「生粋」という言葉は、「生粋の江戸っ子」など、人をあらわす表現として使われることが多いです。会話や書籍などで使われることがある言葉なので、大体の意味はわかっているつもりでも、正しいかどうかはよくわからない人は多いでしょう。
この記事では、「生粋」にはどのような意味があるかや、使い方の例文、類義語、対義語、英語表現などを紹介しています。あわせて「純粋」など似た意味をもつ言葉との意味の違いや使い分け方も紹介します。
「生粋」の意味と語源
「生粋」とは、「まったく混じり気がないこと」「混じり気がなく、すぐれていること」などをあらわす名詞。読み方は「きっすい」で、「き(生)+すい(粋)」が変化したことが、「きっすい」となった由来です。
何も加えられないことをあらわす「生」に、完璧に精米した米をあらわす「粋」が組み合わせられ、「混じり気なく純粋であるさま」を意味する言葉となりました。
ちなみに「なまいき」とは読まないです。
生粋の使い方・例文
「生粋」は主に人に対して使われる言葉で、「生粋」の後に助詞「の」をつけて、「生粋の~」という言い回しをするのが一般的です。
<使用例>
・うちは先祖代々続く生粋の江戸っ子だよ
・生粋の関西人だというのに、なぜだかそうは見られないことが多い
・彼女は生粋のお嬢様とあって、立ち居振る舞いが凜としている
「生粋」の類義語
「生粋」は、似た意味で使われる類義語がいくつかあるので押さえておきましょう。ここでは、それぞれの類義語の意味や、「生粋」との違いを紹介していきます。
純粋
「純粋」はいくつかの意味がある言葉ですが、「生粋」と同様に「混じり気がないこと」という意味もあります。「生粋」と「純粋」の違いは対象が人に限られないことで、「純粋」は人以外の物品や動物などに対しても使われます。
<使用例>
・純粋なアルコールが実験に必要だ
・彼は純粋の関西人である
・この犬は血統証明書つきの純粋な土佐犬です
生まれながら
「生まれながら」とは、「生まれつきの性質を通して」「生まれ持っている」などの意味をもつ言葉です。「生粋」と「生まれながら」の違いは「生粋」がその人自体を指すことが多いのに対して、「生まれながらの」はその人自体だけでなく人の体の一部分などを指すこともあるのが大きな違いです。
<使用例>
・彼女は生まれながらのお嬢様だ
・私の髪は生まれながらのくせっ毛なのだ
根っからの
「根っからの」とは、「はじめから」「もとから」など、「生まれたときからその性質が備わっているさま」をあらわす言葉です。「生粋」と「根っからの」の違いはは、その人自体だけでなく性格や性質をあらわす場合にも使われる点にあります。
<使用例>
・彼は根っからの都会育ちでどことなく洗練されている
・あの人は根っからの怠け者だよ
混じり気のない
「混じり気のない」とは不純なものを含まない様子をあらわす言葉で、「純粋」と同じような場合に使われます。「生粋」と「混じり気のない」の違いは、人だけでなく気持ちや物品に対しても使われることがある点です。
<使用例>
・今日の空は混じり気のない青一色だ
・彼女の気持ちには混じり気がなく心を打たれる
「生粋」の対義語
「生粋」には類義語が多いのと同時に、反対の意味をもつ対義語もいくつかあるので押さえておきましょう。ここでは「生粋」の代表的な対義語を紹介します。
擬似
「疑似」とは、本物によく似ていて紛らわしいことや、そのものを指す言葉です。混じり気のない本物を指す「生粋」に対して「疑似」は本物そっくりであることから、対義語といえます。
<使用例>
・電車の運転士を疑似体験できるゲームが人気だ
・疑似餌で釣りをする
不純
「不純」とは、純粋でないことや純真でないこと、混じり気があることをあらわす表現です。「混じり気ないこと」をあらわす「生粋」の反対の意味がある点で、対義語となります。
<使用例>
・これは純粋な水ではなく、不純物が混入している
・彼の動機は不純だ
亜流
「亜流」とは、第一流の人に追随するだけの独創性がない人や、まねるだけで新味のないことをあらわす言葉です。「生粋」の持つ意味である「生まれ持った」「根っからの」という意味は対照的な、既存のものの真似ごとであり劣っている様子をあらわしており、「生粋」の反対語として用いられています。
<使用例>
・東京の亜流となってしまっては独自の地方文化となり得ない
・映画音楽は既存の音楽の亜流となっていることが多い
「生粋」の英語表現
「生粋」を英語で表現したい場合、使う意味にあわせていくつかの言い回しがあるので区別して使いましょう。ここでは、代表的な「生粋」の英語表現を紹介していきます。
trueborn
「trueborn」とは、「生まれの正しい」「生粋の」をあらわす形容詞です。「true-born」と表現されることも多いです。生まれがどうであるかを強調したい場合に用いるのに適した表現です。
<使用例>
・a trueborn Londoner (生粋のロンドンっ子)
・She is a true-born Edokko. (彼女は生粋の江戸っ子だ)
・spirit of true-born Japanese (生粋の日本人魂)
pure
「pure」とは、「混じり気なく純粋な」「生粋の」などの意味がある形容詞です。
<使用例>
・a pure Akita breed (純粋な(生粋の)秋田犬)
・pure essential oil (混じり気ない精油)
genuine
「genuine」とは、「正真正銘の」「本物の」「純粋な」などを意味する形容詞です。物品や血統、考えなど幅広い対象に対して使われる言い回しなので、使用の幅が広いです。
<使用例>
・genuine courage (本物の勇気)
・a genuine Foreign Service officer (正真正銘の外務官僚)
・the genuine breed of Chihuahua (純血種のチワワ)
native
「native」とは、「その国に生まれた」「母国語通話者」という意味で使われることが多い形容詞ですが、「生まれつきの」という意味で用いられることもあります。出身地や言語に関する内容の場合に、「native」が用いられることが多いです。
<使用例>
・a native New Yorker (生粋のニューヨーカー)
・Her English is like that of a native. (彼の英語はまるで英語圏で生まれた人のようだ)
「生粋」の意味や語源をおさえて使いこなそう
「生粋の江戸っ子」という言葉に代表されるように、「生粋」とは、「混じり気がないこと」をあらわす言葉。「生粋の~」という使い方で、人の血筋や生まれ持った性質などを指すのが主な使い方です。
「純粋」をはじめいくつか類義語はありますが、他の類義語は人以外に対しても使われる場合がほとんどであり、人に対して使われるのが「生粋」の特徴である点を押さえておきましょう。対義語や英語表現は、細かい意味によって適した表現が異なる点がポイントです。
「生粋」はどちらかというと前向きな意味で使われることが多い言葉ですので、その人の血筋や育ちにおける混じり気のなさをポジティブに表現したい場合に、使ってみてください。