JR東海は、これまで地上装置で実現してきた架線電圧を維持する機能について、新幹線車両N700Sに搭載する主変換装置の改良により、地上側ではなく、車両側で実現する技術を開発したと発表した。今後、N700Sの一部の営業車両に順次搭載し、2023年2月まで機能確認試験を実施。試験の結果を確認した後、他のN700Sにも搭載を拡大する予定となっている。

  • JR東海の新幹線車両N700S

東海道新幹線では、利用者の増加にともない順次輸送力を増強し、2020年3月に「のぞみ12本ダイヤ」を実現している。その際、高密度なダイヤでの列車運行により、架線電圧が低下し、列車の安定的な運行に必要な電圧を維持できなくなることを防ぐため、変電所の増設に加え、電力補償装置の導入など地上の電力設備を増強することで架線電圧を維持してきたという。

これまで地上装置で実現してきた架線電圧を維持する機能に関して、N700Sに搭載する主変換装置のソフトウェア改良により、地上側ではなく、車両側で実現する技術を開発。具体的には、列車本数が増えるにつれ、架線の電流の位相が遅れ、電圧が低下する現象について、ソフトウェアの改良によって電流の位相の遅れを小さくし、電圧の低下を抑制する機能を搭載する。車両で架線電圧を維持するしくみは世界初の技術になるという。

一部の変電所や電力補償装置を削減できるほか、東海道新幹線の全編成に導入が完了した際には、約1割の変電所と約半数の電力補償装置を削減できる見込みだという。年間約2,000万kWhの電気使用量を低減でき、約3億円の電気料金と約1万トンに相当するCO2排出量の削減も見込んでいる。