先日開かれた「WWDC 22」にて、最新のM2チップを搭載した高性能ノート型Mac「MacBook Pro」が登場しました。伝統のデザインや装備を継承しつつM2チップに置き換えた意欲作ですが、M2チップを搭載してデザインを一新した「MacBook Air」が同時に発表されたこともあり、影が薄いのが事実。確かに、M2チップ搭載以外の変化や目新しさはなく地味なのですが、高い性能と安定した動作をリーズナブルな価格で提供する、ライトバンのような“プロの道具”と感じました。
しっかり高速なのに、とても静かで熱くならない
M2チップを搭載した新しい13インチMacBook Proですが、外観はこれまでとまったく同じ。ここ数年のMacBook Proを特徴づけていたTouch Barは健在で、発生した熱を外部に排出する冷却ファンも継承しています。外観からはM2チップ搭載の最新モデルということはまったく判別できず、まさに「従来モデルのチップをM2に置き換えた」といった感じ。同時に登場したMacBook Airがデザインや端子類を一新してフルモデルチェンジしたのとは対照的といえます。
変更点がM2チップへの置き換えということで、「M1搭載モデルと比べてどれぐらい速いのか?」「本体は熱くなるのか?」といったことが気になります。M1搭載のMacBook Air(2021年モデル)と、さらにCore i7(2.6GHz)搭載の15インチMacBook Pro(2016年モデル)を用意し、比べてみました。
ベンチマークソフトの結果は以下の通り。M1搭載のMacBook Airよりもワンランク高速で、Core i7搭載のMacBook Proと比べると歴然とした差が。M2の性能の高さが確認できました。
ベンチマークソフト | 3DMark | Cinebench 23 | Geekbench 5 |
---|---|---|---|
M2 MacBook Pro | 6823 | 8652 | 1903(シングルコア) 8994(マルチコア) |
M1 MacBook Air | 4479 | 6565 | 1750(シングルコア) 7738(マルチコア) |
Core i7 MacBook Pro | 非対応 | 4092 | 832(シングルコア) 3402(マルチコア) |
次に、Lightroom Classicで100枚のRAW画像をJPEG画像に変換する時間を比べてみました。M1 MacBook Airは15分33秒もかかったのに対し、M2 MacBookProは6分38秒で終わり、一般的なアプリでも高速処理の恩恵が受けられることが確認できました。画像処理ソフトや動画編集ソフトなどを業務で使っている人は、作業の効率化につながります。
特筆すべきなのが、冷却ファンの静かさと本体が熱くならないこと。ベンチマークソフトを走らせると冷却ファンが回り出しますが、後方に排気されることもあり、風切り音はとても静かで気になりません。熱が排出されることから、キーボードやパームレストは熱をほとんど帯びず、快適に使えます。冷却ファンで確実に熱を排出し、長時間でも安定して使えるようにしたことは、プロが使う道具の証だと感じます。
低消費電力&低発熱のM2チップのおかげで、外部ディスプレイに接続する「クラムシェルモード」もより安定して使えます。液晶パネルを閉じてクラムシェルモードで使っても、ボディがほんのり熱くなる程度で済みます。動画編集やRAW現像などの重たい処理を継続的に実行しても、内蔵のファンがあるので熱暴走の心配はほとんどナシ。この点は、ファンレス構造を採用したMacBook Airにはないアドバンテージの1つといえます。
現行モデルで唯一のTouchBar搭載モデルになった
MacBook Proの象徴だったTouch Barを継承している点も、プロのニーズに応えた仕様といえます。「TouchBarは使ってないからいらない」という人も多いと思いますが、さまざまなソフトでTouchBarを巧みに操るプロがいるのも事実。2021年秋に登場した14インチMacBook Proと16インチMacBook ProはTouchBarが廃止されたので、それらのMacBook Proには乗り換えられない…と悩んでいた“TouchBar難民”にとっては、待望の製品となるでしょう。
初期のMacBook Proを使い続けている人に注目してほしいのが、Escキーが独立した物理キーになっていること。TouchBarの愛用者でも、Escキーはタッチ操作でない方がいい…と感じている人は多いので、この点は魅力的に映るでしょう。
新MacBook Airがうらやましく感じる部分もあるが…
もちろん、新しいMacBook Airがうらやましく感じる部分もあります。磁力でくっつくMagSafeは、電源ケーブルに足を引っかけて本体が引っ張られる心配が少なくなりますし、コネクターを近づけるだけでシュッとくっつくのは便利。内蔵のFaceTimeカメラが高画質化したのも、イマドキの進化といえます。TouchBarを使っていない人にとっては、大きくなって押しやすくなったファンクションキーもうらやましいポイントとなります。何より、上位の14インチ/16インチMacBook Proと共通の狭額縁デザインになったことで、高級感や新しさを感じさせるのは素直にいいなと感じます。
それに対し、M2搭載MacBook Proは伝統のTouchBarや内蔵ファンを継承し、仕事場でも外出先でもプロの仕事を確実にこなす道具としての役目を任された製品だと感じます。クルマでいえば、トヨタのプロボックスのような存在でしょうか。最安モデルは14インチMacBook Proよりも10万円近く安く購入できることもあり、高性能でもリーズナブル、かつ堅実なMacBook Proとして一定の支持を集めそうです。
見た目が2016年以降の13インチMacBook Proとほとんど変わりないので、家族にバレずにコッソリと買い替えたい人にはその点が魅力的なポイントとなりそう。細かく見れば、キーボードやTouchBarに違いがありますが、詳しくない人にとっては同じパソコンにしか見えません。古い13インチMacBook Proから買い替えたい人は注目です。ステッカーをいろいろ貼っている人は、きれいにはがして貼り替えられるかがカギになりそうですが…。