ビジネスシーンでは、両者の関係を仲立ちしたり、双方の間を取り持ったりする場面が多々あります。そのようなシチュエーションは、「斡旋」という言葉を使って表現するのが一般的です。
しかしながら、斡旋と同じような意味の言葉に「仲介」「調停」「仲裁」といったものがあり、混同してしまうことも少なくありません。ビジネスシーンでは、言葉を正しく使うのがマナーです。また、自身をアピールするチャンスでもあります。
斡旋の意味を正しく理解して、ビジネスに活かしていきましょう。
斡旋の意味や読み方
斡旋とは「両者を仲立ちすること」「双方の間を取り持つこと」という意味の言葉です。読み方は「あっせん」。
例えば、建設業などで仕事を請け負う際には、「斡旋してもらう」といった使い方をします。また、労働紛争などでは「労働委員会が斡旋を図る」といった使い方が一般的です。多岐にわたって使われる言葉ですので、しっかりと覚えておきましょう。
斡旋の例文
「斡旋」はビジネスシーンで多く使われる言葉ですが、その意味を理解していないと相手に真意が伝わりません。とりわけ、斡旋は他の言葉と連ねて熟語として使われることが多いので、正しい理解が必要です。
したがって、斡旋の意味はもちろん、熟語としての意味を理解しておくことが大切です。数多くの例文に触れて、実践的に理解しておきましょう。
以下に、斡旋を用いた例文を具体的に紹介します。
斡旋会社・斡旋業者
斡旋会社とは「求職者と企業の仲立ちをする会社」を意味します。斡旋業者という場合もあります。
<例文>
- 人材の斡旋会社では、企業と求職者のニーズを第一に考えて就業を支援しています
- 転職先を見つけるなら、自分で探すより転職斡旋会社に登録するのが近道だ
いずれにしても、「斡旋会社」とは企業と求職者を仲立ちすることで「双方にメリットをもたらす会社」であることを理解しましょう。
斡旋販売
斡旋販売とは「商品やサービスの販売を仲立ちすること」を意味します。
<例文>
- 日用品は社内の斡旋販売だと、通常価格よりも安価に購入できます
- 私は会社で斡旋販売業務を担当しています
いずれの例文においても、斡旋することで「ユーザーにとってメリットがある」といったニュアンスをくみ取ることが大切です。
斡旋申請書
斡旋申請書とは「労働委員会に提出する書類」を意味します。労使間のトラブルを解決するには、労働委員会による「斡旋」が有効です。労働委員会では労使双方の主張を聞き、最適な妥協案を示します。
<例文>
- 労働問題が長期化するなら斡旋申請書を提出すべきだ
上記の斡旋は「双方が納得できる妥協点を見出す」ことを目的とするものです。
斡旋行為
斡旋行為とは「さまざまな事柄や人間関係において仲立ち、もしくは取り持つこと」を意味します。
<例文>
- 公職にあるものが斡旋行為をすると、法律に触れる場合があります
- 実子の斡旋行為には人道的な見解が必要です
- 斡旋行為を行うことで手数料を得るビジネスモデルだ
いずれの例文においても、斡旋することで「斡旋された側にとってメリットがある」といったニュアンスをくみ取ることが大切です。
斡旋の類語
斡旋の言葉を正しく理解するには、類語についても正確に理解することが必須です。斡旋には「紹介」や「仲介」など、多くの類語が存在しており、ビジネスシーンで頻繁に使われます。
しかし、その違いを正確に理解している方は多いとは言えないでしょう。ビジネスシーンでは、言葉のニュアンスで結果に影響を及ぼすことも少なくありません。
ここからは、間違えやすい斡旋の類語について紹介します。
紹介
紹介は「人や物事を引き合わせる」「人や物事を広く知らしめる」という意味の言葉です。読み方は「しょうかい」になります。
紹介と斡旋の違いは、結果にまで関わるか否かです。例えば、上記の例文で「斡旋」を用いると、採用にまで関わる意味になります。「紹介」だと、単に引き合わせたことに留まることを理解しておきましょう。
<例文>
- 私の友人を職場の人事担当者に紹介した
仲介
仲介は「人と人の間に入って便宜を図る」「物事を取りまとめる」という意味の言葉です。読み方は「ちゅうかい」になります。
仲介は契約締結や問題解決といった、結論がハッキリしている点が斡旋とは異なります。そのため、仲介を依頼された方は専門的な知識やスキルを持つことが前提です。その上で目的に向かって行動することが求められます。
<例文>
- 友人の不動産に新居の仲介をお願いした
仲裁
仲裁は「トラブルとなっている当事者間に入って、双方の主張を汲み取り和解させる」という意味の言葉になります。読み方は「ちゅうさい」になります。
<例文>
- 労働問題を仲裁するのは困難なことだ
仲裁は、トラブルを解決させるといった目的が明確である点が斡旋とは異なります。したがって、上記例文で仲裁を斡旋に置き換えることはできません。
周旋
周旋は「交渉事や売買、雇用関係において、当事者間に入って世話をする」という意味の言葉です。読み方は「しゅうせん」になります。
<例文>
- 後輩をわが社に周旋するのは、大変な苦労が伴うものだ
周旋は斡旋と似通った使い方をすることが多いため、同義語だと言えるでしょう。したがって、上記例文で周旋を斡旋に置き換えても差し支えありません。
ただし、周旋よりも斡旋を使う頻度が高いと言えます。
労働争議における「あっせん」「調停」「仲裁」の違い
労働争議が起こった場合、その解決のための調整が労働委員会によって行われます。その調整の手段にはあっせん・調停・仲裁があります。
あっせんは、「あっせん委員」が当事者の間に立って和解を斡旋します。自主的な歩み寄りにより解決を図るもので、解決案が提示された場合に、それを受け入れるのは任意になります。
調停は「調停委員会」が当事者間に入って、双方の主張を汲み取り和解に導きます。原則として解決案が提示されますが、解決案を受け入れるのは当人たちの任意です。斡旋よりは強い意味を持ちます。
仲裁は「仲裁委員会」が当事者間に入ります。仲裁委員会から提示された解決案は、労働協約と同一の効力を持って当事者を拘束します。斡旋、調停よりも強い拘束力を持つ言葉です。
斡旋の英語表現
「斡旋」は、日本語だけの言葉・表現ではありません。しかし、英訳するとシーンによってさまざまな単語が使われていることが分かります。
したがって、斡旋を英訳することで新たな発見があると言えるでしょう。また、企業のグローバル化が進む中で、翻訳の英語表現を知っておくことは大いにプラスになるでしょう。
ここでは、ビジネスシーンで使われる斡旋の英語表現を紹介します。
help
斡旋の持つ「双方の間を取り持つ」を意味する英単語は「help」です。helpを用いる場合、「help + 人 + 動詞の原形」とすることが文法上のルールになります。
<例文>
- help somebody find a job
仕事を斡旋する
mediate
斡旋の持つ「両者の仲立ちをすること」を意味する英単語は「mediate」です。mediateは、「mediate between A and B」とすると「AとBを斡旋する」という意味になります。
<例文>
- He mediated between the two parties.
彼は両者の仲立ちをした。
placement
「placement」は「配置する」の意味で知られる英単語ですが、「就職斡旋」「職業紹介」の意味でも用いられます。
「a placement office」とすると「大学の就職課」「a placement agency」とすると「職業紹介所」の意味です。
<例文>
- The college has a placement bureau for students.
大学には学生のために就職課がある。
斡旋の意味を理解してビジネスに役立てよう
斡旋は、「両者の仲立ちすること」「双方の間を取り持つこと」の意味を持つ言葉です。ビジネスシーンではよく使われる言葉ですが、「仲介」や「調停」「仲裁」などの類義語と混同している方も少なくありません。
ビジネスシーンでは言葉の使い方を誤ると、マナーに反するだけでなく、意味が大きく変わることもあります。斡旋を正しく理解して、状況に応じて使い分けられるようになりましょう。