液体原料の秤量を実現したAI搭載ロボット
小規模な食品工場において負担が大きい業務として、液体・粉末の秤量があるという。重たい原料を計量し運ぶのは負担が大きく、自動化に対する需要は大きいものの、容器を傾けて行う秤量では、液体の量や粘性など関係するデータ量が膨大なため、作業をプログラミングすることができなかったという。
また前出の担当者によると、液体や粉末の秤量を自動で行う専用の機械はあるものの、大型である上、数億円のコストがかかるため、未だ人の手に頼っている現状があるとのことだ。
デンソーウェーブはこの課題に対して、AIの模倣学習を利用。異なる粘性の液体を用いて秤量動作を行い、複数のセンサからリアルタイムでデータを抽出することで、動作と注がれる原料の重さの関係を学習させた。実使用までに要するトレーニング回数は40回程度で、時間にして約2時間だとしている。
今回ブースではロボットのミニチュア版が展示され、量りに乗ったビーカーに指定重量の水を注ぐ動作が実演された。
不定形の食品における良品検査を自動化
ロボットを使った良品検査は、定型物である自動車部品などの領域では導入が進んでいるが、野菜や卵などの不定形物に対しては自動での良品判定が難しく、また軟体物の把持においても力加減の調整に課題があった。
今回デンソーウェーブが展示したのは、自動でマッシュルームの良品検査を行うデモ機で、中国のベンチャー企業と共同で開発したとのことだ。
従来物体認識に使用されてきた3D CADが使用できない不定形物に対して、同機では、3Dビジョンのみで大きさや色を認識するという。搭載されたAIに良品と不良品のデータを学習させることで、そのデータに基づいて不良品の判定が行われるとのことだ。
また物体を把持するグリッパには感圧センサを設置。ロボットアームとグリッパ、そしてセンサを同期制御することで、センサの値を高速で処理し、食品を傷つけない把持を実現するとした。実演では、卵やトマトなどのつぶれやすい食材をスムーズに把持する様子が紹介された。
デンソーウェーブが食品業界に提供する価値とは
自動車や電機の領域を主軸とするデンソーウェーブが食品業界をターゲットとしたFOOMA JAPANに出展した背景には、ロボットやAI技術の発展と融合があると、同社の担当者は語る。
人間が当たり前のように行う動作は、ロボットにとっては難易度が高い場合が多く、従来の技術では再現できなかった。しかし、ロボットやAIなどの技術がそれぞれ発展し、またそれらを融合させることで、ようやく人に代わる作業能力が実現されつつあるという。
担当者によると、特に人の手に頼る部分が大きい食品業界にも協働ロボットが価値を提供し始めているが、まだ課題は多いといい、発展に向けたポイントとして「協調と協創」を挙げた。
「デンソーウェーブは、ロボット開発環境のほとんどを公開しているなどオープンな姿勢をとっている。そのため、学生やスタートアップ企業とも連携しやすく、顧客の求めることにロボットが合わせられるのが強み。 これからはすべてを自分たちで作るのではなく、得意分野を持ち寄って協創することがベストだと考えている。我々もさまざまな企業などと協力しながら、食品業界にも新たな価値を提供していきたい」と語った。