「罷免」は、「職務をやめさせること」を意味する言葉です。正しい意味を理解し、正確な使い方をするよう心がけましょう。
本記事では罷免の類語や例文などをわかりやすく解説。罷免の英語表現も紹介します。通常のビジネスシーンではあまり使わない言葉ですが、常識の一環としても覚えておきたい表現ですので、ぜひ参考にしてみてください。
「罷免」の読み方
罷免は、「ひめん」と読みます。日常ではあまり接することない言葉ですが、しっかりと読み方を覚えておきましょう。
「罷免」の意味
罷免は、「職務を強制的にやめさせること。免職」といった意味を持っています。
罷免は公務員、それも一般の公務員ではなく、主に国務大臣や裁判官、検察官など特別な任用の公務員に対して使われる表現です。公務員の地位・選挙権・投票の秘密について規定している日本国憲法の第15条には、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」と書かれています。つまり、公務員を罷免することは、憲法によって保障された国民の権利であるわけです。
罷免は、単に役職のみをやめさせる場合と、役職だけでなく公務員としての身分を剥奪する場合の両方で使われます。私企業に勤務している場合にはあまり接することがない言葉ですが、おさえておくべき常識の一環として、読み方や意味を知っておきましょう。
なお罷免は、高位の公務員を「強制的にやめさせる」ことであり、自らが自主的に職を辞する場合は「辞職」もしくは「辞任」といいます。
「罷免」の類語
罷免は主に国務大臣や裁判官、検察官など地位の高い公務員に対して使用される点で、やや特殊な表現となっていますが、似た意味を持つ言葉もあります。類語や言い換え表現を確認しておきましょう。
免職
免職(めんしょく)は、「職をやめさせること」。特に、「公務員の地位を失わせること」という意味を持っています。公務員をやめさせることという点では罷免と共通していますが、罷免が国務大臣など特別な公務員に用いられるのに比べ、「免職」は一般の公務員について用いられる点で異なります。
免官
免官(めんかん)は、「官職をやめさせること」という意味があります。上記の「免職」とほぼ同じ意味で用いられると考えていいでしょう。
解任
解任(かいにん)は、「任務・役職を解くこと。職務をやめさせること」。ビジネスシーンでは、役員以上の任務を解く場合に使われることが多い表現です。また、「解任」はただ任務を解くだけですので、会社をやめさせるという意味はありません。
解職
解職(かいしょく)は免職と同様、「職をやめさせること」を意味します。
解雇
解雇(かいこ)は、「雇用主から雇用契約を解除すること」です。企業が労働者の雇用を打ち切る際などによく使われる表現です。
馘首
馘首(かくしゅ)と読み、「首を切る」という漢字から「雇用主が従業員をやめさせること」を意味します。「解雇」と同様の意味を持った言葉です。
免黜
難読の漢字ですが、「めんちゅつ」と読みます。“黜”には「しりぞける」という意味があり、「免黜」で「官職を解くこと。地位を下げること」となります。
御役御免
御役御免(おやくごめん)と読み、意味は「ある役目をやめさせられること。また、仕事をしなくてもよくなること」です。「管理職を御役御免になってしまった」などのかたちで使用します。
「罷免」と「弾劾」「更迭」の違い
罷免は、主に特別の任用による公務員の職に対して「職務をやめさせること」を意味します。意味的に罷免と混同しやすい言葉として、「弾劾」と「更迭」があります。
弾劾は「だんがい」と読み、意味は「犯罪や不正をはっきりさせて、責任をとるように求めること」や「法令によって身分保障のある公務員の非行に対し、国会の訴追によって罷免または処罰する手続き」です。弾劾は「職務をやめさせること」自体ではなく、「罷免する手続き」のことをさしている点で、罷免とは意味が大きく異なります。
更迭は、「こうてつ」と読みます。意味は、「ある地位・役目にある人を他の人と代えること」です。こちらは「職務をやめさせること」ではなく、「その職務を他の人に担当させること」を意味しています。政治の世界や高位の公務員以外にも、企業の人事などでも使われる表現です。
罷免同様、「弾劾」も「更迭」も一般的な会社員生活ではあまり出会うことのない言葉ですが、その違いをよく理解し、正しく使うように心がけましょう。
「罷免」の対義語
罷免の対義語には「任命」「登用」「採用」などがあります。
任命
罷免の対義語は「任命」です。「にんめい」と読み、意味は「ある官職や役目に就くよう命じること」。まさに罷免の反対の意味となります。「主計局長を、次期財務事務次官に任命する」といったかたちで使います。
登用
「登庸」とも書き、読みは「とうよう」です。「人を官職などに取り立てること。また、人をそれまでより高い地位に引き上げて用いること」を意味します。「任命」とは異なり、「登用」には官職に就くことを“命じる”というニュアンスはありません。
採用
採用(さいよう)は、「適当であると思われる人物・意見・方法などを、とり上げて用いること」です。こちらは高位の公務員に対して用いる罷免や登用とは違い、ごく一般的な場面で用いられます。
「罷免」の英語表現と例文
罷免は、「職務をやめさせること。免職」などを表す言葉です。特に高位の公務員に対して使われる表現ですので、英語に訳すのはやや難しいかもしれません。
罷免に該当する英語表現は「dismissal」「degradation」など。動詞「罷免する」では「dismiss」「discharge」「oust」などとなります。イディオムでは、「remove from office」「drum out」などが考えられますが、文脈やシチュエーションなど考慮しつつ、適切なものを選びましょう。
dismissal
「dismissal」は、「解雇、免職、解任、罷免」などを意味する名詞です。
彼は、彼女の罷免を要求した
degradation
「degradation」は、「降職、左遷、免職」などの意味を持つ単語です。
彼女はそれを左遷と受け取った
dismiss
「dismiss」は、「解散させる、(面前から)去らせる、退出を許す、解雇する、免職する、罷免する」などを意味する動詞です。
総理大臣には閣僚の罷免権がある
discharge
「discharge」は「荷を下ろす、荷揚げする」などのほか、「解雇する、罷免する」という意味があります。
その裁判官は不正行為のため罷免された
oust
「oust」には、「(職・地位などから)追い払う、追放する」という意味があります。
彼女は、その地位を追われた
remove from office
「remove from office」は、「免職、免官、罷免、免ずる」を意味する熟語です。
大統領は参事官を、無能力を理由に罷免した
drum out
「drum out」には、「地位または任務から解任する」という意味があります。
議長は解任された
「罷免」の使い方と例文
罷免は、主に高位の公務員に対して用いられる表現ですので、使い方は限定されます。次の罷免の例文を参考に、正しく使えるようになりましょう。
・国民には国家公務員を罷免する権利がある
・その検察官は、かろうじて罷免を免れた
・その政府高官は弾劾裁判によって責任を問われ、罷免された
・最高裁判所の裁判官は、国民の投票により罷免される可能性がある
・内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる(日本国憲法 六八条)
「罷免」の意味を知って正しく使おう
罷免は、主に国務大臣や裁判官など高位の公務員に対して使用される点で、特別な意味を持つ言葉です。一般的なビジネスでは使うことはあまりないかもしれませんが、政治家や公務員による不祥事などの際に、各種の報道などで接する機会が多い表現です。
ビジネスシーンで政治的な話題が出た場合などに、罷免や弾劾、更迭といった単語が使われることもあるでしょう。皆さんもこの記事を参考に、罷免という表現を使いこなしてみてください。