角換わりから永瀬王座が相手の攻めを誘う研究手を披露。午前中からのっぴきならない展開に
藤井聡太棋聖に永瀬拓矢王座が挑戦する、第93期棋聖戦五番勝負第1局が、6月15日(水)に新潟県新潟市「高志の宿 高島屋」で行われています。本局は永瀬王座の先手番です。
■試合巧者ぶりが光った永瀬王座
開幕の第1局は、2度にわたる千日手が出現した後、3局目となった指し直し局を永瀬王座が制しました。決着局は両者持ち時間が少ない展開から、永瀬王座が自分の土俵に誘い込み、一方的に時間を使わせた試合巧者ぶりが光った内容でした。
この結果、両者の通算対戦成績は藤井棋聖の7勝4敗となっており、直近では永瀬王座が3連勝しています。黒星スタートの藤井棋聖は第2局で巻き返したいところ。藤井棋聖のタイトル戦黒星スタートは昨年の王位戦七番勝負以来、2度目となりますが、王位戦ではその後4連勝し、挑戦者の豊島将之九段を退けて防衛に成功しています。
第1局終局後、藤井棋聖は本局まで対局がなかったのに対し、永瀬王座は1局指して勝っています。A級順位戦という舞台で、強敵・豊島九段を下しての大きな勝利が、本局への弾みをつけたといえそうです。対して藤井棋聖はこの空白の期間に、第2局に向けてどのような作戦を練ってきたのでしょうか。
■角換わりから永瀬王座が相手の攻めを誘う
対局は9時に開始され、先手番の永瀬王座が角換わりを志向。角換わり腰掛け銀の戦型になり、藤井棋聖が△8六歩と突き捨てを入れた手に対し、永瀬王座が▲同銀と取ったのがやや不自然にも映る手です。先手陣はこの瞬間中央にスキが多く、後手からの猛攻が怖く見えるからです。果たして藤井棋聖は△6五銀とぶつけ、華々しく戦いの火ぶたが切って落とされました。
■驚きの研究手順
藤井棋聖は、先手陣の手薄な中央を攻め立てるべく、△6五桂、△1三角と攻め駒を次々に設置、対する永瀬棋聖は▲4七銀、▲4八角と持ち駒を次々と自陣に投入して後手の猛攻を受け止めます。傍目から見ると防戦一方のようにも思える永瀬王座の手順ですが、ここまで永瀬王座が消費した時間はわずか8分。この時間の使い方は、間違いなく深い研究に裏打ちされていることを示しています。
以下、永瀬王座は▲1五歩と相手が設置した角の頭を攻め、藤井棋聖は△4六銀と中央に攻め駒を追加した局面で昼食休憩となりました。ここまでの消費時間は永瀬王座が24分、藤井棋聖が2時間9分。持ち時間は4時間なので、藤井棋聖は早くも持ち時間の半分以上を消費させられたことになります。
ここまで、後手の藤井棋聖が猛攻を仕掛けて、永瀬王座が受けに回るという展開ですが、時間の使い方を見る限り、それは永瀬王座が予定していたストーリー通りと言えそうです。早くも本格的な戦いが始まっており、1手の選択が致命的になりかねないのっぴきならない局面が続くことになります。
本局の決着は本日夕方以降になる見込みです。
相崎修司(将棋情報局)