もうすぐやってくる夏。気温が上がるとビジネスパーソンにとって気になるのが、「ワキ汗」。通勤時や営業先で腕を上げたときにシャツにワキ汗ビッショリ! なんていうことは避けたいものだ。そんな不安をできるだけ解消すべく、「『ワキ汗・多汗症』疾患啓発プレスセミナー~もう、汗らない!~」に参加して"ワキ汗"のギモンを徹底解明してきた。
このセミナーは、科研製薬と、今年4月に日本で初めて設立された多汗症の患者会「NPO法人多汗症サポートグループ」が共同で6月7日に都内で開催したもの。知っているようで知らないワキ汗の基礎知識、ワキ汗・多汗症の悩みや実態、最新治療についての解説や、多汗症の病院治療についての座談会も実施された。
■汗って何だろう?
気象庁によると、今年は例年以上に気温が高く猛暑が予想されるそうで、ワキ汗などの悩みを抱えている人にとっては厳しい夏になりそうだ。一方で、暑さとは関係なく日常生活に困るほどワキ汗が多量に出る疾患がワキの多汗症。国内の潜在患者は約720万人いるそうで、20人に1人がワキの多汗症と考えると、意外と身近な疾患だといえる。
そもそも「汗とは何か?」というと、人間には「エクリン汗腺」という汗腺がほぼ全身に分布していて、血管から水分がエクリン汗腺に行き、「汗を出せ」という信号が出ると、雑巾絞りのように汗が皮膚から出ていく。発汗経路は、体温調整のために汗をかいて体温調節をする「温熱性発汗」と、精神的な緊張によって汗をかく「精神性発汗」の2つがあり、ワキ汗は、暑さで発汗した上にさらに緊張してそれが増幅されるという、両方の機能が働いているそうだ。
■汗のギモンを聞いてみた
ところで、"汗っかき"と多汗症の違いはどこにあるのだろう? 多くの多汗症患者の診療に取り組んでいる「池袋西口ふくろう皮膚科クリニック」院長の藤本智子先生によると、手のひらや顔・頭部・脇・足裏などに日常生活で困るほど汗の量が多い状態が6カ月以上持続しており、以下の6項目中2項目以上を満たす場合は「原発性局所多汗症」という疾患の可能性があるという。
あなたもチェックしてみよう
□発症が25歳以下
□睡眠中は発汗症状がみられない
□両側性かつ左右対称性
□家族歴がある(家族も多汗症である)
□週1回以上多汗のエピソードがある
□日常生活に支障をきたす
「多汗症」は汗の量ではなく、「汗で生活にどれだけ支障をきたしているか」で判断されるとのこと。具体的には、手のひらからの多量の汗で人と握手ができない、PCやスマホが多量の汗で水没したように壊れてしまう。試験の際に答案用紙が汗でびしょびしょになってしまうなど生活に支障が出るため、受験シーズンには病院に来る人が多くなるという。
また、ワキ汗をかくことでシミができ、服の色を自由に選べない、黄ばみができてしまうなど、ファッションも制限されてしまう。さらに積極的に手を挙げられなくなる、デートの際にも手が繋げないなど、人とのコミュニケーションにも影響が大きい。「多汗症」は、思ったより深刻な問題だ。
関心の高さを示すように、質疑応答では集まったメディアからは多くの質問が寄せられた(回答はすべて藤本先生)。
Q1. 日頃から汗をおさえるために気を付けることや生活習慣はあるの?
「普段から体を動かさずに冷房の下にいるなど、汗をかかずに過ごすとあまりよくありません。発汗機能は筋トレと同じで、トレーニングを積むことで汗のコントロールができるようになっていくんです。必要以上に汗をかくことを避けるのは本質的ではないので、むしろ運動したりお風呂に入ったりして、"汗活"することが大事ですね」
Q2. 30代や40代になってから何かのきっかけで多汗症になるケースは?
「若い頃に症状がなく30代40代になってから多汗症を発症するのは『原発性多汗症』ではなく、『続発性多汗症』にあたります。その場合、甲状腺の病気など、別の病気が原因になっている場合があるので、それも含めた診察が必要になります」
Q3. 脱毛すると多汗症の症状がひどくなる、より汗をかいてしまうことがある?
「毛根とエクリン汗腺(汗が出てくる器官)はまったく違う構造になっているので、脱毛によってエクリン汗腺が影響を受けることはありません。基本的にはまったく関係ない事象です」
Q4. 汗臭が気になります。多汗症と"ワキガ"の関係は?
「ワキガはアポクリン汗腺の病気、多汗症はエクリン汗腺の病気なのでまったく別ですが、ワキガも多汗症も両方発症している場合があります。汗が多いと湿気が多く雑菌も増えるので、汗自体には匂いがなくても、二次的なことで匂いが発生して汗臭となる場合もあります。その場合、多汗症の治療をすれば匂いも改善します。症状が合併している場合、ワキガに関しては、多汗症の治療をしても変わらないので、抗菌薬を塗ったり、最終的には手術することも必要になります」
Q5. スティック状の制汗剤を使っているのですが、ワキに塗るベストなタイミングは?
「お風呂上りにはまだ汗が出ているため流れてしまうと思うので、寝る前と外出する前に塗ると良いと思います。市販のものは、汗にふたをするタイプの制汗剤だと思うので、続けて塗ることに意味があると思います」
なるほど、なんとなくギモンに思っていたことが解明されて、今後の生活に役立てられそうだ。また、多汗症の自覚がある場合、1人で悩まずに医療機関で受診してみることが悩み解決の第一歩。
「現在は治療のガイドラインもでき、治療法が確立されているので、迷わず皮膚科に来ていただきたいです」と藤本先生も話す。
■"汗"は多くの人が抱える悩み
セミナー後半では、多汗症患者会「NPO法人多汗症サポートグループ」代表理事の黒澤希さん、ワキの多汗症患者代表として同グループ理事の高部大問さんと、藤本先生による座談会が行われた。
それぞれの経験を踏まえた上で、ワキ汗や多汗症に悩む方々に向けてのメッセージをフリップで発表した。
「『多汗は多感』。多汗症の人は感受性が豊かな人が多い。汗が出るというあたりまえのことで困っているだけに、いろいろなマイノリティーの人の気持ちがわかると思います」(高部さん)
「『1人じゃないよ』。みなさん隠してしまいますが、多汗症は実は多い疾患なので、1人じゃないということを伝えたいです」(黒澤さん)
「『汗らず自分らしさを取り戻す!!』汗をかくのは大事なこと。汗を嫌わずに、キャリアの中で自分の汗をコントロールできるようになって、それを自信にして自分らしさを取り戻しましょう」(藤本先生)。
科研製薬では、自分らしく安心して生活できる社会をつくるために、疾患啓発プロジェクト「相談しませんか。"ワキ汗"のコト」を進行中。ワキ汗の情報・サポートサイト「ワキ汗治療ナビ」による病院検索および、科研製薬公式YouTubeチャンネルの開設などで、ワキ汗に悩む人たちが相談しやすく適切な治療を受けられる環境を目指している。ワキ汗が気になる人は、猛暑がやってくる前にぜひチェックしてみてほしい。