おにぎりは、日本人にとって最も身近なファストフードだ。米さえあれば家でもすぐに作れるし、今やコンビニのおにぎりだってめちゃくちゃ美味い。だからこそ、わざわざ専門店に出掛けてまで食べようと思う人は多くないはずだ。
……と漠然と考えていたのだが、それは完全な偏見。現実はまったく違っていた。というのも、TikTokがキッカケで、現在とあるおにぎり専門店に若者たちが殺到しているらしい。それが豊島区・大塚にある「おにぎり ぼんご」である。
確かにその名前には聞き覚えがあるけど、まさかバズるレベルにまで達していたとは。ということで、さっそくこのブームに便乗。意気揚々と乗り込んだ結果……こりゃバズるわ!
約50メートルの大行列!予想を遥かに上回る人気ぶりだった
「おにぎり ぼんご」は、1960年に創業した老舗のおにぎり専門店だ。
『マツコの知らない世界』(TBS)や『出没!アド街ック天国』(テレビ東京)など、テレビ番組で取り上げらえることも多く、最近ではTikTokで「日本一美味しいおにぎり店」と紹介され、またまた大バズりしている。
平日は地元客が目立つが、土曜日はおにぎりを求めて遠方から訪れる人も多いようだ。「もしかしたら1時間くらいは並ぶかもな」とある程度の覚悟を決め、土曜日の午後に訪れてみるとーー。
店の前には、予想以上の長蛇の列が!バズっているとは言え、正直ここまで人気だとは思いも寄らず。パッと見た感じだと、少なくとも50mくらいは続いていそうだ。50mの行列って、ラーメン二郎でもまず見ないと思うが……すごいな。やはり並んでいるのは若者が多く、TikTokの影響を強く感じる。
まぁ行列なのは仕方がない。おにぎりだし、回転も早いだろう。そう思って最後尾に並び、最終的に待つこと2時間(!)、予想の2倍の時間並ぶことになったが、そろそろ入店できそうな気配が漂ってきた。すると、入店前におにぎりの具材を選んで注文するのがこの店のシステムであることを知る。
店員さんから渡されたメニューを見ると……な、なにぃ!? こんなに多くの具材があるの!!?
そのレパートリーは、うめ、焼きたらこ、しゃけなどの定番から、カレーやペペロンチーノといった変わり種まで50種類以上。ひとつのおにぎりに2種の具材を入れたり、具材やご飯の増量もできるみたいだ。どれを選ぶべきか、これは悩ましいぞ……。
いやはや、本当に目移りしてしょうがない。選びきれない場合は、人気具材のベスト10を参考にするのがよさそうだ。
よし……ベタではあるが、今回は1〜3位を攻めてみよう。ということで、しゃけ(300円)、すじこ(600円)、卵黄(300円)を注文。とうふのみそ汁(250円)も一緒に頼んでおこう。
注文したのち、席が空いたタイミングで入店。こじんまりとした店内はカウンター席のみ。まるで寿司屋のようだ。
ショーケースにはおにぎりの具材がまさに寿司ネタのように並べられており、カウンターでは、凄まじいスピードでおにぎりが作られている。うはー、これは楽しみだ!
しゃけ、すじこ、卵黄のおにぎりを実食
数分後、3種類のおにぎりと、とうふのみそ汁が到着。ってゆーか……なかなかデカい!!
おにぎりは拳一つ分ぐらいはあるだろうか。いつも食べているコンビニのそれよりもかなり大きい。おにぎりの上には具材がこんもりと盛られていて、なかなかの贅沢感がある。いやぁ、これは美味そうだ。
おにぎりだけでもボリューム満点だが、土曜は先着100名限定で、ゆで卵と小鉢がサービスでついてくるらしい。この日は幸運にも、上位100名に滑り込むことができた。嗚呼、2時間並んだ苦労が報われた気分である。
さて、さっそくおにぎりを食べてみよう。まずは一番人気のしゃけから。皿から持ち上げてみると、ずっしり重たい。三角形の頂点にはさけのほぐし身がたっぷり乗っている。では、ひと口。
うわぁ……美味しい!具材としては素朴かもしれないが、 程よく塩気が効いたしゃけはご飯とこの上なく相性がいい。実はこのしゃけ、ちゃんとオーブンで焼いてから手でほぐすという手間暇をかけた逸品。おにぎりというと、ひと口目で具材に行きつかないことも多いけれど、ここは具材の量がたっぷり入っているから最後まで具材とご飯のコンビネーションが楽しめる。
そして何よりご飯が美味い!注文が入るたびに作るシステムになっているので、おにぎりは出来たてホヤホヤ。ご飯は手で握るのではなく、型に入れて優しく海苔で包んでいるため、頬張った瞬間にふっくらとした食感と甘みが広がる。米は新潟県岩船産コシヒカリ、海苔は有明産、塩は沖縄県産を使用するなど、素材にもかなりこだわっているようだ。 では、卵黄のおにぎりも味わってみよう。
キラキラと醤油漬けの卵黄が輝いている。食べなくてもわかる。これは絶対に美味い。パクッ。
はい最高! 白いご飯に卵がトロッと溶けていて、まるで濃厚な卵かけご飯を食べているような感覚である。卵黄の旨味がめっちゃ濃ゆい。
当然、すじこも美味かった。コクと旨味がしっかり感じられ、やや塩気が強めなのでご飯が猛烈に進む。他のおにぎりに比べてやや高いと感じるかもしれないが、食べてみれば600円という価格にも納得。絶品である。
ちなみに一緒に頼んだとうふのみそ汁はおかわり自由。とうふとネギというシンプルな具材だが、心からホッとできる優しい味わいだ。
たかがおにぎり、と侮るなかれ。「おにぎり ぼんご」のおにぎりは、しっかり腰を据えて味わいたくなる立派な日本の伝統料理だった。みんなが並んででも食べにくるのもよくわかる。今度は変わり種……例えばペペロンチーノおにぎりなんかを味わうために再訪したい。
今度はちゃんと長編小説でも持参しよっと。