ところでPress Conferenceの折に2つほど質問を投げたのだが、やっと返答が届いたのでちょっとご紹介したい。

まず1つ目はPCI Express 6.0(PCIe 6.0)のTest Specificationのリリース時期である。現状、PCI Express 5.0に関しては今年4月14日に“PCI Express Architecture Configuration Space Test Specification Revision 5.0, Version 1.0”が公開されたが、6.0に関しては現在初期Draftの段階との事。

Test Specificationの策定にあたっては実際にPCIe 6.0、つまり64GT/secで動作するシリコンを利用して仕様の検証が必要になる関係で、まだ数年かかるだろうという返事であった。今後64GT/secで動作するシリコンを提供するメンバー企業が増えればより正確な時期が予測できるが、現状では2024年以前にリリースされる可能性はないだろう、という事だった。

こうなってくると、まずは誰がホスト側のチップをリリースするのか? という話に繋がってくる。IntelではGranite Rapids、AMDならTurin以降でのサポートになる訳で、現実問題としては2025年辺りにリリースになるのかもしれない。

もう1つは電源供給に関する話である。2022年3月にIntelはATX 3.0とATX12VO 2.0という新しい電源仕様を公開したが、これに先立ってPCI-SIGは2021年12月8日に“Power Excursion Limits for 300-600 W PCIe AICs ECN”をリリースした。

このECNで、600Wまで供給できる12VHPWRコネクタが新たに定義されており、ATX 3.0とかATX12VO 2.0はこれを受けて対応した格好だ。

以前はPCI-SIGのECNはメンバー企業でなくても参照できたのだが、最近はECNがメンバーのみに公開になっており、外部から参照できない。そこでこのECNでは12Vだけでなく48V/600Wの供給が可能になっているのかを確認してみた。

さてその返答であるが、なかなか斜め上であった。すでにこのECNはPCI Express 6.0のBase specificationに取り込まれているとしたうえで、

  • 48Vの仕様もすでに定められており、コネクタそのものは12VHPWRによく似ているが、ピン数が減っている。
  • CEMのForm Factorで、空冷としてサポートされるのは600Wが最高である。空冷は消費電力が増えるほど実装が難しく、空冷の600Wカードは騒音がかなり大きくなるだろう。
  • 仕様では、1つのカードが複数(最大7つ)の12VHPWRコネクタを持つことが出来る。この場合、カード1枚で4275W(600W×7+PCIeコネクタから75W)が最大となる。
  • 「物理法則に反する(violates many laws of physics)」ようなカスタムフォームファクタのカードであれば、最大8つのコネクタから204,000W(25,500W×8)の供給が可能である。

だそうである。ちなみに最後の25,500Wというのは、もう標準の電源コネクタではない。

なんというか、昨今のPCIeカードの消費電力の多さに、PCI-SIGがキレたとしか思えない仕様であるが、果たしてこんなお化けカードが将来投入されるのだろうか?