝から並んでギリギリゲットできるタイミングなので、それ以前に5,000歩歩いておく必要があるのは、かなり厳しい条件です。
Nianticとしてみれば、公園にきて、しばらく『ピクミンブルーム』を楽しんで、「5,000歩に到達したらTシャツをもらいにいく」くらいの緩さを想定していたのかもしれませんが、現実はそうではありませんでした。
さらに、条件なしで配布される予定だった、サンバイザーとポストカードの配布も中止されています。理由はよくわかりませんが、最低でも、これらが全員に配られていたら、来場者ももう少し溜飲が下がったのではないでしょうか。
ゲーム内にも不具合がありました。「葉っぱの帽子」のデコピクミンの大きな苗が出現しないバグが発生。午前中はエリア内を歩いていても出現しませんでした。午後になって出現するようになりましたが、それでも人によってはなかなか出ないことも。私自身は午後の早い段階で大きな苗が出現し、1万歩分歩いたうえで、2つめの大きな苗も獲得できました。しかし、同行したプレイヤーは、1つめの大きな苗がしばらく出ず、1~2時間程度エリア内をうろうろしてようやく出現していました。
イベント当日は『ポケモンGO』もコミュニティ・デイを実施しており、『ピクミンブルーム』で大きな苗が出なかった時間は、『ポケモンGO』をプレイして過ごしていましたが、こちらも多少の不具合があったようです。
イベントのノウハウが蓄積されないNianticには抜本的な改革が必要か
今回のリアル・イベントは、梅雨の時期に開催したわりに晴天に恵まれたのですが、恵まれすぎた感もあり、全国各地で40度を記録した場所もあるほどの日でした。
外で遊ぶ『ピクミンブルーム』や『ポケモンGO』にとっては辛い天候でもありますが、それでも遊んでいるだけであれば、喫茶店や飲食店で休むこともできます。Tシャツを確保するために並んでいるときは、それもできないので、さすがに熱中症を心配するレベルです。
『ピクミンブルーム』を運営するNianticは、ゲームとリアル・イベントを融合させることで、新たなゲーム体験を提供してくれています。そのことについては、それぞれのタイトルを遊んでいるプレイヤーも喜んでいるに違いありません。
しかし、イベントによる問題発生率が高すぎて、もはや信用度はゼロに近くなっています。『Ingress』のリアル・イベントを開催してから、もう9年にもなるので、言い訳は聞けない事態でしょう。
Nianticのゲームやサービスは、他に類を見ない革新性と喜びをかつてない数の人々に届けてきており、超一流のIT企業であることは疑いようがありません。しかし、ことイベント運営となると、未だに初心者レベル。今後もイベント運営を行っていくのであれば、現場の仕切りはイベント専用の運営会社に外注したり、他社のイベントすら請け負えるほどの力とノウハウを持った部署を設立したりするほかないと思います。
今回の件も、整理券配布にすれば、多少並ぶことがあっても1~2時間も並ばせることもありませんでしたし、5,000歩の条件も整理券をもらってからクリアできたはず。また、来場者の数の見込みが難しいのであれば、有料チケットで管理する手段もあります。某ゲーム系イベントで聞いた話ですが、「入場料は収益にほぼ換算していないので無料にすることもできるが、来場者数を予測できるので有料チケットを販売している」とのことでした。チケット制でも、無料だと申し込むだけ申し込んで来ない人が多いなか、有料だとその差が小さくなり、ある程度の来場者がわかるそうです。
コロナ禍がまだ続くなか、『ピクミンブルーム』のリアル・イベントに、パニックが起きるほどの人が集まったのは、やはりリアル・イベントを望む声があり、同時に『ピクミンブルーム』が愛されている証拠だと思います。
今回の件に対して「無料でイベント開催して、無料でTシャツ配って、それで叩かれるんだから大変だ」との意見もありました。Nianticとしてもコストをかけて評判を落とすのであれば、イベントをやる意味もなくなってきます。
問題点はイベント運営にあるのですから、そこは多少のテコ入れではなく、抜本的な改革が必要ではないでしょうか。ゲーム内イベントの不具合も改善してほしいところですが、それはおいおい。
とにかく、リアル・イベントは会場までの移動に時間やコストがかかり、予定も立てていないと参加しにくいものです。なので、まずはリアル・イベントの参加者をガッカリさせないようにすることから手を付けてほしいところです。