【編集部より】記事の内容に事実と異なる箇所がありましたので、すでに掲載済みの内容を一部差し替えました。お詫びいたします。(7月2日23時00分)
APS-Cサイズのイメージセンサーを搭載するキヤノンのミラーレス「EOS R7」と「EOS R10」。すでに多くの媒体で紹介され、スペックなど詳細をご存知の方も多いかと思います。今回、2本のAPS-C専用ズームレンズとともにトライアルする機会が得られましたので、スペックだけでは分からない実際に使ってみて分かった両モデルのインプレションを私なりに記してみたいと思います。
EOS R3のAF性能を惜しげもなく盛り込んだ
EOS R7とEOS R10を使ってみてとても強く感じたひとつと言えば、AFの進化となるでしょう。
両モデルとも、デフォルト(工場出荷時)の設定では「トラッキング」をONとしています。この機能は、AFエリアから被写体が外れてしまっても画面内に被写体がある限りトラッキングでピントを合わせ続けるもの。しかも、フラッグシップ機「EOS R3」で初めて搭載された新しい機能であり、それを惜しげもなくミドルレンジのEOS R7と、エントリークラスのEOS R10に搭載しています。
この機能が最も効果を発揮するのは、スポーツや動いている乗り物などの撮影で使われることの多いAFモード「SERVO」を選択したとき。シャッターボタンの半押し開始時にAFエリアを被写体と重ねてさえすれば、その後はAFエリアと被写体を重ね続ける必要はまったくありません。それは、スナップ撮影やちょっとした風景撮影などこれまで「ONE SHOT」のAFモードで撮ることの多かった被写体でも「SERVO」に設定し「トラッキング」を活用したほうが精度の高いピント合わせが可能に思えてしまうほどです。EOS R3の場合では、動体撮影を強く意識したカメラゆえの搭載と思えるところがありましたが、さまざまな被写体を撮ることになるであろうEOS R7、EOS R10でも搭載していることを考えると、今後この機能がEOS Rシリ―ズのデファクタスタンダードとなること間違いないものと思えます。
エントリー機にも憧れのマルチコントローラーが!
さらに、そのことを象徴しているのが、エントリーモデルのEOS R10にも搭載されたマルチコントローラーの存在です。ちなみにデジタル一眼レフEOSの場合となりますが、エントリーモデルに分類されるEOS四桁機やEOS Kissシリーズには、マルチコントローラーが搭載された経緯はこれまでありません。トラッキングで被写体を追い続けるには、前述のようにユーザーはシャッターボタンの半押し開始のとき、選択したAFエリアと被写体を重ねておく必要があります。そのようなとき、AFエリアの移動を直感的でたやすくしてくれるのがこの操作部材なのです。EOS R10のマルチコントローラーは、同社のAFに対する考え方が新しいフェーズに入ったことを表している部分と言っても過言ではないように思えます。
一段と捕捉性能が高くなった被写体検出機能「EOS iTR AF X」もEOS R7、EOS R10のAFをサポートするものとして注目できます。人や動物、クルマなど、一度AFが被写体を検出すると「トラッキング」機能と同様にファインダーから外れてしまわない限り逃してしまうことはありません。そのため、シャッターボタンを半押した以降のAFはほぼカメラ任せにできると言ってよいもので、撮影者は被写体の動きに集中することができます。これまでも、瞳AFの登場などによりAFに対する概念は変わってきていますが、前述のトラッキング機能の搭載も含め、EOS R7やEOS R10はさらに一歩進んだように思えます。
そのほかの注目点としては、まずプリ撮影モードがあります。これは、シャッターボタンを全押しした瞬間の約0.5秒前から記録を行うもの。電子シャッターを使用し、RAWフォーマットで記録するRAWバーストモードに搭載されるもので、EOS R7ではクロップなしで、EOS R10ではクロップありで、それぞれ最高30コマ/秒の連続撮影を行います。シャッタータイミングが捉えにくい鳥や昆虫の飛び立つ瞬間など、被写体の予期せぬ瞬間的な動きを確実に記録できます。ミラーレスだからこそ実現できた機能といえます。これまで、同種の機能は深度合成などとともに他のメーカーが強かった部分だけに、キヤノンユーザーは嬉しく思うはず。深度合成についても、ボディ内でできるようになりました。その場、背面液晶で合成の結果が見られるので、マクロ撮影の多いユーザーなど重宝しそうです。
EOS R7はサブ電子ダイヤルの位置を大改革
操作性での注目は、両モデルの電源スイッチとEOS R7のサブ電子ダイヤルの位置となります。
電源スイッチはいずれも右肩上部とし、しかもストラップ取り付け部近くに設置。EOS R7は独立したスイッチで、静止画と動画の切り換えも行えます。EOS R10は、サブ電子ダイヤルと同軸になります。これまでのEOS Rシリーズでは、カメラの背面側から見て左肩上部にあり、電源のON/OFFを行うには右手でグリップを持ち、左手で電源スイッチを操作する必要がありました。新しい2機種では、グリップを握った右手のみで操作でき、とても便利になったように思えます。
EOS R7のサブ電子ダイヤルの位置がマルチコントローラーと同軸となったことも忘れてはなりません。従来のSETボタンと同軸としていたものに比べ、右手親指が自然な角度でダイヤルに置け、操作もこれまでよりも小さな動きで済みます。「EOS R5」や「EOS R6」では、サブ電子ダイヤルが小径化してしまい、操作も窮屈な感じがしていました。今後、ボディがさらに小型化されたどうなるものだろうと思っていた矢先にこのアイデア。おみそれいたしました! 今回は撮影する時間が少なかったため、ときどき親指を従来の位置に思わず持っていきそうになることがたびたびありましたが(筆者はEOS R5ユーザー)、EOS R7のユーザーであればさほど時間をかけずに慣れてくるはずです。
写りについては、両モデルとも改めて述べるまでもありません。画素数の違いこそあるものの、階調再現性や高感度特性などどちらも不足を感じることはなく、満足いく結果が得られます。特に高感度特性については、拡張のISO51200相当でも実用として使えそうに思えるなど、APS-Cだからという引け目は一切感じさせません。高速の連続撮影機能やマルチコントローラーの搭載なども含め、両モデルともEOSのコンセプト「快速・快適・高画質」をしっかり継承するものとなっています。なお、作例や具体的な評価については、後日改めて紹介したいと思います。
安っぽく感じてしまうシャッター音(EOS R7、EOS R10とも)にはちょっと興醒めしないでもないですが、EOS Rシリーズのカメラとして写りや機能、操作性、スタイルなど、手を抜いたと感じさせるところはなく、両モデルとも完成度の高いカメラに思えます。
今回、APS-C専用のRF-Sズームレンズも2本発表されました。大口径単焦点のRF-Sレンズなどが今後登場してくれば、よりEOS R7、EOS R10の魅力も増してくるように思えます。ぜひメーカーには検討していただきたいのと、EOS R7のボディにフルサイズセンサーを搭載するモデルや、「EOS M6」のようなペンタカバーのような出っ張りのないフラットなトップカバーとするモデルの登場にも期待したいところです。