単なるデータベースではないARDIS

ARDISは、位置づけとしてはMIのためのデータ保管基盤で、Webアプリとして同社が内製で開発を進めてきたデータベースシステム。ただし、単なるDBではなく、実験設計や作業指示、データ入力、考察メモなどが記入できるほか、詳細検索やレポート出力なども可能としているほか、UIの見やすさなど、ユーザーの使い勝手を意識した配慮が各所になされている。

  • ARDISの特徴
  • ARDISの特徴
  • ARDISの特徴

特に、実験業務のフローを意識した設計としたことで、日々の実験の中で自然とMIに使えるデータが貯まる仕組みを構築。これにより、使えば使うほど、高性能化が自動的に果たされていく仕組みが実現したとする。

  • 実際のUIと、そこに登録可能なデータの概要
  • 実際のUIと、そこに登録可能なデータの概要
  • 実際のUIと、そこに登録可能なデータの概要

機械学習とベイズ最適化の機能を搭載した分析ツール

一方のAMIBAは、ARDISのデータを用いてデータ解析を行うことを目的に開発されたツール。機械学習とベイズ最適化の機能を搭載しているほか、構築したモデルをグループ間で共有し、組織を跨いた開発を可能にするとしている。また、重要な因子の分析やデータの特徴を可視化することができるため、効率的な実験を行うためには、どの条件から実施すべきか、といったことも知ることができるようになるともしている。

  • AMIBAの概要

    AMIBAの概要

実際に、社内で行った実験では、例えば自動車用ガラスコーティング剤の開発の場合、一般的に10成分以上の混合液が用いられ、その液反応の時間や温度、塗布の速さや温度といった条件、硬化にかかる時間や温度など、多くのプロセスパラメータの調整が必要とされてきたが、ベイズ最適化を活用することで、従来とは異なる領域を実験することで、新たな配合を見出し、特性を約10%向上させることに成功。これまで不十分だった耐久性をクリアすることができたとする。

  • 自動車用ガラスコーティング剤の開発におけるMIの成果概要

    自動車用ガラスコーティング剤の開発におけるMIの成果概要

また、高強度ガラス組成の開発では、社内データに加えて、公知のデータも組成開発に活用し、ベイズ最適化により従来よりも落下強度が約25%向上した組成を開発することに成功しつつ、生産性の考慮も含め、通常1年ほどかかる開発を1.5か月で終えることができたという。

  • 高強度ガラス組成の開発におけるMIの成果概要

    高強度ガラス組成の開発におけるMIの成果概要

なお、ARDISならびにAMIBAは、同社ならびにグループ会社での活用を前提にしており、外販の予定はないとしている。また、研究部門のみならず、今後は事業部の開発部門への展開も進めていくとするほか、教育プログラムを推進していくことで、2025年までにMI人材の育成(部署のMI活用を主導するデータサイエンティスト:全体の5%、テーマのMIモデリング実行を担当するプログラマ:全体の20%、MI技術を開発に利用するユーザー:全体の75%)を実現したいとしている。

  • MIの社内コンサルティングに基づく人材育成の目標

    MIの社内コンサルティングに基づく人材育成の目標