この記事では「定石」の意味や使い方、類語などを解説します。ビジネスシーンでもよく使われる言葉ですので、ぜひ参考にしてみてください。

  • 「定石」の意味について解説します

    「定石」の意味について解説します

「定石」とは

まずは「定石」の基本的な意味を見ていきましょう。

「定石」の読み方は「ていせき」ではない

「定石」は、「じょうせき」と読みます。正しい読み方を知らないと、初見ではなかなか「じょうせき」とは読めないかもしれません。特に、誤って「ていせき」と読むケースが多く見られます。

「定」を「じょう」と読む言葉としてはほかに、「定規(じょうぎ)」や「勘定(かんじょう)」などがあります。

「定石」の意味は

「定石」には大きく2つの意味があります。1つ目は「囲碁において、昔から研究されていて最善とされる、決まった石の打ち方」です。2つ目は「物事を行う際の、最上とされる方法や手順」です。

趣味などで囲碁をたしなむ人であれば、前者の「定石」はおなじみの言葉でしょう。囲碁用語としての「定石」は、長い時間をかけ研究されてきた、模範的な打ち方と言えます。そして対局者双方が定石に従えば、互角になることが多いとされています。

なお石ではなく駒を用いる将棋やチェスの場合は、同じ「じょうせき」という読みで「定跡」の表記を用います。

一方、囲碁用語から派生した後者の意味での「定石」は、広く日常生活やビジネスシーンでも使われます。「あの会社の定石にとらわれないやり方は、業界に大きな衝撃を与えた」などといった形で使用します。

「定石」の使い方と例文

「定石」の「物事を行う際の、最上とされる方法や手順」という意味について、さらに細かく使い方を見ていきましょう。

「定石」の例文

次の例文を参考に、「定石」を正しく使えるようになりましょう。

・昨日の野球の試合でね、あの場面ではバントが定石だったから、今回はその裏をかいたんだ
・彼女のやり方は一見定石にも思えるのだが、どこか違和感があった
・部長のアイデアはすべて定石と言えるもので、なんだか凡庸なんだよね
・ここはあえて定石に立ち返って、ユーザーアンケートをとってみてはどうでしょうか?
・もはや昔ながらの定石にとらわれた、古臭いマーケティングでは生き抜けない世の中になった
・彼は定石から大きく外れた、まさに奇手というべき方法を使った

定石通り

「定石」を用いた表現としてよく目にする言葉として、「定石通り」があるでしょう。「定石」の意味である「物事を行う際の、最上とされる方法や手順」に従う、ということから、「いつも通りの、基本通りの」を表します。

・彼は手堅く、定石通りに事を運んでいた
・あわててジタバタするよりも、ここは定石通りに相手の出方を待つ方が得策だ

定石を踏む

また、「定石を踏む」もよく使われる表現です。こちらは「定石」の意味である「物事を行う際の、最上とされる方法や手順」でやる、行う、ということになります。

・定石を踏むばかりでは、さらなる飛躍は難しいかもしれません
  • 「定石」は囲碁用語が転じて、ビジネスシーンでもよく使われる表現です

    「定石」は囲碁用語が転じて、ビジネスシーンでもよく使われる表現です

「定石」の類語

「定石」の「物事を行う際の、最上とされる方法や手順」という意味について、類語を見ていきましょう。外来語も含めいくつかご紹介します。

定法(じょうほう)

「決まっているやり方。また、公に決められた規則」のことです。「定石」と同様、「定」を「じょう」と読む言葉ですね。「この計画は、定法通りに進めてください」といった形で使用します。

王道(おうどう)

意味は「物事が進んでいくべき正当な道」です。例文は「彼らの作品は、まさにハードロックの王道を行くものだ」などとなります。ちなみに「王道」には、「royal road」の訳語として「近道、楽なやり方」という意味もあります。「学問に王道なし」は後者の意味でのことわざです。

方程式(ほうていしき)

もともとは数学用語ですが、比喩的に「問題を解決し、答えを得るための決まったやり方」としても用いられます。「どうやらあの作曲家は、ヒット曲の方程式を手に入れたようだ」という形で使われます。

常道(じょうどう)

「常に人間が守るべき道」のほか、「一般の原則に沿った、皆がとる普通のやり方」という意味があります。「あの会社のやり方は、ビジネスの常道から外れている」などの形で使用します。

常軌(じょうき)

「常に踏むべき道、普通の考え方ややり方」という意味です。「常軌を逸(いっ)する」は、「普通と異なる、常識外れの言動をする」ことを表します。

常套(じょうとう)

意味は「決まり切った、ありふれた方法」です。「常套手段(じょうとうしゅだん)」という四字熟語を見掛けることも多いのではないでしょうか。

セオリー

英語の「theory」は、「理論、学説」や「持論」などを意味する名詞です。日本語化した「セオリー」は、「最善だと思われる理論」といった意味で、「セオリー通り」は「定石通り」にとても近い表現です。例文は「彼女の答えはセオリー通りだが、どうも面白みに欠けるね」などとなります。

「定石」の対義語

次に「定石」の対義語を見てみましょう。

奇手(きしゅ)

「奇抜な手段、普通とは変わったやり方」を意味する言葉です。「定石」同様に囲碁用語としても、「相手の盲点や意表をつく、奇抜な手」を表す言葉として使われています。例文は「首相は現状を打開するために、誰も予想していなかった奇手を放った」などとなります。

「定石」の英語表現と例文

「定石」は、「物事を行う際の、最上とされる方法や手順」などを表す言葉です。「定石」を表す英語は、「standard tactics」や「established tactics」などが挙げられます。「tactics」は、戦術や方策を意味します。また、常識という意味の「common sense」も近い表現となるでしょう。

「定石通りに行う」では、「go by the rules」「do by the book」などの表現も考えられるでしょう。

All staff have to go by the rules.
(職員はすべて、定石通りにしなければならない)

囲碁用語から転じた「定石」は、ビジネスシーンでもよく使われる言葉

「定石」は囲碁用語から転じて、「物事を行う際の、最上とされる方法や手順」を表す言葉として一般的にも広く使われています。

「定石」はビジネスシーンにおいても、仕事を進める際の手順や方法について語る際に頻繁に使用される表現です。またメールや資料など文書で目にする場合に、正しく「じょうせき」と読めることは、ビジネスパーソンにとっての基本的な教養と言ってもいいでしょう。

皆さんもこの記事を参考に、「定石」という表現を正しく使いこなしてみてください。