東京ビッグサイトにて6月16・17日に開催された「東京おもちゃショー 2022」では、タカラトミーやバンダイをはじめ、多数のホビーメーカーがさまざまなジャンルの玩具等を出展していた。今年は商談見本市(バイヤーズデー)のみの開催だったが、ビジネス関係者を中心に多数の来場者でにぎわい、他社の商品を興味深くチェックしている関係者の姿も至る所で見られた。

  • 京商「リビングトレイン」のN700S。Nゲージサイズで新幹線をコンパクトに楽しめる

今回、筆者は鉄道関連の展示に的を絞って取材。先日紹介したタカラトミーのブースだけでなく、多くの企業がさまざまな鉄道関連の玩具等を出展していた。筆者が取材した中でも、とくに興味深かった鉄道玩具等について紹介したい。

■京商「リビングトレイン」、トレーンの「アロハ電車」など注目

最初に取り上げるのは、京商が展開する「リビングトレイン」。鉄道車両を4両編成・Nゲージスケール(150分の1)にデフォルメしたダイキャストディスプレイモデルで、現在は0系、N700S、E5系、E6系が発売されている。これらを開封し、4両編成で連結したときの全長は約400mm。付属するディスプレイレールに置いても約472mmなので、自宅にほんの少しのスペースを確保するだけで飾りやすくなる。

さらに、別売の「スイッチバックレールセット」を購入することで、直線のスイッチバック運転も楽しめる。走行用レールの内部に黒い動力ユニット(単4乾電池が2本必要)を組み込み、マグネットで内部から車両を動かすしくみになっている。セットに付属しているレールをすべてつなげた場合、全長は約895mmと横長になるが、奥行きはあまり大きくなく、通常のNゲージのレイアウトより省スペースで収まると思われる。

  • 4種類の新幹線が発売中の「リビングトレイン」

  • 「スイッチバックレールセット」のレール内部に動力ユニットがある

  • ダイキャストモデル塗装前・塗装後のサンプル

会場では、純粋な展示走行の他に、富士山を背景にしたディスプレイケースとジオラマ2点が展示されていた。ジオラマ2点のうち1点は、京商の代表取締役社長である渡邉克美氏が自ら制作。トンネル間に開けた高架区間をイメージしたものと見受けられた。その上で、0系とN700Sがすれ違う鉄道模型ならではのシーンが展開された。

もう一方のジオラマはE5系同士がすれ違う作例で、線路奥にある山のトンネルから一瞬だけ顔を出す道路や、新幹線と道路の立体交差も作り込まれていた。通常のNゲージほど長編成ではないものの、省スペースで新幹線を走らせることができる。展示例のように情景を作り込んだり、背景画を用意したりすれば、楽しみ方がさらに広がりそうだ。

  • ディスプレイケースに富士山の背景画を置いた状態の展示

  • 緑多い区間を2本のE5系が走る

  • 京商社長・渡邉氏制作のジオラマ上で、0系とN700Sがすれ違う

注意点としては、「リビングトレイン」の車両はダイキャストモデルのため、通常のNゲージの線路には載せられない。その状態でレールに通電するとショートする恐れがあり、大変危険であると「リビングトレイン」公式サイトでも案内されている。安全のため、必ず守ってほしい。

続いて、Nゲージのダイキャストモデルを多数展開するトレーンのブースを紹介。注目は発売予定品の伊豆急行3000系「アロハ電車」とE235系山手線。「アロハ電車」は、海側・山側で色の違うホヌ柄のラッピングを細かく再現していた。伊豆急下田方先頭車両がベースとなっているのか、前面は赤色の帯で、スカートにも赤色を配している。7月下旬発売予定で、価格は1,320円(税込)。伊豆急ケーブルネットワークが監修し、現在もデザインの調整が進められているという。

  • 伊豆急行3000系「アロハ電車」がダイキャストスケールモデルで登場(伊豆急ケーブルネットワーク監修中)

  • E235系山手線と「山手線Tシャツ」のサンプル

E235系山手線は金型作成からこだわり、屋根上の彫刻やエアコンのメッシュなども細かく再現しているという。「アロハ電車」を見た後だけに、非常にシンプルな外観だと思ってしまうが、その分、前面と乗降ドアにデザインされた緑色のグラデーションの細かさがよくわかる。8月下旬の発売予定で、現在も各部調整を進めているとのこと。

その他、新規事業「COCOKARA事業」として、山手線の駅名標を1着に1駅デザインした「山手線Tシャツ」(全30種類、こども用100~150・大人用S~XL)も展示された。正面に山手線の駅名標とE235系の側面をデザインし、背面に山手線の路線図とE235系の前面をプリントしている。

■プルバックやボールペンがNゲージの線路を走る!?

「リビングトレイン」やNゲージダイキャストスケールモデル以外にも、Nゲージスケールに対応した商品の展示が見られ、実際に鉄道模型を持っている筆者にとっても印象的だった。トイコーから7月に発売予定の「ペントレイン N700S新幹線」(税込1,980円)は、2両のうち1両にペンを内蔵し、キャップになっている前面を外すとボールペンが出てくるしくみに。車両の連結を解除し、短く持つこともできる。D・D1規格の替え芯に対応しているため、インクがなくなっても繰り返し使える。

もう1両に単4乾電池1本の電池ボックスを内蔵し、電動走行に対応。ボールペンでありながら、Nゲージの線路を走ることもできる驚きの商品になっていた。会場でも、Nゲージの線路を走っている状態と、ボールペンの状態でそれぞれ展示。通常の鉄道模型とは異なり、「ペントレイン」側が電動で走行するため、コントローラーは不要となっている。走行用の車輪は2軸備わっているので、レールに載せやすく、脱輪もしにくい。

展示走行用の線路は、見た目の印象としてカーブ半径のあまり大きくないものを使用していたようだが、「ペントレイン」がカーブにさしかかったとき、若干の減速はしたものの、脱線はしなかった。最小通過半径はいまのところ不明だが、これならテーブルサイズでも新幹線を走らせられるのではないかと感じた。

  • 「ペントレイン N700S新幹線」はNゲージ鉄道模型の線路を走行

  • 連結を解除し、ボールペンとしても使用できる

  • プルバック走行「プルプラ」E233系中央線快速

国際貿易の展開する「プルプラ」シリーズも、Nゲージの線路に対応。プルバック式で、手で後ろに押してゼンマイを巻き、離すと電車が走るしくみになっている。「プルプラ」シリーズでは、Nゲージスケールの専用レールも発売しているため、線路上をプルバックで走ることもできる。車体は通常のNゲージ鉄道模型より大きく、手で押してゼンマイを巻くのに適した大きさ。Nゲージの線路に対応した鉄道玩具に触れてみたいとき、「プルプラ」がそのきっかけになるかもしれない。

現在、700系新幹線通常塗装と「ひかりレールスター」、923形「ドクターイエロー」、E233系各色の車両単品(各種、税込1,320円)、専用レール(税込880円)が発売されている。動力車・連結車の2両セットに専用レールが付属したコンプリートセットは、N700Sと「ドクターイエロー」の2種類(ともに税込3,300円)を用意し、秋頃発売予定とのこと。

■「パネルワールド」「moku TRAIN」など、こども向け鉄道玩具も

最後に、こども向け鉄道玩具を3点紹介。玩具メーカーの増田屋コーポレーション(マスダヤ)は、パネルを組み合わせて作るコースに専用の車両を走らせる「パネルワールド」を展開している。パズルのようにパネルを組み、つながったレールに新幹線・在来線の人気車両を走らせて遊ぶ玩具で、車両走行の際に単4乾電池が1本必要となる。

車両単品や車両・パネルセットとは別に、拡張パネルも発売中。ストップ&ゴー(駅)、トンネル、スロープ、鉄橋、踏切(単4乾電池が3本必要)を組み込むことで、遊び方がさらに広がる。自らコースを考え、パネルを組むことで、こどもたちの思考力を育むことにも役立つ。高さのあるものが少ないため、遊び終わった後の片付けや保管もしやすい。

会場では、多数のパネルを広範囲につなげた巨大ジオラマが展示された。その上を列車が縦横無尽に走行し、多くの来場者の目に留まった様子だった。ストップ&ゴーを組み込んだ箇所では、スイッチとなる部分に車両が来ると停車し、すでに停車していたもう1両が発車。踏切のある箇所では、電車の通過に合わせて踏切が鳴り、遮断機も降りるギミックが見られた。トンネルや鉄橋を織り交ぜることで、パネルの情景に変化が生まれ、さらに面白くなるのではないかと思えた。

  • マスダヤ「パネルワールド」のN700A

  • 自社ブース内にパネルの巨大ジオラマも展示

  • E5系の停車と同時にD51形が発車

車両に関しても、現代の新幹線や通勤電車だけでなく、113系やEF81形電気機関車、D51形蒸気機関車など、大人も興味を持ちそうなラインナップに。親子で一緒に遊ぶのも良いかもしれない。その他、路面電車や『きかんしゃトーマス』『チャギントン』パネルホビーなども展開している。ただし、他とつなげることのできないパネルもあるとのことなので、購入して遊ぶ際は注意してほしい。

知育玩具のパイロットコーポレーション(パイロット)からは、ひもでつながった2両を引っ張るだけで動き、部屋でもお風呂でも遊べる「水陸両用トレイン」を発売中。これに加わる新シリーズとして、動力をプルバック式にした「水陸両用スイスイトレイン」が登場する。N700S新幹線(JR東海・JR西日本監修中)、E235系山手線(JR東日本監修中)、パンダくろしお「Smileアドベンチャートレイン」(JR西日本・アドベンチャーワールド監修中)の3種類が、9月発売予定品(各種、税込1,760円)として展示された。

「水陸両用スイスイトレイン」では、動力をプルバック式にしたことで、その名の通りスムーズな走行を実現している。陸上走行用の車輪の内側に水かきを備えたことで、水上走行時に水をとらえやすくなった。ブースでの実演時も、プルバックを巻いて動き出した車両が、水槽の反対側に到達する様子が見られた。実際に購入して遊ぶ場合、部屋・お風呂のどちらでも楽しめることは間違いないだろう。

なお、「水陸両用トレイン」の対象年齢は1.5歳以上だが、「水陸両用スイスイトレイン」の対象年齢は3歳以上となっている。パッケージも、「水陸両用トレイン」は小さなこども向けのかわいらしいデザインだが、「水陸両用スイスイトレイン」は男の子の支持を集めそうなかっこいいデザインに。こどもの成長に合わせ、ひも式からプルバック式にステップアップすると良いかもしれない。

  • パイロット「水陸両用スイスイトレイン」3種(監修中)と「水陸両用トレイン」。実演用の水槽内をスムーズに走った。

最後に、鉄道模型のポポンデッタが企画・製造している木製の鉄道玩具「moku TRAIN(モクトレイン)」を紹介。同シリーズでは、こどもたちに人気の日本の鉄道車両を3両編成の木製玩具として商品化。手押しなので動力はないが、磁石による連結のため細かな作業が必要なく、国際的な玩具安全検査に合格した木材・塗料を使用しているので安全に遊べる。全国2,000名の「おもちゃコンサルタント」の投票による「グッド・トイ 2021」にも選出された。

会場では、ブース奥のスペースに木のレールを敷き、発売済みの商品を多数置いたジオラマを展示。木の暖かみや、木製玩具としてデフォルメされたかわいらしさが印象的だった。一方で、目線を下げたときに、知育玩具とは思えない鉄道ならではの迫力も感じた。ターゲット層となる小さなこどもたちにとって、日本の鉄道が木のおもちゃになり、たくさん走らせて遊ぶことで、大きな感動とさらなる知的好奇心を生むかもしれない。

ちなみに、木のレールは一部例外を除き、ほとんどが世界共通規格であり、他社の木製レールを持っていれば、「moku TRAIN」の走行も可能とのこと。公式サイトには、地域限定・数量限定商品として、山陰本線の観光列車「◯◯のはなし」も掲載されていた。

  • 「moku TRAIN」の展示。近鉄「ひのとり」などが見られた

  • 吊り橋を渡るE6系・E5系

  • 自分で色を塗ったりシールを貼ったりできる「ぬりペタ」も

「東京おもちゃショー 2022」の取材を通じて、知育要素のある玩具から、ある程度成長したこども向け、そして大人もハマりそうな商品など、さまざまな鉄道玩具が多くの企業から展開されていることを実感した。今回紹介した中に気になる商品があったら、ぜひ各社の公式情報などもチェックしてみてほしい。