「縁故」は、「縁・姻戚などによるつながり」や「人と人との特別なかかわりあい」を意味する言葉です。正しい意味を理解し、正確な使い方をするよう心がけましょう。

本記事では「縁故」の類語や例文などを解説。「縁故」の英語表現も紹介します。ビジネスシーンで耳にする機会もある言葉ですので、ぜひ参考にしてみてください。

  • 「縁故」とは

    「縁故」の意味について解説します

縁故の読み方・意味

「縁故」は、「えんこ」と読みます。特に難しい読みではありませんので、素直に考えれば大多数の方は正しく読めるのではないでしょうか。

「縁故」は、「血縁・姻戚(いんせき)などによるつながり。また、その人」や、「人と人との特別なかかわりあい。よしみ。つて」などをあらわす言葉です(出典:デジタル大辞泉)。

縁故が使われる表現

「縁故採用」「コネ採用」

ビジネスシーンでは、企業と関わりのある人を採用の条件とする「縁故採用」や「縁故入社」といった言葉を聞く機会があるかもしれません。

また、「縁故」を意味する英語の「コネクション(connection)」を略した「コネ」という表現を用いた「コネ採用」「コネ入社」といった言い方もよく見られます。

ただし、「縁故採用」が「企業や団体が求職者を採用する時に、その企業・団体に何らかの関わりのある人物を選ぶこと」をあらわすのに対して、「コネ採用」は「能力や資質、適性などに関係なく、個人的なつながりを通じて選ばれること」を意味しています。

「縁故採用」では主体は採用する側にあり、「コネ採用」では主体は選ばれる側になるなど大きな違いがあり、「縁故採用」の意味で「コネ採用」を使用すると大きな誤解を招く可能性もありますので注意しましょう。

「縁故主義」

縁故を使用した表現に「縁故主義」という言葉があります。これは、「血縁、地縁などがある縁故者を重用する考え方」「ことの正否よりも縁故を優先する考え方」を意味します。英語では「nepotism」と表記されます。

  • 「縁故」の類語は

    「縁故」の類語について解説します

「縁故」の類語

「縁故」に近い意味を持つ言葉としては「親戚」「親類」「親族」などがありますが、それ以外にも似た意味を持つ言葉がありますので、いくつかご紹介しましょう。

縁者

「えんじゃ」と読み、「親戚」「縁続きの人」を意味します。「親類縁者」はよく使われる四字熟語です。なお近世では、「縁者」とは血のつながった親類と区別するため、婚姻や養子縁組みなどによって縁続きとなった家の人を意味しています。

縁続き

読みは「えんつづき」です。「親類関係。親戚。縁者続き」という意味になります。「あの有名人は遠い縁続きにあたる」といったかたちで使用します。

身寄り

「みより」には、「身を寄せるところ」「親類・縁者」という意味があります。「彼には身寄りがなく、天涯孤独だ」など使われます。

つて

漢字では「伝」と書きます。「縁故」の類語としての意味は「希望をかなえるための手がかり。てづる」になります。「10年前に、親類のつてを頼って上京した」といったかたちで使用します。

手蔓

「てづる」と読みます。意味は、「頼りにできる特別な関係。頼りになるつながり」です。「恩師に、就職の手蔓を求めた」といったかたちで使います。なお「手蔓」には、「てがかり、糸口」という意味もあります。

よしみ

漢字では、「好み」あるいは「誼み」と書き、「親しいつきあい」や「何らかの縁。つながり。」という意味です。「昔のよしみでまとまった金を貸した」などと使用します。

コネクション、コネ

英語「connection」のカタカナ表記で、「コネ」という略語もよく使われます。「関係、つながり」、「物事をうまく運ぶのに役立つ親しい間柄」などの意味があります。

「コネ」は「縁故」に比べ、関係やつながりを通じて何らかの便宜を図ってもらう、利益を提供してもらうなどの、少し虫がいいニュアンスで使われることが多いようです。使用に際しては注意が必要です。

  • 「縁故」の英語表現と例文

    「縁故」の英語は、シーンに応じて適したニュアンスの表現を選びましょう

「縁故」の英語表現と例文

「縁故」に該当する英語表現は「connection」「relative」「relation」「rapport」「affinity」「nepotism」など多数考えられますが、文脈やシチュエーションなど考慮しつつ、適切なものを選びましょう。

connection

「connection」には、「連結(すること)、結合、連接、(電話の)接続」など多くの意味がありますが、なかに「(人と人との)間柄、関係」という意味もあります。「コネクション」あるいは「コネ」は、「縁故」を意味する外来語としてすっかり定着しています。

I have powerful connection in the business
私にはそのビジネスに強力な縁故がある

relative

「relative」には、名詞で「親類、親戚」という意味があります。「a blood relative」で「血族、肉親、血筋」、「one's relative」で「親類」、「count on one's relatives」で「縁故を頼って」となります。

She was able to count on her relatives
彼女は自身の縁故をつてにできた

relation

「relation」は、「関係、関連、間柄」など多くの意味を持つ単語ですが、「親類、親族関係、縁故」という意味もあります。

The politician has some relation to the group.
その政治家は、そのグループと何らかの縁故がある。

rapport

「rapport」は、「(一致・調和を特徴とした)関係」を意味する単語です。

Shop clerk should make efforts to build rapport with their customers
ショップ店員は、顧客と縁故を築くよう努力するべきだ

affinity

「affinity」には、「(共通の起源などからくる)密接な関係、姻戚関係」などの意味があります。

There is a deep affinity between them
彼らは縁故が深い

nepotism

「nepotism」は、「(就職の際などの)縁者びいき、縁故採用」などを意味する単語です。

He got his job through nepotism
彼は縁故を頼って仕事を得た

「縁故」の使い方と例文

「縁故」は、「縁・姻戚などによるつながり」や「人と人との特別なかかわりあい」を意味する言葉です。次の「縁故」の例文を参考に、正しく使えるようになりましょう。

・彼は、叔父の縁故で有名企業への入社が決まった
・当社は基本的に、縁故採用は行っていません
・赴任先であるアメリカには、まったく縁故がありません
・昔の縁故を頼りに、大学時代の先輩の元に身を寄せた
・学歴や資格、縁故がないのであればよりいっそうの努力が必要だ
・セールスマンの心得として、顧客との縁故を作り上げることに邁進するべきだ
・古くからの縁故主義が、この国の発展を妨げている
  • 「縁故」の使い方と例文

    「縁故」の意味と用法を知って、正しく使いましょう

「縁故」の意味を知って正しく使おう

「縁故」には、「縁・姻戚などによるつながり」や「人と人との特別なかかわりあい」などの意味があります。

ビジネスシーンでは特に、「縁故採用」「縁故入社」といった言葉で接する機会が多いかもしれません。似た表現で「コネ採用」「コネ入社」もありますが、こちらはよりネガティブなニュアンスが強いなど、意味の上では違いがありますので使い方には注意しましょう。

「縁故」はビジネスシーンでも比較的目にしやすい言葉です。しっかり意味を覚えて、うまく使いこなしてみてください。