なぜ半導体強化法案は可決されないのか?
2022年2月4日、米連邦議会下院は、「America COMPETES Act(アメリカ競争力強化法案)」の一環として、米国内の半導体製造と研究を強化するために、「CHIPS(Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductors)for America Act(半導体製造を助ける補助金をアメリカ発展のために創出する法案)」を可決した。 一方、上院は、すでに2021年6月に、CHIPS Actと同様な「United States Competition and Innovation Act (USICA:米国競争および革新法)」を可決していた。
しかし、上下各院で可決されたのは似て非なる別々の法案であったことから、上下両院の指導者は、この両法案の違いを調整し、大統領が最終的に署名するための超党派の統一した法案を作成することに取り組む必要があり、現在はその作業が行われている段階にある。
米国内の半導体製造の拡大を促進するために半導体製造分野への投資に対する25%の税額控除制度を新設する法案である「米国製半導体促進法(Facilitating American-Built Semiconductors(FABS) Act)」についても、USICAとAmerica COMPETESでの製造インセンティブと研究投資を補完する法案として審議されているが、SIAはこの法案も最終調整中の米国競争強化法案に含むのが適当と主張している。
ただし、最終的な法案の調整には与野党議員からさまざまな意見が交差する状況となっており、超党派による法案作成作業が予想よりもてこずることとなっている。その結果、この超党派法案は可決成立のめどが立っておらず、結果として米国の誘致に応じたTSMCやSamsung、米国内2か所の新工場建設に投資しているIntelにはまだ補助金が支払える体制が整備されるに至っていない。現在も外資企業へ補助金を支給することに反対する意見もくすぶっている。一方でレモンド商務長官は、法案が成立して520億ドルの補助金支給が可能になれば、さらに多くの半導体(関連)企業を海外から米国に誘致すると公言しており、その候補の中には日本の装置・材料メーカーも含まれていると見られることから、日本の半導体産業への影響も懸念される。