マツダは新型SUV「CX-60」の予約受注を6月24日に開始する。発売はディーゼルエンジン搭載車が2022年9月、そのほかのパワートレインは2022年12月の予定。最上級グレードのプラグインハイブリッド車(PHEV)は626.45万円でマツダ車では最高の価格となっているようだが、どんな顧客を想定しているのだろうか?

  • マツダ「CX-60」

    マツダの新型SUV「CX-60」

高価格帯に挑戦する理由は?

マツダは今後、エンジン縦置きプラットフォームを用いた「新世代ラージ商品群」の投入を進めていく方針。既存車種よりも大きくてハイパワーなクルマを用意して、より上級志向なユーザーのニーズに対応する。効率を高めたガソリン/ディーゼルエンジンを活用し、マイルドハイブリッド車(MHEV)やPHEVなどの電動車もラインアップしつつ、電気自動車(EV)への移行期における内燃機関車のさらなる環境負荷低減を図りたい考えだ。

CX-60はラージ商品群の第1弾。パワートレインは4種類で、価格は299.2万円~626.45万と幅が広い。

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    「CX-60」のラインアップ。PHEVは国内での認証取得前なので詳細は不明だが、前に試乗した欧州仕様プロトタイプの概要は以下の通り

  • 「CX-60」PHEV欧州仕様(プロトタイプ)の概要
全長/全幅/全高/ホイールベース 4,742mm/1,890mm/1,691mm/2,870mm
トレッド(フロント/リア) 1,637mm/1,637mm
エンジンの排気量 2,488cc(直列4気筒)
エンジンの性能 最高出力191ps、最大トルク261Nm
駆動用モーターの性能 175ps、270Nm(システム総出力327ps、最大トルク500Nm)
駆動用バッテリーの容量 17.8kWh
トランスミッション 8速AT
駆動方式 AWD
最高速度 200km/h
0-100加速 5.8秒
EV走行距離 61-63km
  • マツダ「CX-60」
  • マツダ「CX-60」
  • マツダ「CX-60」
  • 「CX-60」のデザインコンセプトは「ノーブルタフネス」(Noble Toughness)。ボディカラーは今回が初採用となる「ロジウムホワイトプレミアムメタリック」だ

  • マツダ「CX-60」

    写真のクルマはディーゼルエンジンのMHEV。500万円以上のグレード(MHEVとPHEV)ではバンパーが専用設計となり、アーチモール(フェンダーの部分)がボディ同色となる。ホイールは空力にも貢献する専用の20インチを用意。内装もかなり違うそうで、特に「プレミアム」と名の付くグレードでは手の込んだ素材、デザインを採用したそうだ

  • マツダ「CX-60」
  • マツダ「CX-60」
  • マツダ「CX-60」
  • グレードによっては幅950m、長さ1,021mmの大型パノラマサンルーフを装着可能

マツダが思い切って高価格帯のSUVを投入してきたのにはいくつかの理由がある。まず、日本のSUV市場では近年、400万円以上のクルマが売れるようになってきている。「チャンスが発生している高価格帯にチャレンジしたい」(マツダ 国内営業本部の二宮誠二さん)というのが理由のひとつだ。CX-60の高価格帯グレードには「スポーツ」と「モダン」の2つの世界観を用意し、幅広いニーズに対応するという。

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    国内SUV市場の推移。400万円以上~600万円未満の販売台数は2017年が6.7万台、2021年が15.3万台で倍以上に増えている

もうひとつ、これがかなり重要な理由のようだが、CX-60にはマツダ車を乗り継いでいるユーザーの流出を止めることと、マツダ車から離れてしまった人たちを再び呼び戻すことがミッションとして課せられている。CX-60の主査を務めるマツダ 商品本部の和田宣之さんによると、同社ではCX-5などに乗っていたユーザーが「より大きい」「よりハイパワーな」「より上級な」「より快適な」クルマを求めて他社(輸入車も含む)に流出するケースが数年前から顕在化していたとのこと。つまり、クルマをグレードアップさせたくても、マツダには選択肢がないということで別のブランドに流れていったユーザーが、無視できないくらいの規模で存在したらしいのだ。この流れを止めることが、CX-60の重大な使命となる。

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    「CX-60」の車幅は1,890mmと国産車としてはかなり大型だが、上の車格を望むユーザーにしてみれば、このくらい立派な方が購入意欲をそそるのかもしれない。和田さんも車幅については慎重に検討したそうだが、日本では2016年以降、新しいマンションやショッピングセンターで大型車枠の駐車場(車幅1,900mmが基準)が推奨されているそうで、これからも増えていく見通しだという。縦置きアーキテクチャーの採用によりCX-60は前輪が切れるので、小回りもけっこう利く(初代CX-5より0.1m小さい)そうだ

あとは、ディーゼルエンジン搭載車が欲しいユーザーにとっても、CX-60が有力な選択肢になるのではないだろうか。そもそも選択肢自体が減ってきているディーゼル車だが、「マツダでは、まだまだ需要がある」(和田さん)とのこと。CX-5ユーザーの約6割がディーゼルを選んでいるというから、人気はかなり根強いようだ。ここに大排気量のディーゼルエンジンを搭載するCX-60が登場すれば、需要の受け皿になりそう。特にMHEVは燃費も非常に良好で、「CX-3」および「CX-5」のディーゼルを凌駕する21.1km/Lを達成している。

  • マツダ「CX-60」

    ディーゼルエンジン搭載マツダ車の性能と燃費

国産車で600万円超というのはなかなか聞かないが、マツダが高価格帯に挑戦するのには理由がある。当然、購入検討者は輸入車やレクサスなどと厳しい比較・検討を行うはず。マツダの商品力が試される1台となりそうだ。