政治家の答弁で「ご質問の件につきましては、粛々(しゅくしゅく)と進めてまいります」など「粛々と……」という言葉が使われるのを聞いたことがありませんか?
ビジネスシーンでも見聞きすることが多い「粛々と」という言葉ですが、意味が分からないという方も少なくないですよね。今回は、この「粛々と」の意味、使い方についてご紹介します。
「粛々と」の意味とは?
「粛」には「心を引き締める」「つつしむ」「厳(きび)しくする」という意味があります。「粛々」は「粛」を重ねたものですから、さらに「心を引き締める」、「厳しくする」にという意味になりますね。『広辞苑』では「粛々」を、次のように説明しています。
しゅく-しゅく【粛粛】
(1)つつしむさま。
(2)静かにひっそりしたさま。
(3)ひきしまったさま。
(4)おごそかなさま。
「葬列が――と歩む」
(『広辞苑 第六版』P.1337より引用)
つまり「粛々と」は、「心を引き締めて厳しく」「厳(おごそ)かに」「ひっそりと」といった意味になるので、「粛々と進める」は「心を引き締めて厳しく進める」、「粛々と歩む」は「厳かにひっそりと歩く」という意味になります。
「粛々と」の使い方・例文
ここでは、「粛々と」の使い方や例文をご紹介します。
「粛々と」の使い方
前述したように、「粛々と」という言葉は、「心を引き締めて」「厳しく」「静かに」対峙しなければならないときによく使われます。
ですので「にぎやかなサンバ・カーニバルの一隊が粛々と通り過ぎた」というような使い方は好ましくありません。「粛々と」を使う際には「厳か」で「静か」なニュアンスになるのです。以下に「粛々と」の例文を挙げたので、参考にしてみてください。
「粛々と」の例文
1. 彼は粛々と議事進行を行った。
2. 部長「改革案を粛々と進めてほしい」
3. 株主総会は粛々と進行した。
4. A大臣「その件につきましては粛々と進めてまいります」
「1」は「ひっそり静かに」「心を引き締めて」といった意味で「粛々と」が使われています。
「2」では、『「心を引き締めて」「厳しい態度」で改革案を進めるべし』という気持ちを発言に込めています。
「3」は「心を引き締めて厳しい態度で」という意味で「粛々と」を使っています。
「4」は政治家の発言でよく聞くたとえです。事態を重くとらえ、「心を引き締めて進めてまいります」と説明しているわけです。
このように「粛々と」という副詞は、「どのような態度や気持ちで物事に当たるのか」を表現する言葉なのです。
「粛々と」は上から目線になる?
「粛々と」は先述したように、下記のような意味です。
しゅく-しゅく【粛粛】
(1)つつしむさま。
(2)静かにひっそりしたさま。
(3)ひきしまったさま。
(4)おごそかなさま。
「葬列が――と歩む」
(『広辞苑 第六版』P.1337より引用)
上記の通り、「粛々と」には使うことで上から目線のスタンスに感じられるような意味はありません。しかし、過去に政治家が「粛々と」を含んだ発言をし、それが「上から目線だ」と非難されるという出来事があったことから、上から目線に感じられる人もいると考えられます。
「粛々と」と「淡々と」の違いは?
「粛々と」と混同しやすい言葉の一つが、「淡々と」。なんとなく似たような意味である印象を抱きますが、この2つの言葉は意味が異なります。
「粛々と」が「静かでおごそかなさま」を表すのに対し、「淡々と」は「あっさりとしているさま」「態度や動作にしつこさやこだわりがないさま」を意味します。「淡々と進める」という言葉をよく見聞きしますが、「感情を入れずに物事を進めていく」といったニュアンスで使用されています。
「粛々と」の類語・言い換え表現
「粛々と」の類語には、以下のような言葉を挙げることができます。
・厳(おご)かに
・厳粛(げんしゅく)に
・粛然(しゅくぜん)と/粛然として
・密(ひそ)やかに
例えば「葬列が粛々と歩む」というのは、「葬列が厳かに歩む」「葬列が密やかに歩む」と、同じような意味だと考えられます。
「粛々と」の意味や使い方をマスターしてビジネスで活かそう
「粛々と」は「心を引き締めて厳しく」「静かにひっそりと」「厳かに」という意味をあらわす言葉です。
なにかと慌ただしい日々を過ごすことも多いかとは思いますが、たまには一度立ち止まり、「粛々と」ものごとを進めてみると、いつとは違う新しい発見があるかもしれないですね!