日本テレビ系ドキュメンタリー番組『NNNドキュメント’22』(毎週日曜24:55~)では、ロシア住民との交流が絶たれた北方領土の元島民を追った『絆の果てに 北方領土…絶たれた30年の交流』(札幌テレビ制作)を19日に放送。ナレーションは、林原めぐみが担当する。
日本一早く朝日が昇る北海道根室市は、旧ソ連による強制送還で故郷・北方領土を追われた元島民の多くが暮らす。色丹島出身の得能宏さん(88)は、ちょうど30年前に始まったビザなし交流訪問団第1陣に参加した1人。長年、返還運動の先頭に立つ傍ら、島に住むロシア人と友好的な交流を続けてきた。中でもイーゴリ・トマソン氏(56)とは17年来の付き合いで、親子のような関係を築いている。
しかし、コロナ禍で色丹島にはすでに2年間渡れていない。今年こそと再開に期待の声が膨らむ中で、ウクライナ侵攻が影を落とした。各国と足並みをそろえた日本の制裁に反発し、ロシアは北方領土問題を含む平和条約交渉の中断を一方的に表明。領土交渉は振り出しに戻った。
同時に露呈したのが、日ロ関係のもろさだ。91年の海部・ゴルバチョフ会談を起点に、ロシアが領土問題に歩み寄った時期もあったと日ロ双方の外交関係者は証言する。しかし、92年にロシア側の秘密提案を政府が拒否して以降、最も多くの首脳会談を重ねた安倍・プーチン時代でさえ交渉を進めることはできなかった。そのプーチン大統領直々に事実上の日ロ関係の終焉を宣告された以上、領土問題の歯車が再び動き出す日は見通せない。
得能さんが色丹島に建てた墓は、トマソン氏が手入れを続けている。元島民の平均年齢は86歳を超えた。「もう島には渡れないかもしれない。思いは次の世代と島の仲間に残す」と得能さんは話す。ロシアは、日本人のビザなし渡航の停止も表明している。返還はおろか、このまま島への訪問すらかなわないかもしれない…。
ウクライナ侵攻でロシアという国の本質が垣間見えた今、北方領土を巡る現実が日本に突きつけられている。